128話. 特別な夕食会を無難に乗り切りたい
ブロドリオは弟のしでかした不始末の落とし前をきちんとつけてくれた。
想定をはるかに超える大成果で帰還した俺はまさしく気分上々。だってそうだろう。スキルは手に入り、おまけに魔族の魔石まで頂いてしまった。ざっとだが、貴族の秘蔵コレクションを見ることも叶い、大満足の一言に尽きる。これ以上は望むべくもない。
だが、そんな俺を待ち構えていたのは、すこぶる機嫌が悪いアンラだった。
「遅いっ! こんな時間まで一体なにをしていたのかしら!? 待ちくたびれたわよ」
う~む。これは、これは。
うっかりしていた。成果に気を取られてすっかりアンラのことを失念していた。見るからに、たいそうお怒りになられているご様子。
「あぁ、待たせて悪かった。あまりにもブロドリオ様のコレクションが凄くてな。ちょっと見どころが多かったんだ。それに場所が遠くて時間がそれなりにかかってしまった」
「ふんっ! 下手な言い訳なんか聞きたくないわねッ!!」
あー、これはアレだ。めちゃくちゃ怒っている。
「本当にすまない。これで勘弁してくれ!」
そう言って取り出したのは、ブロドリオがお土産に渡してくれた特製の菓子折りだ。これはブロドリオが気を利かせてアンラ、厳密にはフルストファー家に宛てたものだが……。
むろん、これはオベロンとの一件での謝罪の品とは別物だ。
「ふ、ふん! サイにしては少しばかり気が利くじゃないの!」
よかった。
ツンが少しデレに変わった。
さて、ちょうど彼女の機嫌がよくなった(?)ところで、ブロドリオがやって来た。
「今日はもう遅くなってしまった。よかったら一緒に夕食でもいかがかな?」
ほほう。夕食、つまりは晩餐会だな。
アンラが口を開く。
「それは大変ありがたい申し出ですが、私共がご一緒しても本当によろしいのでしょうか?」
「それはもちろん。歓迎するよ」
それを聞いて、アンラが小声でささやく。
「で、アンタはどうなのよ?」
「俺は賛成だ。せっかくの機会だしな」
別に『タダ飯が食えてラッキー!』というような低次元の話ではない。
ここ数週間で “下級貴族” の生活を味わった俺だが、ここにきて本物の貴族の食事がどういったものなのか興味があるのだ。一応、先ほどの立食パーティーでその片鱗は味わったが、あれはあくまでも簡易的な食事。
「それでは是非ともご一緒させてください」
ということで、急遽、ブロドリオの屋敷で夕食を共にすることになった。
しかしこれは予想外も予想外。
正直な気持ちを暴露する。
貴族の食事を頂けるまたとない機会が巡ってきたのは良いとして、問題は食事そのものだ。はっきり言えば、とても困った。
まぁ、“貴族” との食事はアンラの家で散々体験している。だが、今回は完全にアウェイだ。しかも一応はフルストファー家の代表で来ているので、下手な礼儀作法をしてしまうとアンラのご実家にまで傷が付いてしまう。しかもマズいことに、相手は本物の上流階級の貴族。
どうしよう。
どうやってこの新たな難局を乗り切ればいいのだろうか。
そうこうしているうちに、ついに晩餐会の会場に案内されてしまった。もうごまかせそうなタイミングを逃している。
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