127話. 魔族の魔石、だと!?
こうして遺物の複製品が入っていた引き出しはゆっくりと元に戻され、鍵が掛けられた。
それにしても、こうやって遺物やレプリカを保管するのか。何というか勉強になったな。普段こんな様子を平民が見る機会はまず無いだろうし、色々とラッキーだった。
さて、これで見学は終わりかと思ったまさにその時、俺の目は机の上の置かれている小さく薄い木箱に釘付けになった。
こ、これは!?
その箱の中には魔石が十数個ほど入っている。ぱっと見ただけで違和感を覚えるほどの変な魔石だ。少なくとも俺は見たことがない。カディナで魔石を扱っている店でも似たようなものは置いていなかった。つまり全てが謎に包まれた魔石だ。
うん……?
「この魔石は変わっているな。これは普通の魔物の魔石ではないな」
思った通りの感想を口にしてみた。それは確かなことで、今までに見たことのない形をしている。まるでブドウの房のように表面がゴツゴツしている。一体何なんだろう、この魔石は? 少なくとも魔石の主は普通ではないだろう。
「ふむ。それに目を付けるとはなかなかだね。それらは『魔族の魔石』だよ。君も名前くらいは聞いたことがあるだろう」
「えっ!? これが魔族の魔石、なのか。本物……。すごいな。こんな貴重なものが無造作に置かれているとはな」
「ははっ。実はフランボワーズ家にはそれなりの数の魔族の魔石が保管されていてね。いずれもかなり昔のアンティークなのだが、私にとってはそれほど貴重なものではないんだよ」
「ほう、それはすごいな。さすがは個人で研究所を持っているだけあるな。貴重なものを見せてもらった」
「そうだ! 良かったら1個あげようか? せっかくここに来た記念だ」
「ええっ!? 本当なら大変嬉しいのだが」
「もちろん。どれでも好きなものを持っていくといい」
「それはありがたいな。それではこれを貰っていくとするか」
選んだ魔石を大事にしまい込む。
う~む。これは大収穫だ。
スキルだけでなく、まさかの魔族の魔石だと!?
こうして俺はひょんなことから魔族の魔石を手に入れてしまった。これは思わぬ成果だった。完全な想定外の出来事で、まだ興奮が冷めやらない。
「そう言えば、魔族は既に絶滅してしまった種族なんだよな?」
「その質問にはいかんともし難いな。残念ながら、いくらサイ君の頼みでもそれに答えることはできない。申し訳ないが了承してほしい」
「いや、こちらこそ無理を言ってすまなかった」
「これは単なる独り言なのだが……。おそらく近い将来、君はその答えを知ることになるだろう」
う~む。何やら意味深な発言だ。
とはいえ、俺はその含意を何となく理解している。何しろサルキアで魔族が生きていることを知ってしまったからな。おそらく、何かしら『良からぬ事が起こる』とでも言わんばかりの口ぶりだ。これは一波乱も二波乱も起こる予感がするぞ。
というか、質問に答えられない時点で答えは決まっているのだが……。
それはさておく、こうしてブロドリオの研究所の見学会は無事に幕を閉じた。
今日は決闘あり、ダンスありと激動の一日だったが、蓋を開けてみれば大満足の成果で幕を下ろした。めでたし、めでたし。
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