101話. なるほど、これがSランク冒険者の実力か!
騎馬の一行が近づくにつれ、周囲の冒険者の群れはまるで海が割れるかのように騎馬隊の両脇に移動する。
と言っても彼らはまだ何もしていない。にもかかわらず、群衆を容易く移動させるほどの威圧感がある騎馬隊だ。うん。これは期待できそうだ。
「我が名はブロドリオ! Sランク冒険者にして、ここサンローゼの守護を仰せつかっている。今からこの厄災級の魔物『インペラトール・トータス』に天誅を下す!!」
おうおう。
なかなか威勢のいい言葉を吐くじゃないか。
やはり例のSランク冒険者だったか。
しかし手に持っているのは槍だろう。
それで距離があるインペラトール・トータスにどう戦いを挑むのだろうか。
お手並み拝見といこうじゃないか。
おっ、詠唱を開始したようだ。
ピカッ、ゴロゴロ。ドッシャーーン!!
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
急にブロドリオの槍が光りだしたと思ったら、光る電撃のようなものが伸長して、インペラトール・トータスの脚の付け根に直撃。周囲は強烈な閃光に包まれ、一面が黄色の世界に。あまりのスパークに視界が奪われるほどだった。
少し時間が経って視力が回復してから、ようやく状況が飲み込めた。そうか、さっきの魔法は電撃だ。よく見ると直撃した部位に穴が空き、血が噴き出ている。
スゲーーーーーーッ!!
これまで誰もまともなダメージを与えることができなかったというのに。
わずかワンヒットでこれか。
さすがだな。
これがS級冒険者の実力か。
ワォーーーン!!
インペラトール・トータスが鳴いた!
あっ、まずい。
今の一撃で巨大亀が暴れ始めてしまった。
左脚の動きこそ鈍くなったが、言わずもがな、カメには脚が4本もあるのだ。さすがに相手はこれくらいでは倒れてくれない。
「皆、詠唱が終わるまでのわずかな間だけでいい。頑張って全力で応戦してくれ!」
ブロドリオが叫ぶ。
うーむ。さすがに暴れまわるインペラトール・トータスを止めるというのはあまりにも無理筋だ。とはいえ、今の一撃で現場の士気は最高潮に達した。冒険者が残りの力を振り絞って総攻撃をかけているので、今は何とか持ちこたえている。とりあえず、あと数十秒は持つだろう。
さてと。果たして次にブロドリオが使う魔法はまたもや同じく電撃魔法だろうか。
確かに今の一発は強烈だった。
倒すのが不可能だと思われたインペラトール・トータス相手に明らかな傷を負わせたのだ。
見事としか言いようがない。
あの一撃で明らかな『格の違い』を周囲に見せつけた。
確かにこの実力であれば、あのような自信満々の言動にも納得できる。
だが、弱い。
まだ火力が圧倒的に足りていない。
相手は何物でもないあの『インペラトール・トータス』なのだ。
この程度の魔法では倒せない。
とは言うものの、俺の自信作『ジャイアント・ブルー・ファイアー・ボール』でもまるで歯が立たなかった相手だ。
【戦闘火焔魔法(超級)】でも倒せない相手なのか。
放水魔法は論外だ。
ならば空間魔法か……。
ん?
空間魔法!?
それだ。
「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだが、カメの魔物の魔石って、どこにあるんだ?」
そう隣にいるダルガー達に尋ねる。
「今このタイミングでそれを聞くのか! さすがはサイだな……。そうだな、アタシの経験ではちょうど中心部だったぞ」
ダルガーの代わりにカタレナが答えてくれた。
「なるほど、そうなのか。いや何、ちょっと気になってな。助かった」
よし、これで条件はすべて揃った。
もうすぐブロドリオの詠唱が終わる。その2射目の攻撃時が最初で最後のチャンスだ。その機会を今か今かと待ち構える。
バシューーー!!!
炎の柱だ。
ブロドリオが持っていた槍の先から炎の柱が現れ、それが伸びてインペラトール・トータスに届く。先ほど彼がえぐった傷をさらに広げるように炎が刺さる。そして、その火焔が徐々に広がり、脚全体を包み込む。これが戦闘火焔魔法の正しい使い方なのか!
オォーーン!! ウォーーン!!
たまらず、インペラトール・トータスも再び大きく暴れ始める。
今だ!
「ディメンション・カット!」
サルキアから脱出する際に思い付いた俺独自の空間魔法『カット・アンド・ペースト』をここで実践する。
次の瞬間、
ドドォーーン!
あの強靭なインペラトール・トータスがついに脚を着いて地面に鎮座する。首もだらんと垂れ下がっている。
そして、
「ディメンション・レストア!」
よしっ。狙い通りだ。勝ったぞ!!
だが、俺にはまだやる事が残っている。
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