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178話. 湖とボクっ娘


 ここまでひたすら標高を上げてきた我々一行だが、ついに峠を越した。周辺は背丈の低い草原となり、眼下にはそれなりに大きな湖が見える。湖の直径は見たところ数キロほどか。


 だが、湖の左側の様子が何だか変だ。

厳密には湖の脇に何かが広がっている。


 まるで田んぼのようだ。四角状の区画がそれぞれ連続して並んでいる。そしていずれも何だか白っぽい。どうやら農作物を育てている訳ではなさそうだ。


 それら四角形上の構造物の左端には建物がいくつか見える。どうやら村があるようだ。


 しばらくポケーッと奇妙な景色を見ていると人がやってきた。


 小柄な女の子だ。年齢はユエと同じか少し上といったところか。


 「君たち、こんなところに来るなんて変わっているねぇ。このボクが案内してあげるよ!」


 この世界の住人としては、妙に馴れ馴れしい感じで話しかけてきた。というか、これが俗に言う『ボクっ娘』か! 


この手の人間には初めて会ったな。思いの外、なかなかグッド。可愛げがあって、しかも胸が大きい。なんか新鮮で感動する。


 そんな感じでボクっ娘を鼻の下を伸ばしながら見ていたら、姉妹が両脇からつねってきた。


 ムーーッ!


 あれっ。ちょっとヤキモチを焼いている?

 そんなオーラを感じ取る。


 慌てて挨拶をしながら、さり気なく姉妹の髪をそれぞれなでなでしてあげる。すると何とか機嫌が収まったようだ。


 「どうする? 湖を案内してくれるみたいだが?」


 「私はいいわよ。せっかくだから案内をお願いできるかしら」


 「わたしも!」


 「ということで、よろしく頼む」


 「りょーかい。じゃ、ボクに付いてきてよ」


 やっぱりボクっ娘だ……。


 彼女はすたこらさっさと早々と歩いていく。


 「そういえば、リトはこの辺りに住んでいるんだよな?」


 そうそう、このボクっ娘はリトという名で一応はE級冒険者の身分らしい。ただ、本職は家業の手伝いをしているとのこと。ふむふむ。


 「そうだよ! あそこに見える集落に住んでいるんだ。いい場所でしょ!」


 「確かに空気がきれいで素晴らしいところだわ。心まで透き通りそう」


 ノエルにしては珍しく詩的な表現を出してくる。確かにこの世界に来てから目にした一番の絶景に違いない。


 「ところで、家々と湖の間に広がっている白っぽい区画では何をやっているんだ?」


 「それはボクの本職だよ。近くまで行けばすぐに分かるからさ」


 へぇー。一体何なんだろう。




 ようやく坂を下り、集落のある辺りまで近づいてきた。もうすぐそこが謎めいた区画の広がるエリアだ。


 「ん? これはもしかして、『塩』なのか?」


 「ご名答! あの湖は実は塩湖なんだ。けっこう塩が濃いいんだよ。この周辺地域で取れる塩のほとんどはここで作られているんだ」


 「すごいね。こんなの初めて見たよ」


 「本当。こうやって塩を作るのね。それにしても、よくサイはこれだけで塩だって見抜けたわね。湖で塩だなんて普通は思い付きもしないわ」


 「ゲフンゲフン。いや、ちょっと噂で聞いたことがあってな。どれ、ちょっと味見してみてもいいか?」


 話を逸らし、この塩田の様子の確認へと誘導する。


 塩田はまるで田んぼのように水が張られているが、塩の塊が沈殿していて底が白くなっている。どうやら少しずつ湖からの塩水を足して、乾燥させ、じわじわと塩分濃度を濃くしているとみた。


 おもむろに人差し指を水中に突っ込み、ペロリ。


 う~む。確かに塩だ。しかし味に奥深さがあって、きわめて上質なものだ。この品質の塩が作れるとなると、この辺りは内陸だから、わざわざ海から塩を運んでくる理由はない。


 だが、姉妹の反応は違っていた。


 「ペッ。しょっぱい!」


 「本当に塩だよ、お姉ちゃん」


 そうか。ノエルもユエもこれまで海を見たことはない。つまり天然の『塩水』を見るのも味見するのもこれが初めてなのか。そりゃ驚くわけだ。


 せっかくなので、ついでに湖まで案内してもらうことにする。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] う~ん、後半は魔族との戦いになると思ってたんだけど、 一向に出てこないね魔族 これ、終盤に少し出てきてあっさり決着パターン? それとも伏線回収されずに終わってしまうのか? 大変嫌な予感…
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