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171話. ネバネバの使い道


 目覚めの悪い朝を迎えた。


 そう、翌日はひどい二日酔いになっていたのだ。


 ユエはもう起きていた。


 しかしノエルはまだぐったりとして寝ている。まるで死んだかのようにピクリとも動かない。


 「う~ん。俺はかなりの二日酔いをしているみたいだ。ちょっと寝ていたい。ユエにはすまないが、今のところはノエルと俺は宿で過ごす感じになりそうだ」


 「うん、分かった。何か胃に優しそうな果物を買って来るね!」


 ユエは本当によく出来た女の子だ。


 結局、ユエが戻ってくる頃になって、ようやくノエルが目を覚ました。……が、やはり二日酔いだった。というか、俺よりも酷いんじゃないか。これは重傷だ。


 一方のユエはとくに指示をしていないのに、色々と買ってきてくれた。これは大変ありがたい。


 ノエルも宿で休みたいということなので、午前中は久々の『完全オフ』ということになった。


 午後になって体調がある程度回復したところで、我々はギルド会館へと足を運んだ。


 「おおっ、君たち、来てくれたか。さっそく上に上がってくれ」


 俺たちにはまだやる事が残っている。


 ギルドの調査結果の報告を聞くのと、消火報酬を受け取るためだ。


 部屋に入るとギルド長のケインが待っていた。


 「おう、よく来たな。昨日は眠れたか?」


 「いや、俺もノエルもひどい二日酔いだ。実際のところ、午前中の間はずっと休んでいたんだ」


 「そうか、そうか。まぁ、仕方ない。あの異様なまでの盛り上がり方だったからな」


 ケインは疲れたような顔をしてるが、明らかに二日酔いでは無いようだ。そりゃそうか。お仕事お疲れ様。


 「もの凄い盛大なパーティーだったわ。あんなの初めて。ケインさんが来られなくて残念だったわ」


 「うん。本当にすごかった。楽しかったよ」


 「それは何よりだ。私も参加したかったのだが、現場検証が忙しくて……。結局、寄れず仕舞いさ」


 「そうだった。それで、現場検証の方は?」


 「あぁ、それなんだが。最終的に我々は君たちのパーティーが消火に成功したと認める判断を下した。つまり予定通り、報奨金を今、この場で支払うぞ!」


 そう言って、ケインは机の上の膨らみに手を伸ばした。次の瞬間、被せられていた緑色の布を彼がおもむろに取り払うと、そこには見事なまでの金貨の山があった。


 「すごい!」

 「わぁ!」


 姉妹は目をキラキラさせながら、金貨に見入っている。


 「それじゃ、これを受け取って用件は終わりということで大丈夫だろうか?」


 「いや、実は君たちにはもう一つ報告がある」


 ケインは俺たちの前に小瓶を差し出した。


 「これは……。あの沼の水か!?」


 「見ての通り、その通りだ。これまで燃え盛っていたから採取が出来なかったが、ようやく水の正体が突き止められそうだ。こんなことになるのが分かっていたら、火が付く前に取っておくべきだったんだがな。逆に当時はだれも興味が無くて調べようともしなかった訳だ」


 「つまり、その『水の正体』を知りたい、と」


 「それが希望だが、おそらく我々の技術と知識では無理だろう。だが、問題はその先だ。つまりは使い道だな。もし何かしら良い使い道があれば、この街の新たな産業になるかもしれん」


 「そうね。確かに私たちは魔物の素材に目が向いていたけど、水そのものも役に立てば一番よね」


 「う~ん、でもこんな黒くてネバネバした水なんて何に使えばいいんだろう」


 「何かいい考えがあったら、良かったら聞かせてくれないか」


 「そうだな。ここで百万クランも頂いてしまった訳だから、方向性くらいは提示しておきたいと思う」


 ……と言っても、これはまた難しい。


 何を隠そう、俺はこの水の正体が【石油】であることに気付いている。


 だから方向性は示せなくもない。


 だが、この世界にプラスチックは必要ないだろうし、明かりも昨晩見た『灯籠石』がある。つまりは燃料としての石油にさほど需要はない。


そもそも論として、ガソリンにしてもプラスチックにしても作り方が分からないし、この世界で精製できる保証すら無い。


 となると手詰まりだ。


 う~ん。何か無いだろうか。


 あっ!?

 そうか、アレがあったな。


 「そうだな。確かに『水』としての使い道はちょっと思い付かない。だが、俺の記憶によると沼の出入り口から一番遠い辺りの岸辺にかなり粘り気の強い黒い液体が滲み出ていたはずだ」


 「そう言えば、確かにそんな状態だったな。それを何に利用するんだ?」


 「あれは水漏れ防止に使えると思うぞ。あとはそうだな、接着剤だな。今は柔らかいが、接着させてしばらくすると硬くなって強力に貼りつくはずだ」


 「ほう、あれにそんな使い方があるのか! それは良いことを聞いたな。いや、大変助かる。恩に着るぞ」


 「サイは本当に物知りね!」


 「うんうん」


……とまぁ、こんな具合で買い取りとさらなる人助けが一段落することに。


この接着剤という案だが、歴史博物館の展示でチラッと目にした縄文時代の槍先を思い出したから捻り出せた。そうじゃなければ思い付きようがない発想だった。間違いない。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] てっきり燃料としての使用をアドバイスするのかと思ったら違った まあ、燃えてたわけだから、 別に主人公が言わなくても皆知ってるだろうしな この世界にもランプはあるだろうから、 油として使…
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