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173話. まさかの隠しコマンド

 

「やったわ! 電撃魔法よ。しかも日常系と戦闘系の両方とも。素質も上級で言うことなし!!」


「すごい、お姉ちゃん! でも、私はまだなの……」


 ユエはまだ習得できたような感覚は無いようだ。ノエルに先を越されて少し落ち込んでいるようだ。



 ……って、いかんいかん。俺も演技をしなければ。

「ステータス・オープン」


 ランクとしてはノエルが一番上なのだから、習得の順番としても今なら丁度良い。この門番の男はギルドから厳命を受けて俺たちの対応をしてくれている。


 それは有難いが、果たして本当に無償で俺たちの対応をするだけが命令の内容なのかどうか。


 俺はその点が気になっていた。


 もし我々の監視なども命令に含まれていた場合、少しでも不審な行動はすぐに報告される恐れがある。


 ここは気を抜かずにポーカーフェイスで乗り切ろう。


「よしっ! どうやら俺も習得できたようだ。どちらも『中級』だけど」


 あまり噓をつく必要があるとは思えないが、とりあえずワンランク下ということにしておこう。


 それから数分して、ユエも無事に習得できた。彼女も俺と同じく “中級” だ。


 ひとまず魔法をゲットして、いよいよ出口に戻ろうとした瞬間、ユエが驚嘆の声を上げた。


「わっ! すごい!!」


 ユエが指さしたのは上だった。ノエルとほぼ同時に見上げると、洞窟の天井に文字やら絵やらがびっしりと彫り込まれている。これはもしかすると……。


「これはすごいな。もしかすると、石碑はこれを書き写したものだったりするのだろうか?」


「実はその通りなんだ。高名な方が解読に成功して、こうして誰でも電撃魔法が習得できるようになったという訳さ。すごいだろう」


 しかし石碑に気を取られてまったく気付かなかったのが不思議なくらいだ。しかしなるほど。そういうことね。つまり石碑が本体ではなく実のところ劣化コピーということか。だとすれば、天井の方が本命なのかも。


 文字と絵は天井のかなりの面積に彫り込まれている。

 まずは全体をゆっくりと眺めなければ。


「日常電撃魔法(超級)を取得しました」

「戦闘電撃魔法(超級)を取得しました」


 よっしゃー! 今度こそ【超級】魔法、ゲットだぜ。


 さてと、問題は次だ。


 俺はいかにも『天井の遺物を鑑賞しています』といった体を装いつつ、さり気なく姉妹の前にそっと手を掲げる。


 それだけで二人ともピンと来たようだ。


 ノエルとユエが両隣に来たところで、これまた怪しまれないようそれとなくギュッと二人と手を繋ぐ。


 そうして俺は天井を眺める。


 これで問題が無ければ、というか俺の思惑通りなら、二人の素質がそれぞれワンランクはアップしているはずだ。


 そうだと好都合なのだが。


 とりあえず案内役の男には怪しまれていないようだ。


 もちろん二人とも、この場で『ステータス・オープン』などと馬鹿なことはしない。


 まぁ、こんな古代文字、しかもこの量を一瞬にして解読するというのは人間の領域を超えてしまっている。そんな発想自体できないのは仕方ないことだ。


 そんな訳で首尾よく電撃魔法を手に入れた我々は洞窟の外に出る。


 すると、先ほど話したもう一人の門番が話しかけてくる。


「おう! 意外と手間取ったな、嬢ちゃん達。魔法はちゃんと手に入れたか?」


「ええ、もちろんよ。ありがとう」


「うん。私も手に入った~。天井の壁画がきれいで思わず見入ってしまったの」


「なるほど、それでか。確かにあれは見世物としてはいいな。ここに来る人間は魔法目的だから、それに必死で上を見る奴なんかほんの一握りさ。ちゃんと観光もできたようで良かったぜ」


 すると、先ほどの案内役が口を挟む。


「魔法も手に入ったし、次は何をするのかな?」


 う~む。


 これは……。


 この男は案内役という立場だが、実際には俺たちの『監視役』である可能性は否定できない。というかむしろ濃厚だ。


 あまり下手なことは言わない方がいいかもしれない。


「そうだな。知っての通り、俺たちの目的はここで魔法を習得することだ。それが達成された以上、とくにこの街に留まる理由は無さそうだな」



「君たちは旅人だろ? なら、トンレカップ湖に行ってみるといい。あそこは風光明媚な場所でおススメだ。壁画に気付く君たちならきっと楽しめるはずさ」


「湖……!」


 ユエとノエルは目をキラキラさせている。


 これはあれだな。


 案内役の口車に乗って行かざるを得ない感じだ。

 とはいえ、それもまた良い。


 自由な旅というのが何よりも大切だろう。


 こうしたやり取りの後、俺たちは相談しながら歩いて街の中心部まで戻ることにした。


 そこで決まったのは、やはり例の湖に行くということ。


 どうやら二人とも湖を見たことが無いようだ。

 場所もここからさほど離れている訳では無いが、真の目的地である氷結魔法のマサンドラの正反対に位置している。


  だが、まぁ、二人が喜ぶのであればそれで良しとしよう。


  それにもし監視が付いたとしても巻くことも容易いはず。


 というか、俺自身もその風光明媚な湖とやらを見てみたいしな。


 次はようやく純粋な観光が出来そうだ。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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