152話. 謎多き伝道師
ランドコールの森の中で見つけたポツンと佇む一軒家。
開いたドアから出てきたのは一人のおばちゃんだった。
「あらまぁ! こんなところにお客さんだなんて珍しいねぇ。どんなご用向きなのかしら」
「期待させてしまったようですまない。ちょっと尋ねたいが、この場所は『ランドコール』で合っているか?」
「なるほど。お前さん達は旅のもんだね。そうさ。確かにランドコールで合ってるよ、ここは」
「そうか。それはよかった。実は、ちょっとこの辺りに住んでいる『ガイ』という人物を探しているんだが……」
「あぁ、お前さん達はガイさんのお知り合いなんだね。ここに来る道の途中に分岐があったでしょう?」
「えぇ、左にそれる分岐のことかしら」
「それさ。そこを1キロほど進むと右手に家が見えてくる。その家こそ、お前さん達が探しているガイさんのお宅だよ」
「教えてくれてありがたい」
「ありがとうー」
「助かったわ!」
こうして教えられた通りに道を進むと確かに家が見えてきた。といっても周囲に溶け込むような地味な外観だ。あえてこのような見た目にしているのだろう。周囲に家々はおろか畑も人工物もない。
ドンドンドン。
とりあえずドアを叩いてみる。
在宅なら助かるが、もしそうでないなら出直しだ。
ガチャリ。
中から50代ほどの謎のオーラをまとった男が出てきた。見た目は普通だ。
この方こそブロドリオが推薦してくれた伝道師の『ガイ』なのだろうか。
「突然ですまないが、ここはガイさんのお宅でよかっただろうか?」
「いかにも私がそのガイ本人だが、君たちは……」
「俺は冒険者のサイ。こっちにいるのは同じくノエルとユエ」
「遠いところ訪ねてきてくれてありがとう……、と言いたいところだが、一体何の用で俺の元まで来たのかい?」
「我々は『伝道師』としてのガイに興味があって来たのだが」
そう言った瞬間、男の眉毛が一瞬だけだが、ピクっと動いた。
「どこでそれを?」
「ああ、そうだった。まずはこれを見て欲しい」
俺は懐にしまい込んでいたブロドリオがくれた小さな金色のメダルを取り出した。そしてそれをガイに見せる。
「こ、これは!! 一体どこで!?」
「見ての通り、俺はブロドリオ様から推薦してもらってここを訪れている。繰り返しになってしまうが、我々は伝道師としてのガイさんに話があるんだ」
「分かった。これを見せられてしまっては無下には出来まい。他ならぬブロドリオ様の頼みとあってはな」
「いやいや、別に俺たちはブロドリオ様の使いでも何でもないのだが」
「えぇ!? このメダルを持っているのに本当に何も知らないのか。これは驚いたなぁ。いいかな。これは今、サイが言った通りブロドリオ様の代理人を意味するものだ。本当に限られた人間しか持つのを許されていないのだよ。見たまえ、この豪華な装飾を」
「確かに。そう言われて見るとやたら凝っているし、何だか妙にきらびやかだと思っていたが」
「とにかく事情は分かった。さあ、遠慮せず中に入ってくれ」
う~む。
いざ家の中に入ってみても特に変わった様子は見当たらない。はっきり言ってしまえばごく普通の住居だ。
もしかすると、ここはお客に見られても大丈夫なようにしてあるのかもしれない。
「まぁ、とりあえずここに掛けてくれ。今、お茶を出すから」
伝道師が背中を向けている間にこのガイという男を鑑定してみる。
鑑定。
--
名前:ガイ
種族:ヒューマ
職業:便利屋
HP:???
MP:???
魔法:???
スキル:???
特記事項:伝道師。
--
おっと。これは……。
肝心の数値や魔法、スキルに関する項目がすべて『???』となってしまっている。
つまり俺の鑑定スキルが通用しない相手ということだ。
これは手強い。
だが、これではっきりした。
この男は【本物】で間違いない。
どんな話が聞けるのか分からないが、これは期待できそうだ。
最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!
もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。