表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/196

104話. えっ、異世界でアイスクリームを!? 出来らぁ!!

 

 次なる目標はS級冒険者のブロドリオが持っているスキルの習得だ。

 昨日そう決めた。


 とは言うものの、だからといって直ちにブロドリオと接触する訳にはいかない。

 何しろ俺は今、モーレツに疲れているからだ。


 これは事実。


 それこそ俺は夜を徹して500キロ以上も離れているサルキアから移動しているからだ。そして、ここサンローゼに着いたと思いきやすぐに超巨大の魔物『インペラトール・トータス』との一戦ときた。疲れていない訳がない。


 そんな訳で、翌朝はかなり遅くに起床したのであった。



 ◇


「やはり『癒し』が必要だ」


 そう思い立った俺が向かったのは例の近所にある喫茶店『ステラ』。


 いつものようにポラル茶を飲みながらゆっくりしていると、この店を切り盛りしているローラがやってきた。


「サイさん。いつも来てくれてありがとうね」


「いや、こちらこそありがたい。いつも快適な時間を過ごせているからな」


「それは良かった。そう言ってもらえると嬉しいよ。ところでサイさんに意見を聞きたいと思ってね」


「ほう。内容にもよるが、別に構わないぞ」


「実は新しくこの店の名物になるような料理を作りたくてね」


「なるほど、名物か。それは面白そうだな。具体的にはどういう料理がいいんだ?」


「そうだね。やっぱり店の特徴に合わせるなら『甘味』だろうさ。それも今のメニューにまったく無いような新しいものさね」


 ふむ。


 甘味の名物、それも店の看板メニューになるような一品か……。

 言うのは容易いが、これはなかなか難しい案件だ。


「そうだな。例えば、『アイスクリーム』なんかはどうだろうか?」


「アイス…… なんだね、そりゃ?」


 ああ、そうか。


 もしかしなくても、この世界にはアイスクリームが無いのか。でもそれはそれで不思議だ。氷結魔法があるから氷は手に入るのに。


「えっと…… 一言で言えば凍らせた甘い菓子だな。氷のようだが、氷じゃない。そんな独特な食感と喉ごしが売りの食べ物だ。冷たくて美味しいぞ。ここの気候にぴったりだと思う」


「そのアイス…… クリームとやらは、どうやって作るのか教えてくれたりするのかね……?」


「もちろん構わないぞ。と言っても俺自身は作ったことがないから、大体の方向性しか示せないが……」


「それでも十分ありがたい言葉さね。嬉しいよ」


「じゃあ、まずは作り方だな。えっと、原料としてはおそらく『ココヤチの実のミルク』、『サチョードリの卵』、『砂糖』、そして『乾燥させたバニランの果実』があればおそらく何とかなると思うのだが……」


 それを聞いてガックシうなだれるローラ。


「残念だが、それは無理さね」


「そうか。参考までに、どの食材を手に入れるのが難しいんだ?」


「いや、問題はそこじゃないのさ。さっきサイさんは『凍らせたお菓子』と言ったね。問題はそこさね。まず、『ココヤチの実のミルク』は氷結魔法で凍らないのさ」


 おおっと。それは盲点だった。


 ココヤチとは『椰子の実』のような植物のことで、大きな実の中には濃厚なミルクが詰まっている。


 この世界では家畜を放牧して搾乳するという発想が無いので、ミルクと言えばおおむね植物由来だ。


 そもそも、それなりに大きな動物と言えば魔物しかいない。しかし、魔物は突如として忽然と現れる謎の生命体で、子供を産まず、当然、授乳もしないようだ。


 いずれにせよ、家畜から乳を継続的に得るためには、妊娠・出産のサイクルを繰り返すように飼い続けなければならない。だが、そのような面倒なプロセスを好む奇特な畜産農家など、この世界にはいないだろう。


 それはともかく、会話を続ける。


「だが、氷はあるだろう」


「そりゃ、もちろん」


「あと塩も……。それで問題ないだろう」


「そりゃ、どういう意味さね? 良かったら教えてくれるかね?」


「実は、山盛りの氷に塩を少しだけ混ぜてかき混ぜるとかなり冷えるんだ。それもキンキンにね」


「ありゃまあ、氷に塩ねぇ。そんなこと試したことなんて無かったわ!」


「それじゃあ、近いうちに一緒にアイスクリームを作ってみるとしよう」


 こうして、突如として異世界でアイスクリームを再現するという高難易度クエストがここに開始された。果たして無事に完成させることはできるのか?



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


もし、ほんのわずかでも面白い、続きが気になると思って頂けましたら、ブックマークや評価、あるいは感想などのフィードバックをしてくださると飛んで喜びます。このページの下の方にある『☆☆☆☆☆』から評価を入れられます。


これからもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ