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102話. 空間魔法は【最強】の魔法

 

 S級冒険者ブロドリオが初手で放った電撃魔法は強烈だった。


 それこそ、他の冒険者など足元にも及ばない高次元の魔法を繰り出したのだ。そもそも俺は電撃魔法を習得していない訳だから、そういう意味でも素直に尊敬できる。


 だが、それはあくまでも『人間のレベルでは強い』というだけである。人智を超えたレベルでは決してない。


 何を隠そう、相手は体長100メートルを超えるかという超巨体。それに加えて全身が硬い甲羅という装甲に覆われ、皮膚も分厚い。


 となれば、ちょっとやそっとの攻撃で重傷を負わせる、ましてや倒すことなど不可能だ。


 実際のところ、俺はそう考えていた。


 まぁ、もう少し人間の可能性を信じろと言われてしまうかもしれない。

 ただ、これは俺の直感と経験でそう思えたことだ。

 相変わらず、ひねくれた性格をしている。


 だからこそ、S級冒険者から今にも繰り出されそうな2発目の攻撃についても実はまったく信用していなかった。


 そこで俺がブロドリオに代わって奴を『処分』する方法を考えていたのだ。



 それはとっさの思い付きだった。


 サルキアから壁を通り抜けて脱出する際に考案した空間魔法の応用【カット・アンド・ペースト】。これを使えばおそらく倒せるのでは、と思い付いた。


 ただ、この思い付きだけでは奴を倒せない。

 なぜなら欠けている決定的な情報があるからだ。


 それは奴の具体的な『魔石の位置』。


 この世界に来てから魔法やスキル、そして魔物について徐々に理解が進んできた。そこで学んだことの一つに挙げられるのが、魔石の重要性だ。


 魔物の心臓部にある魔石は魔力の供給と制御、そして生命機構の維持を担っている。すなわちそれは、心臓と同じく急所と考えるのが自然だろう。ただ、冒険者がわざわざ魔石を狙って攻撃しないのは、魔石自体が硬く、破壊そのものが困難であるためだ。


 しかし、俺の空間魔法『カット・アンド・ペースト』が使えるとなれば話は変わってくる。


 話は単純。




 【魔石をそっくりそのまま本体から『カット』してしまえばよい】



 幸いにも魔石の大まかな位置はカタレナが教えてくれたから、とりあえずそれで条件はそろった。


 次の瞬間にはブロドリオの魔法が発動していたが、それはそれでちょうどよかった。何しろ俺はEランク冒険者の身であると同時に、この場で目立つことは何としてでも避けたかったからだ。


 幸いにも空間魔法を発動しても、放水魔法などとは違って表向きにはそれが見えない。ここはブロドリオの火焔魔法があたかも『インペラトール・トータス』を倒したというシナリオになるよう、彼の魔法に全力で乗っかろう。


 まぁ、自分の功績にならないのは釈然としなくもないが、何よりもまず街を守るのが優先だ。そして仮に俺が倒したことがバレてしまえば、後々面倒なことになるのは間違いない。ここは大人しく、裏方の大黒柱としての役割に徹しよう。


 さて、火焔魔法が効いている絶妙なタイミングを見計らい、俺は『ディメンション・カット』を発動した。カタレナから魔石の位置を『中心部』と教えてもらったが、その中心部とやらが示すエリアはかなり大きい。


 そこで仕方ないので、ひとまずインペラトール・トータスの体内を大き目の立方体でくり抜いた訳だ。一旦、魔力の供給が絶たれてしまえば、いかにインペラトール・トータスと言えどもひとたまりもない。


 その巨体は大きな音を立てて地面に崩れ落ち、そして沈黙した。


 ただし、それで終わりではない。


「ディメンション・レストア!」


 これで俺は先ほど『カット』した部位をそっくりそのまま復元した。


 なぜこんなことをするのか?


 答えは簡単だ。これだけの魔物の素材が後ほど調査も回収もされないなど考えられないからである。


 その調査で巨大な『魔石』が忽然と消えていた、というのではあまりにも問題が大きい。無用なトラブルや混乱はできれば避けたかったのだ。一度カットしてしまえば、レストアしても生き返ることはない。もし仮に生き返ったとしたら、再び切除してしまえば良いだけだ。もちろんその時は永久に。


 まぁ、欲を言えば、『ディメンション・カット』した部位をそのまま空間収納してしまえば、その魔石をそっくりそのまま自分の物にしてしまうことも可能だった。


 今回はギルドや魔族が大注目している案件だからそんな野暮なことはしない。


 そうした使い方はこれから考えて、存分に活かしていくとしよう。


 う~む。それにしても、やはりルノアールが言っていた通り、空間魔法は【最強の魔法】で間違いない。どうやら、この『カット・アンド・ペースト』はこれからの俺の戦い方の主戦力になりそうだ。



最後まで読んで下さり誠にありがとうございます!


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