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158話. 先へと進むのもいいが、そろそろ練習が必要だ


 通称 “イモ村” として知られているコルテアを離れ、俺たちは北へと進路を取った。目指すのは電撃魔法が習得できるというラティアス。


 とりあえず、しばらくはこのまま歩いて進んでいく。


 人通りがほとんどない道とはいえ、現状では目立つ空間移動での飛行をするのは避けたいところだ。


 だいたい小一時間ほど進んだ頃合いだろうか。道脇に大きな空き地が姿を現した。これはちょうどいい。


 「ノエル、ユエ、ちょっとここで『長めに』休憩を取らないか?」


 「休憩だ!? やったー!」


 「もちろんいいわよ。でも『長め』という枕詞が引っかかるのだけれど」


 「いや、ちょっとな。いい感じの何もない土地があったから、ここで魔法の練習をするにはもってこいと思っていたところだ」


 「魔法の練習?」


 「そうだ。実際、俺たちは自身が持っている魔法の使い方をよく理解しているとは言い難い。むしろ機能をほとんど使いこなせていないはずだ」


 「それは……。そう言われて見ると、確かにそうかもしれないわね」


 「わかった~」


 「よし。それじゃあ、ひとまず休憩したら魔法の特訓だ!」




 十分に休んだところで魔法の練習を開始する。


 時間があるとはいえ、こんな半端なところで時間を食ってしまうと今日中にラティアスまでたどり着けないかもしれない。仕方ない。選択と集中だ。


 「とりあえず、習得したばかりの土石魔法を練習してみるか」


 「ノエル、そもそもだが土石魔法の使い方とか何か聞いたことがあるか?」


 「う~ん、どうかしら。里で使える人はいなかったわ。ただ、土石魔法は建築に有用な魔法なのは知っているでしょう? あとは、そうね、戦闘時の防御に有用な魔法だと聞いたことがあるわ」


 「防御?」


 「そう。地面から垂直の壁を生やして、敵からの攻撃から身を守るの」


 「それは面白そうだな。ちょっとやってみてくれないか」


 「やってみたことは無いけれど、試してみるわ!」


 ……。


 「ダメ。詠唱の呪文が使えないみたい。村の人に教えてもらった建築の呪文では壁を出せないのかしら」


 「ユエもやってみる~~」


 身振り手振りユエが色々と頑張ってくれている。


 数分後。


 「やっぱり、無理~~」


 「う~ん。やっぱり難しいのか。とりあえず、俺がやってみるか」


 手を前に構えて防壁を築くイメージをする。

 「セメント・ウォール」


 おおっ!!


 いい感じに壁が生えてきたぞ。いや、「生えてきた」っていう表現は何だか変だな。でも壁が地面から出現して、そのまま伸びてきた感じだ。


 「「えぇーー!?」」


 姉妹も目の前で起こった光景を目の当たりにして、目をパチクリさせている。


 「おぉ。ちゃんと壁が生えたな」


 「……って、『生えたな』じゃないでしょ。凄すぎるわ!」


 「う~ん、何が違うんだろうな」


 確かに俺の資質は『超級』。ノエルとユエは中級からジョブチェンジして『上級』になっている。


確かに超級の効果なのかもしれないが、それほど大層なことをしたようには思えない。やっていることは皆で橋を架けた時よりもショボい。


「そうだ!? また一緒にやってみるか!」


「一緒に?」


「そうだ。ちょっと手を構えてみてくれ」


「こう?」


 「そうそう。そんな感じだ」


俺はノエルの手首にそっと自分の手を当ててみた。


 「それじゃいくぞ、俺が魔法を出すイメージをするから」


 ニョキニョキ。


 「おお。これはまた見事なまでの壁が出てきたな」


 「えぇ!? できた!?」


 「いや、まだだ」


 「今度はノエル1人だけで今の壁をイメージしてやってみてくれ」


 「わかったわ」


 ニョキニョキ。


 「やったな!」


 目の前には先ほどと同じような壁が出現した。やはり俺と同じく無詠唱で。


 これではっきりした。


 俺が直に体に触れて気を流し込むというか、魔力の同調をイメージすることで、おそらく他人であっても魔法の最適化が出来るらしい。この場合、つまりは無詠唱魔法が俺以外でも使えるようになる。これはヤバい。いろんな意味でヤバい。


 「今さらだけど、目の前で起こったことと無詠唱魔法が使えるようになったことは内緒だ。誰にも言っちゃダメだぞ」


 「い、言えないわよ。こんなこと! それにしても、まさか私が無詠唱魔法を発動できるだなんて!? 信じられないわ」


 「ユエも~、ユエも~!」


 「分かった分かった。それじゃ、ユエもやってみようか。おそらく同じく『上級』の資質だから大丈夫だろう」


 ドドーン!


 「すごい! 私も無詠唱が使えたよ」


 とりあえず、壁は作れたか。


 「そう言えば、『ゴーレム』が作れるという話は聞いたことが無いよな?」


 「ご~れむ?」


 「えっと、土の塊で出来た巨大な動く人形のようなものなんだが……」


 「う~ん、聞いたことないわね。というか、そんな凄いのが出来るとは思えないけど?」


 「とりあえず、試してみるか」


 シーン。


 「やっぱりダメだったか」


 どうやら空間魔法と同じく、単純な形態の構造物しか生み出せないようだ。したがって、動く人型の模型を作るというのは現状では不可能ということだろう。残念。


 さて、重要なのはゴーレム作成が出来なかったことではない。


 俺の力で他人の魔力回路の調整ができる(?)というのが判明したことだ。


 元はと言えばミナスでの土石魔法習得の時にこの可能性に思い至った。


しかし、実は伝道師『ガイ』から魔法の話を色々と聞いたときに、何となく俺には潜在的にそのような力があるように思えたのが大きい。特に『魔力覚醒』の下りを聞いたときにピンとくるものがあった。


些細な気づきだったが、これがきわめて重要な発見だったな。ガイを紹介してくれたブロドリオにも感謝せねば。


さて、次は火焔魔法かな。


こうして一通り、姉妹が持っている魔法のグレードアップをこなしていく。


残念ながら姉妹が持っていない魔法、例えばユエが空間魔法を使えるようになるかと言えばそんなことは無かった。


しかし、二人とも高火力の魔法を無詠唱でこなせるようになった。これは革命的な大進歩に違いない。


 休憩と魔法練習はこれにて終了。


 今度はラティアスを目指そう!



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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