181話. サイコーに気持ちいい!!
「本当に気持ちいいわ。これまでの疲れがみんな流されるみたい」
ノエルの恍惚とした表情を見る限り、本当に気持ちよさそうだ。
「お姉ちゃんの言う通り、こんなの初めて。毎日お風呂に入ろうよ」
ありがたい申し出で恐縮だが、それは毎日 “混浴” ということになってしまうぞ。
「そうか、二人は風呂に入ったことが無かったな」
「そうなの。里ではいつも水浴びか、寒い日は濡らしたタオルで拭いたりするだけだったから」
「そもそもお湯が貴重よ。水はともかくとして、それを温めるのが無理ね。これだけの量の温水を料理でもないのに使うだなんて本来ならあり得ないわ」
なるほど。
そう言われて見ると、確かにそうだな。
水は温めるのに多大なエネルギーを必要とする。となると、たかだか風呂に我々は相当なコストを掛けていることになる。ほとんど気にかけてこなかったが、ノエルの言っていることはそういうことだ。的を得ている。
「ノエルの言う通りだ。しかし俺はこの通り一瞬で膨大な量のお湯を生成できる。だから俺に関して言えば、まったく問題にならないな」
「それはサイさんが異常すぎるからだよ~」
「本当にそれよ、それ」
「う~む。そんなものか」
「そう言えば、サイは昼間に消耗した魔力は回復しているのかしら? お風呂が作れるくらいには回復しているようだけど……?」
「もちろん全回復はしていない。だが、俺には必殺技があるんだ。これ位は朝飯前だな」
これは事実だ。
昼間に解き放った全力の火焔魔法によって、俺の常軌を逸したMPはほとんど底をついてしまった。これが自然回復するまでにはどれ位の時を要するのだろうか?
おそらく1週間では足りないはずだ。
しかし俺にはこれまた反則技とも言える魔力の回復法がある。つまり『魔石から直接魔力を吸収する』というものだ。
実は既に姉妹の隙をついて、俺は適当な魔石で魔力を3割程度まで回復させていた。たかが3割といっても侮るなかれ。これだけのMPがあれば強い魔物の群れであっても対処は簡単だ。
とはいえこの秘密はあまりにも危険なため、これまで姉妹にさえも口外していない俺の固有能力。
それにしても、『超級』魔法の数々、複数のスキル所持、複数魔法の同時発動、無詠唱での魔法利用など、旅をすればするほど秘密が増えていく。
でも、まぁ、この二人ならいいか。もう俺の秘密を知り過ぎている。これ位なら大丈夫だろう。
「その『必殺技』って何かしら?」
「うんうん、気になる~」
「実はな……。ここだけの話、俺は魔石から直接魔力を吸収できるみたいなんだ」
「えぇーー!?」
「ウソでしょ!!」
「いや、そんなこと聞いたことないわ。あり得ない」
「でもサイさんだったらあり得そう」
あっ……。
二人があまりにも驚きすぎてタオルがはらりと……。
「み、見るなーー!!」
あっという間に隠されてしまったが、肉体美が眼に焼き付いている。
またもや風呂場で起きたラッキースケベとはこれ如何に。
「……それはそうと、あの湖には凶暴な魔物がいるらしいな」
とりあえず魔物の話題で話をそらす。
「そ、そうね。魚の魔物、だったかしら」
「電撃魔法が効果属性みたいだけど、ちょっとこの大きさの湖だと難しいかも」
「いや、それは試してみないと分からないぞ」
「確かにそうだけど、サイ、何らかの考えがあるみたいね」
「そうだ。あの湖は普通の水ではないからな」
「それって、塩水だってことよね?」
「その通りだ、ノエル。あまり知られていないかもしれないが、塩水は電気を通すんだ。だから普通の湖よりかはるかに倒しやすいと思う」
「そうなんだ」
「しかも例の『キリング・シャーク』という魔物は電撃魔法に本当に弱いらしい。となると、案外、微弱な電気でも倒せるかもしれないな。とは言っても、こればかりはやってみないと分からないけどな」
「何かいい考えがありそうね」
「まさしく。せっかくだから、電撃魔法の威力の確認の意味でも明日にでも試してみようか」
「「賛成~!!」」
ということで、至福のバスタイムにて明日の予定が無事に決まった。
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