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167話. 大探索時代の幕開け


 「とりあえずだ。これは何としてでもウチのギルドで引き取りたい。ちょっと鑑定士を連れてくるからしばらく待っていてくれ」


 そうしてケインはいそいそと出て行ってしまった。


 「なんだかすごいことになりそうだね」


 「本当にそれよ、それ。……にしても、よくサイはあの沼の中を探すことにしたわね。普通はしないわよ、そんなこと。火を消したらそれで満足するじゃない、普通」


 確かにノエルの疑問はもっともだ。普通なら依頼の消火をすればそれで満足して帰還してしまうだろう。


 「いや、ちょっと心当たりがあってな。あの沼は水が黒くて中の様子が分からないし、あれは普通の水じゃないから、これまであまり調査がされてこなかったかもしれないと思ったんだ」


 「そうね。あの池の底を漁ろうなんて思わないわよ。釣りはおろか、水浴びさえもできないし。まさかこんなお宝が沈んでいるとは誰も考えないんじゃないかしら」


 そんな会話をしていると、ケインと鑑定士が飛び込んできた。


 「あれだよ、あれ。見たことあるか?」


 鎮座する巨大な『ポセイドン・ライノ』の頭部を目の当たりにしてあっけに取られている。


 「なんじゃこりゃ!? こんなの見たことないぞ。いや、失敬。しかし、参ったなこりゃ。何も分からないぞ。本当に何も」


 「おいおい、しっかりしてくれよ。このギルドが誇る最強の鑑定士だろう、君は」


 「そう言われたって、こんな変な魔物なんか聞いたことすらないぞ」


 「あー、お取込み中すまないが、ちょっといいか」


 「君が発見者だね。この魔物について何か知っていたりするのか?」


 「いや、そういう訳じゃないんだが、もしかすると既に絶滅してしまった魔物かもしれないと思ってな。この可能性についてはどう思うか聞いてみたかっただけだ」


 「あぁ。そいつは盲点だったな。確かにそういう可能性も無くは無いか。しかしどうしてその考えに思い至ったんだ?」


 「俺はあちこちを旅してきてその手の話を聞いたことがある。もう一つ面白い予想をしようか?」


 「面白い予想だと?」


 「そうだ。俺の考えだと、おそらくあの沼の底には膨大な量の魔物の骨が眠っている。それこそ数え切れないくらいだ。もちろん太古の魔物も多いだろう」


 「確かにそうかもしれないが、まぁ想像の範囲内だな。大変な功績として称えなければならないな」


 「実はまだ面白い予想について話していないんだがな」


 「なにっ!? そうなのか??」


 「サイ、その話、私たちも興味があるわ」


 「うんうん」


 「そうだな。今話した部分は前座に過ぎない。だが、重要な部分だ。俺の予想が正しければ、あの沼からは肉食系の魔物の骨が大量に見つかるはずだ。それこそ大きな牙を持ったような魔物がな」


 「ほう。それは興味深い話だな。どうしてそう思うのか、参考までに聞かせてくれないか?」


 「あぁ。話としては単純だ。あの沼は普通の沼じゃないからな。間違って水を飲みに来た魔物が足を取られて溺れてしまうなんてことはよくあるだろう」


 「ふむ。確かにそう言われてみるとそうだな」


 「……で、溺れかけていたり死んだばかりの新鮮な魔物がプカプカと浮かんでいたら、その先は想像できるんじゃないか」


 「なるほどな、話が見えてきたぞ。つまり、それを目当てに肉食系の魔物が寄ってくる訳だな」


 「それだけじゃないぞ。そうやって寄ってきた肉食の魔物も溺れて餌になってしまうかも!?」


 「すごいな、君は。いかにもあり得そうな話だ。矛盾はしない」


 「俺の言いたいことはそういうことだ。つまりこの魔物は大きな山の一画に過ぎないと思う。普通は草食獣の方が数は多いが、あの池で見つかるのは数が少ない肉食獣ばかりということだ」


そう、あの沼に限っては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。


今の話を聞いて、ケインと鑑定士は腕組みをして考え込んでいる。しばらくして二人はひそひそ話を始めた。


 ケインが口を開く。

 「そうだな。今の話は確かに興味深い。だが、現段階では根拠が無さすぎる。そうは思わないか?」


 「確かにそれだけなら仮説に過ぎないだろうな」


 「何か証拠でもあるかのような口ぶりだな」


 「ああ。ここをよく見てくれ」


 俺は頭部の右側面を指さした。


「これは……。もしかして歯型か!?」


「間違いない。この形状。何かしらの獰猛な肉食系の魔物のものに違いない」


「となると、存外、先ほどの話も信憑性を帯びてきたと思うが」


 「ちょっといいか」


 再び、ケインと鑑定士は内緒話を始めた。


「そうだな。今の情報代と口止め料込みで『200万』でどうだろうか?」


 「「に、にゃくまんーー!!??」」


 絶妙なラインを付いてきたな。それほど悪くない金額だ。実際、まだ発掘をした訳ではないから俺の予想が実証された訳ではない。落としどころとしてはこんなところだろうか。


 だが、もう一声かな。


 「そうだな。こちらとしては、それなら『250万』で手を打ちたいのだが……。こんなお宝がザクザク出てくるかもしれないぞ」


 ゴクリっ。と唾を飲む音がここまで聞こえてくる。ギルドの二人とも視線が頭部に吸い込まれていく。


 「あ、ああ。それで手を打とうじゃないか」


 こうして固い握手を組み交わして、無事に契約成立だ。


 ノエルとユエは金額のあまりの大きさに目をぱちくりしている。


 「この金額には口止め料も含まれている。だから、今回発見したものについての一切の情報は今日をもって忘れて欲しい。もちろん誰にも口外してはいけないよ」


 「もちろんだ。それに値するだけの十分な金を貰っているからな」


 ということで、この話はこれで終わりになった。


 さてと、実はまだ本件は終わっていない。次なるは現地調査だ。


 もしこの調査でギルドが正式に消火を認めてくれるなら、依頼達成となって成功報酬の100万クランも追加で手に入る。


 ヤバい。笑いが止まらないな。濡れ手に粟なんて話じゃない。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 無双してるからいくらでも強い魔物狩ってお金困らないだろうに、 取るべきところはしっかり取るんだな
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