124話. いよいよ秘蔵コレクションが目の前に!
ついにブロドリオの秘蔵コレクションが眠っているという研究所2階に到着した。
いよいよ見学が始まる。先ほどまでのやり取りは前座に過ぎない。本当の本当にこれが本番だ。
ゆっくりと目的の部屋へと歩みを進めていると、唐突にブロドリオが話しかけてくる。
「確かサイ君がとりわけ興味を持っているのは、『スキルを習得』できる遺物だったはずだね?」
「あぁ。出来ればそれを見せて欲しいのだが……」
ふとブロドリオが歩みを止める。
顔つきが変わった。
「今回は事情が事情だから、その約束は叶えよう。何しろ我が弟がとんだ恥をさらしてくれたのだからね。その罪はこの私がきっちり精算しなければならない」
さらに言葉を続ける。
「ただし、譲れない条件がある。申し訳ないが、これだけは納得してもらいたい」
「ほう。一体どんな条件なのか気になるな」
「簡単なことだ。言うまでもないが、遺物に直接手を触れたりするのは禁止する。極めて重要な宝だからそれは理解できるだろう。そして、それよりも重要なのだが、我々が持っている『翻訳文』はお見せできない。それは勘弁して欲しい」
あぁ、そういうことね。
納得すると同時に、ほっと胸をなでおろした。
これはどういうことかと言うと、話は単純。
そもそもの前提の話として、遺物は直接見ただけではスキルや魔法を習得できないからだ。翻訳文を読んで内容を理解しながら、遺物を直接見るというのがスキル習得の条件となっている。
今回ブロドリオが提示した条件を意訳すればこうだ。
『コレクションは見せる。ただし、スキルの習得は認めない』
まぁ、これは当然だろう。
俺がブロドリオの立場でもそうするはず。
きわめて妥当で納得できる条件そのもの。
さすがに舞踏会にたまたま来たような平民風情に易々とスキルを与えるほどお人よしではないということだ。仮に相手が貴族であろうと見せるかどうかは怪しいが……。
ただし、この条件、言わずもがな俺は数少ない例外だ。厳密には俺にとっては意味のない条件になってしまう。なぜなら翻訳に頼らずともスキルや魔法を獲得できるからだ。
したがって、この条件は実際のところ、『有って無いような条件』に他ならないのだ。ブロドリオ、残念だったな!
当然、俺は即座にこの条件を飲んだ。
さて、いよいよ中核となるコレクションにご対面だ。
幾重もの扉を解錠してようやく部屋の中へと入る。
自然と胸が高鳴り、心臓の鼓動が大きくなる。
そりゃそうだ。
この瞬間のために大変な苦労をしてきたのだから。
下の階とは異なり、この部屋は物が少なく、一見すると本当にコレクションがあるのかよく分からないほど。中心部にある大きなテーブルが存在感を放つが、上には何も置かれていない。
だが、異質なのは壁際に置かれた巨大なタンスのような物体。高さは自分の胸元といったところか。
そうか、これが金庫なのだな!
さっそくブロドリオが大きな鍵をその金庫に差し込み解錠する。
『ゴクリッ……』
思わずツバを飲み込む。
ガチャッ!
ついに重そうな扉が開いた。
いよいよ最重要な遺物が目の前に……!
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