14話. 初めての常設依頼はまさかのレア仕事
ここはギルド会館。目の前にあるのは黒板のように巨大な掲示板だ。ここに貼られている数々の紙は依頼の掲示。目を皿のようにして一枚ずつ注意深く読み込んでいく。
今の俺のランクは最底辺のFランク(ノービス)。
そうなると、受注できる依頼などたかが知れている。
漫画アニメでは薬草採取がこの手の最初の受注依頼としては定番だと思うが、俺には薬草の知識など皆無。それどころか、どこに生えているのかさえも分からないし、もし薬草を探している時に魔物が出てきたらそれはそれでリスクと言える。
その手の山中に生える薬草採取の依頼は実際のところEランク以上向けだが、何と言ってもここは異世界。道に迷うリスクもあるし、できる限り安全マージンを取っていきたい。
まぁ、現実的には危険の少なそうな街の周辺を散策しながら薬草を探すというのが現実的かな、と頭の中で一人語りをしていると不意に声を掛けられた。
「おたく、仕事探してんの?」
40代半ばほどの背の高い男がそこにいた。
「あぁ。実は俺はノービスで、依頼を受けるのはこれが初めてだから、どうしたものかと見ていたところなんだ」
ついうっかりして、余計な個人情報を出してしまった。
「ははっ! それは初々しいな。それじゃ、この依頼なんかいいんじゃないか!?」
男は豪快に声を出した。
男が指をさしたのは、ギルドが直接取り仕切る常設依頼の一角だった。
「これだ、コレっ!!」
男は無造作にその中の一枚を拳で軽く叩いた。
下の方に貼られていた目立たないその張り紙には、『限定常設依頼 遺跡発掘調査』とある。
おっ、これはもしかすると、もしかするかもだ。
しかし限定とは何ぞや。
そのまま解説が始まる。
「これはな、ギルドが取り仕切っている依頼なんだが、何しろ受けるには条件がきわめて厳しい。だが、お前さんなら問題ない」
一体なんのこっちゃ。俺はただのFランク冒険者。これが初めての依頼受注だぞ。
「一言でいえば遺跡の発掘調査の手伝いなんだが……。まぁ、もちっと説明が必要か。知っての通り、発掘で見つかる遺物はきわめてレアで貴重なお宝なんだが、貴族やギルドの重鎮が汗を流して作業するのは効率が悪いだろ?」
ごもっともなので頷くしかない。
「ただ、まぁ、あれだ。出てきた遺物は厳重に管理しなければならんし、あまり言いたくはないが盗む奴がいては困る。それに万が一、ランクの高い冒険者が反旗を翻して遺物を奪取、なんてことはもってのほかだ。あと、遺跡の場所や発掘の詳細についてもなるべく秘密にしておきたいだろ。例えば盗賊団が現れて強奪というのもギルドにとってはあってはならないことだ」
男が話を続ける。
「つまり、なんだ、この依頼はE、Fランクの冒険者のみが受注可能という条件付きなんだな。しかも一人一回しか参加資格がない。初めての依頼にもってこいだ。しかも遺跡発掘は雨の少ない今の時期しかないから、お前さんはラッキーだったな。言っておくが、これを受けない手は無いぞ。何しろ1日やって1万クランだ。こんな割のいい仕事はいくらでもやりたいが、生涯を通じてたった一日しかできないから、これはご祝儀のようなもんだな」
なにっ。1万クラン!?
いや、それよりも、発掘されたばかりの貴重な遺物をその場で見れることの方が重要だろう。何しろ俺は文章や魔法陣を見るだけで魔法やスキルが習得できる。それこそ時間が取られる解読はおろか読解など余計なことは一切しなくていい。チラッと目にする機会さえあれば、それで十分という圧倒的なアドバンテージがあるのだから。
俺は即座にこの依頼を受けることに決めた。
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