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157話. 縦がダメなら横にしな!

 

「えっ、何だって? すまないが、もう一度説明してくれないか?」


 俺の考えを一回伝えただけではあまり理解されなかった様子。


 無理もない。

 あまりにも突拍子もない常識はずれの考え方だ。


 とりあえず目の前で実演してやってみるのがいいだろう。


「それじゃあ、実際にやってみよう。作付けをしても良さそうな場所はあるか?」


「ん? ああ……。あそこを見てくれ。ちょうどあの辺りに植えようと整地したばかりだよ。今日はその作業をする予定で種芋も脇においてあるだろう」


「なるほど。それは好都合だな。じゃあ、それを使って実践してみよう」


「サイの考えがどんな感じなのか早く見たいわ」


「では準備をしたいのだが、まず必要なものがある。宿屋の脇の空き地に積まれていた筒状の素材だ」


「筒状の素材……。あぁ、お前さんが言っているのは乾燥させたリネアープランツの幹のことだな。中が空洞になっている、あれか」


「おそらくそれだ。もし良かったらそれを使いたいのだが」


「あれはいくらでも生えているし、頑丈なのに成長が早い植物なんだ。そんな訳で使ってもらって全然構わないさ。それじゃあ、取りに戻るか。その様子だとナタも必要かな」


「そいつは助かる。よし、準備開始だ!」



 ◇


 リネアープランツと加工するための道具を用意した我々は、再び畑に戻ってきた。我々が立っているのは、ちょうど作付け予定の区画の目の前だ。


「さてと、それじゃあ、実践編だな。だが、その前にまだやる事がある。このリネアープランツの幹の加工だ」


 そう言って、俺はリネアープランツに刃をスッと入れ、縦に二つになるよう分断した。繊維に沿っているので簡単に割れてくれる。


 この植物は竹とは異なり、一切、節が見られない。それがちょうどいいのだ。


「二つに割って、それをどうするの?」


 ユエが興味津々といった表情でそう聞いてくる。


「もうこれで基本的には準備完了だ。あまり手間が掛かると、それは労力を削減したことにはならないからな。それじゃ、俺流のイモの作付けをしていくぞ!」


 おもむろに作付け予定の土地を指さし、まずは栄養のある黒土を平らに広げていく。次に半円のパイプ状になったリネアープランツの幹を並べていく。むろん先ほど切ったばかりの断面を上にしながら幹をそれぞれ平行になるように設置する。


 そうして最後には断面の高さまで土で埋めてしまう。


「サイのやろうとしていることが見えてきたわ。そういうことね。凄いわ!」


「おそらく想像の通りだ。いよいよイモを置いていくぞ」


 そのリネアープランツの筒の片割れに一本ずつイモを置いていく。


「もしかして、お前さん……」


「そうだ。その通りだ」


 それが終わったら土を掛けて完全に埋めてしまう。


「これで一段目が完成だ。この上に2段、3段目とやっていく感じだ。少し傾斜を付けるといいかもしない」


「すごい!」


「これは! いや、まさか、そんな。つまりアレか。イモを縦ではなく横にして栽培するというのか!?」


「まさしくその通りだ。しかもこのリネアープランツの型枠に沿って成長するから真っすぐに伸びるはずだ。成長したら型枠ごと引っこ抜いてしまえば、折れることなく楽に収穫できるだろう」


「すごい、すごいぞコレは。大革命だ。もしこれで本当に成長して収穫できるならば、このコルテア村のイモ栽培の歴史がすっかり塗り替わってしまうぞ!」


 このおっさん、ものすごい興奮ぶりだ。


「とりあえず貴重な畑の一画を使わせてもらってアレだが、俺の考えはこんな感じだ」


「いやいや、それ位は全然構わんよ。……と、いかんいかん。こうしている場合じゃなかった。早く村の衆を呼んでこなければ。」


 しばらくすると、ゾロゾロと村人たちが様子を見に来た。


 皆、一目見るなり驚愕の表情を浮かべ、喧々諤々と議論を始めてしまった。


「いやー、サイさんと言ったね。こんな方法、これまで誰も試して来なかったよ。と言うか、思い付きようが無いさ。これは成功したら大変なことだぞ」


「これはえらいことになったな。信じられない発案だ。これは是非、サイ式農法と名付けよう」


 こうして俺の発案はひとまず受け入れられ、実際にイモが育つかどうか様子を見てくれることになった。


 もし目論見通り収穫が問題なく可能であれば、長い状態の完璧のイモを容易に手に入れられるはず。そうなれば村にとっては大きな利益になるだろう。


 こうしてレクチャーが終わった後、我々は豪勢なイモ料理の昼食をご馳走になり、村を後にした。


 次に向かうのはいよいよ、電撃魔法が習得できるというラティアスという場所。


 はたしてどのような村なのだろうか?



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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