161話. 何かと注文の多い依頼受注
我々はギルドの受付けに向かった。どうやら担当しているのは男女1人ずつ。さっそく話かけてみる。
「あー、すまないが、あの『燃える池の消火依頼』を受けたいんだが?」
「おお! 君たちのパーティーが引き受けてくれるのか?? それは大変助かるな。それではこちらの用紙に必要事項を記入してくれ」
ショボい紙切れが置かれる。
パーティーに関する詳細やランクなどを記入していると、今度はギルド嬢が話をしてきた。
「初めてこの依頼を受けられるということで、いくつか注意事項があります」
「ほほう。やはり普通の依頼ではなさそうだな」
「ええ、もちろんです。当ギルドが抱える最重要課題ですから。ただしこの二年もの間、いずれのパーティーも鎮火させるまでには至りませんでした。正直にお伝えしますが、そのような理由で、我々としてもあまり期待はしておりません」
「やっぱり難しい依頼なのね」
「ですが、多くの方にご参加頂くことにより、鎮火の可能性は上がります。ですから、皆さんにご参加頂けるとのことで、それだけで大変感謝しているところです」
「いや、まだ参加を表明しただけだからな」
「それがもはや希少なのです。既にこの街の冒険者の大半は何度となくトライして撃沈を繰り返して、もはや戦意を喪失している状況ですから」
「そうなんだ~。やっぱり大変そう」
「それで、注意事項があるんだよな?」
「そうでした。まず念頭に置いて頂きたいのが、【絶対に無理をされないように】ということです。これは念押しさせて頂きます」
「ほう。それはどうしてなんだ?」
「我々としては『消火』が最終的な目標ですが、下手なことをすれば現在よりも状況が悪化する可能性が考えられますから。例えば大規模な山火事ですとか、そういうことが起きかねない魔法の利用は禁止とさせて頂きます」
「なるほど。それはごもっともだ」
「それに関連して、『放水魔法』の利用も厳禁です。あの池は水を掛けても消火できませんし、放水によって火が飛び散ったりすると大変危険ですから」
「それはさっき他の冒険者から聞いたわね」
「うん、聞いた~」
「これで最後になりますが、これからお渡しする依頼の控えは今から6時間に限り有効とさせて頂きます。本日は連続して依頼を受注することはできません。もし明日からも受注を希望されるようでしたら、今回とは別の依頼として、同じく6時間のみ申請して頂きます」
「どうして6時間だけなんだ?」
「ご存知の通り、『成功報酬』が膨大な金額だからです。きちんと誰が消したのかどうかを確定させないと大きなトラブルになりますから……。だからこそ管理をきちんとしたいのです。他に受注の希望者がいる場合は臨時で共同パーティーを組んで頂くか、あるいは時間をずらすよう手配します」
「ふむ」
「それに先ほどお話しした通り、大火事になるなど想定外の事態も予想されます。そのため、ギルドの職員が高見櫓から6時間の間、付きっきりで監視を行います」
「ここから火の手が見えたりするのか。それは興味深いな」
「残念ながら火そのものは見えません。ですが、黒い煙がモクモクと昇っていくのが良く見えますから」
「なるほど。そういうことか」
「ギルドでの消火の判断は、経過観察中のその煙が消えた時点をもって行います。ただ、それはあくまでも仮の判断です。厳密には皆さんがご帰還された後、ギルドの職員も同伴して現場を確認することで、最終判断をさせて頂きます」
「分かったわ」
「よく分かった。ありがとう」
「頑張る~」
「それではサイさんのパーティーの皆さん、お気を付けて!」
こうして長々とした説明が終わった。
う~む。
どうやら街が抱える最重要問題を解決したいという思惑がある一方で、現状より悪化することは何としてでも避けたいということで色々と条件が付いているようだ。
だが、いずれも納得できる条件なのは幸いだった。
「それじゃあ、依頼を受注したことだし、さっそく消火に行ってみるか。今から6時間だけだからな。善は急げだ」
「「レッツ・ゴー!!」」
こうして我々は街の外れにある燃え盛る沼を目指すことになった。
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