156話. イモ畑に革命を!
翌朝。我々は昨晩の約束通り、イモ畑の見学をしようと飯屋を訪れた。
「おぉ、三人ともよく来たな。それじゃ、さっそく畑へ行くとしようか」
そう言って、飯屋のご主人が威勢よく案内してくれる。
「昨日のおイモがどんな風に育っているのか是非見てみたいわ」
「揚げ物がとっても美味しかったね~」
◇
歩き始めて7分後。ついに畑が見えてきた。
「ここから先が俺たちの所有している『ヒョロヒョロイモ』の畑だ。柵を解除するからちょっと待っていてくれ」
「昨日食べたイモはヒョロヒョロイモというのか?」
「そうなんだ。最大3メートルにもなるという話をしたのを覚えているだろう? 長さは長いが太さがな……。大体4センチといったところで細くて細くて。だからヒョロヒョロなんだよ。すぐにポッキリ折れてしまうからポッキリイモでもいいかもしれんがな。ガッハッハ!」
えっ? 長さ3メートルで太さがたった数センチしかないイモなのか!?
このおっさん、一人で勝手に受けて笑っているが、この話の通りならけっこう難儀な作物に違いない。どうやって収穫するのだろうか。
ゲートを超えていよいよ畑の中へと入る。
なるほど。露地栽培で等間隔に畝が並んでいる。空からはよく分からなかったが、今まで見たことのない類の畑だ。
もっとも奇妙に見えるのがこの畝に相当する部分。木枠でまるでプランターのように盛り土を囲っている。しかも木枠の高さが1メートル強はあろうかというほど高い。
畝の中心部にはイモと思しき植物が植えられている。
しかしそういうことか。
「ここに生えているのがヒョロヒョロイモだ。話した通り、イモ自体はかなり長さがあるから掘り起こすのが大変な作物なんだ。この木枠を見てくれ。これは簡単に外せるようになっている」
「つまり収穫する時には木枠を外して簡単に掘り起こせるようになる訳ね! 頭がいい方法だわ!!」
ノエルがひとしきり感心している。
「その通りなんだ、嬢ちゃん。だがな、我々がこれまで試してきてこの木枠の高さが限界だったんだ。本当はもっと高くして楽に収穫したいのだが。これ以上の高さだと下の部分がしょっちゅうポッキリと折れてしまうから困っているんだ」
「そうなんだ……」
それを聞いた途端、ユエがしょぼんとした表情をする。それほどイモが気に入っていたのか。
「それで深い部分になればなるほど美味いとなると、できる限りイモ全体を回収したい訳だな」
「もちろん! だが、俺たちが思い付いたのはこの方法がせいぜいさ。男衆は何とか収穫できるが、女子供には到底無理な力仕事だ。この木枠でそれでも大分マシになったけどな」
う~む。俺としてはユエもこのイモにご執心のようだし、この問題が何とかならないか助けたいのは山々だが……。
実際のところ、木枠で山を作り、収穫時には木枠を外してイモを回収するというのは非常に優れたアイディアだと思う。これを超える何かが欲しい。
いや待て。あった!
不意に俺は、飯屋の脇の空き地にまるで竹のような筒状の素材が積み上げられていたのを思い出したのだ。
見たところ柵の修繕作業に使うための材料のようだったが、それは今思い付いた俺の考えを試すのに持ってこいだろう。
「ちょっといいか? 俺に一つ考えがあるんだが……」
この俺の一言をきっかけにして、この小さな村のイモ栽培に革命が起こることになる。
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