153話. 次々と明かされる魔法の謎
開口一番、このガイという男は思いもよらない事を口にした。
「そう言えば二人はネコ族の獣人だね。ということは【魔力覚醒】の村から来たのかな?」
「えぇ、ウソでしょ!!!!」
「わぉ!! どうして知っているの!?」
姉妹がほぼ同時に答える。
というか、俺自身も相当にびっくりしている。
だってそうだろう。
俺が『魔力覚醒』について知ったのは鑑定スキルを使ったからで、言ってみれば反則技で入手した情報だからだ。とてもじゃないが、一般人には知りえない類の極秘情報なはず。
それをさも当然のように知っているとなれば、やはりこの男は只者ではない。
「詳しいことは言えないが……。そうか、やっぱりあの村から来たのか」
「何だか気味が悪いわ。でも、魔力覚醒のスキルについて何か知っていそうな口ぶりね」
「いや、実のところあまり詳しくはない。ただ、あのスキルは体内の魔力吸収に関する抵抗を抑える効果があって、魔力変換効率と伝導率を大幅に……」
「ユエ、難しくて分かんない」
「ああ、すまない。つまりだ。おほん。……魔力覚醒によって魔力を使う際の効率が上がるんだ。それによって普段よりも強力な魔法を瞬時に繰り出せるようになるわけだ」
「なるほど。そういうことなのか。やはり魔法のブースト効果があるとは興味深いな」
「それはそうと、俺に訊きたいことがあるんじゃなかったのか?」
「そうだな。まず、いきなりですまないが、ガイは遺物の複製が出来るんだよな?」
「それはイエスともノーとも言える。確かに一部の遺物に関しては一応『複製』はできると自負している。だが、あくまでも一部でしかない。それに効果を完全に再現できているかどうかはよく分からない。あくまでも簡単なスキルに限定されるものだ」
「そうか、とにかく複製できるというだけでもすごい技術だ」
「いやいや。これでもここ百年の間にかなり失われてしまった。争乱もあって、技術の継承の大部分は途絶えてしまったんだ。こうして私のような数人が辛うじて伝承しているだけさ」
「ということは、ガイでも知らないことは多いという訳か」
「残念ながらそういうことだ。逆に訊きたいが、サイが魔法について疑問に思っていることは何かあるかな?」
「そりゃまぁ、たくさんあるかな。だけど、一番不思議に思っているのは『人間』についてだ」
「人間ときたか。だが、魔法とは関係……」
「いや、大いに関係があると俺は思う」
「私も何でそう思うのか気になるわ」
「そうだな。そもそも人間に魔石が無い。その事実が既に怪しい」
「ほう。それはどうしてまた」
「だってそうだろう。魔物といった動物や魔族には魔石がある。逆に言えば、魔石が無い人間の存在の方がよほど不自然だとは思わないか?」
「よくその点に気付いた。素晴らしい。自分の知っている範囲で答えると、そもそも魔物は自然界の魔力を取り込み、魔石に溜め込む生き物だ。片や、人には魔力を貯める機能がないので、結果として魔力が小さく、魔道具は魔石なしでは機能させることができない。そういうことだ」
「それだ。その魔道具や石碑といった遺物は元々人間が作ったものだとすれば、もしかしたら昔の人間は魔法の扱いに長けていたんじゃないかと思うのだが??」
「すごいな、君は。まさかここでサイのような考え方をした人間に出会えるとは驚きだ。さすがブロドリオ様が推薦するだけのことはある」
腕組みしながらガイはうんうんと言った具合で頷いている。
「ほう、というのは?」
「実はここだけの話……。えっと、これから話す内容は他言無用だ。その点をきちんと納得してもらってから話を進めたいが」
「分かったわ」
「うん」
「了解した。話を進めてくれ」
「うむ。それでは先へと進もう。おほん。……それでだ。実はとある村に言い伝えが絵として残っていて……。それによると、太古の人間には心臓と魔石の両方があったそうだ」
「「「えぇーー」」」
これは凄い話を聞いてしまったな。
心臓と魔石を持つ人間と言えば、それってまるで【俺】のことみたいじゃないか!
「それは驚いたな。続きを聞かせてくれ」
「続きといっても話としてはこれでおしまいだ。いや、話せる内容はもう少しだけあるかな」
「それはぜひ頼む」
「それじゃあ、せっかくここまで訪ねてきたのだから、とっておきの話をしよう」
「ありがたい」
「うむ。今話した通り、魔石を持つ太古の人間は既にいない……、ということになっている。だが」
「だが……?」
「君たちは100年前の騒乱の最中に登場した【勇者】のことを知っているだろう。実のところ彼らは心臓と魔石の両方を持っていたという噂を耳にしたことがある。もちろん自身の目で見た訳ではないし、間違っている可能性は大いにあるのだが、どうだ、面白い話だろう?」
「その勇者というのはアレだよな。確か『魔族狩り』の際に大活躍したという歴史上の存在か?」
「そうだ。もしその話が確かなら、いわゆる『先祖帰り』してしまった存在だろう。荒唐無稽のような話だが、伝承に残る通りのあり得ない伝説的な強さの裏付けとしては筋が通っているような気がしてならない」
さらに話は続く。
「実は勇者の彼らは魔物と同じく突如として出現したと伝え聞いている」
思わずブルっと身震いする。
ひょんなことから、とてつもない話を聞いてしまった。
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