121話. 研究所で『コレクション』を見学しよう
挨拶周りは何とかなった。
想定外の決闘も無事に勝利で終了。
さすがに相手のメンツを潰してしまったのではないかと思いきや、領主ブロドリオの立ち回りでこれも回避。むしろブロドリオのメンツを潰した張本人ということで、弟のオベロンは謹慎処分が言い渡された。それに対して俺は無罪放免となった。
本番のダンスも完璧だ。
それにしても今日は色々とあり過ぎた。
……だが、実はある意味で『本番』となるイベントが残っている。
そう、残すはいよいよブロドリオご自慢のコレクションの見学会だ。
これは俺的には最大級に重要な案件で、何が何でも成功を収めたいところ。
もちろん、俺自身が持つスキルを増やすという目標を達成するためには外せない。このためにわざわざブロドリオの屋敷まで来たのだ。そのためにアンラに頼み込み、社交ダンスを死ぬほど練習し、ついにこの頂まで上り詰めた。
だが、スキルを習得できなければ、貴族の生活を体験できたという経験だけで終わってしまう。
執事のクリスに連れられて休憩室で休んでいると、ついにブロドリオが部屋に入ってきた。ちなみにコレクションの見学を許されているのはあくまでも俺一人なので、彼女はしばらくお留守番だ。とはいえアンラはまだ挨拶周りをしているので、むしろお互い好都合だった。
「ごめんごめん。しばらく待たせてしまった。主催者としてやらなければならないことが沢山あってね……。それもちょうど一段落ついた所だから、サイ君のお相手をしなければと思ってね……」
開口一番、ブロドリオが謝罪を織り交ぜながら話しかけてきた。先ほどの決闘で弟のオベロンが取ったふてぶてしい態度とは正反対の物腰の柔らかさ。うん、やはりこの男は信用できそうだ。
「それはありがたい。舞踏会で忙しいところすまないな」
「いやいや、こちらこそとんだ失態でお恥ずかしい。見苦しいところをお見せしてしまった。出来れば、我が弟のオベロンのことは多めに見てくれると助かるな。後で厳しい処分を言い渡すから、それで勘弁して欲しい」
「むろん俺としてはそれで問題ない。こうして頼み事も聞いてもらっているしな」
さて、そろそろ本題のコレクションの方に話題を振る頃合いだ。そう思い、さり気なく話をそちらに誘導する。
「そうだった。コレクション、それも遺物のコレクションね。えーと、まず話しておかなければならないことがあってね」
「何かマズいことでもあったりするのだろうか?」
「いや、決してそういうことでは無いのだが……。単刀直入に言おう。私のコレクションはこの屋敷には置いてないのだ」
何!? おっと、これは予想外の展開だ。
「あー、すると、もしかして、どこか遠い場所に置いてある訳か」
「おそらくサイ君が思っているよりかは近い場所にある。とはいえ、秘密の場所なので詳しい場所や方角などについては一切教えることができないのだ」
「となると、俺がコレクションを見るにはどうしたらいいのだろうか?」
「それなんだが、こういう時のために特別仕様の馬車に乗ってもらおうと考えている。窓が無く、外の様子が分からないようになっている。せっかくの旅なのに景色を台無しにしてしまうので、その点は申し訳ない」
「いや、それ位はどうってことはない」
「あともう一点だけ事前に謝らなければならないことがある。言いにくいのだが、馬車そのものだけでなく、馬車の通る道についても最短ルートではない道を選ぶことを許してほしい。言うまでもなく、研究所の位置を伏せるために回りくどいことをしてしまうが……」
「まぁ、それも予想の範囲内だ。俺は問題ない」
「了解してくれて助かるよ。それでは早速、出かけるとしようか」
こうして我々の一行は馬車に乗り込んで、ブロドリオの所有するコレクションがあるという研究所へと向かうことになった。
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