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オクトパス

作者: 黒福雲母

 訳ありで、私は会社から長いお休みを頂いた。1週間ぐらいだ。まあ、1人で誰にも合わず過ごすのは厳しい。

 そうだ、この機会にゆっくりしよう!

 とうことで、実家に帰った。

 

実家に帰ったついでに祖父母に会いに行った。新しい高速道路や道路が出来たおかげで、家から1時間半近くで着くようになった。前まで3時間近くかかった旅行気分は違うものになってしまった。もはやドライブ気分で祖父母の家に着くとなると、嬉しいものだ。なんなら少し前まで、30分船に乗って祖父母の家に行ってたのでそれなりに時間は掛かったのだから。

 

 無事に祖父母に会った。相変わらず元気そうだ。

 帰り道、誰もが頼んでもいないのに

「『さんさん市場』が出来たから連れて行ってやる」と言い出した。

 連れて行くというより、自分が行きたいのだ。

 私はその「さんさん市場」はどこにあるか分からなかった。そして、その「さんさん市場」とは一体なんなのだ。

 父の運転で、母と私の3人で向かったのだ。

綺麗な木材で建てられた建物は、どこかお洒落でありながら、まだ町に溶け込んでいないように見えた。土曜日もあって、多くの人で溢れていた。地元ならではの野菜やお魚、牡蠣、蛸と美味しそうな食べ物が沢山売られていた。


 父もルンルン気分で蛸を買うか買わまないか迷っていた。

 結局、いろいろなお店を見ているうちに蛸を買うのを忘れてしまった。

色々目移りしてしまうほど、楽しかったということだ。


 母は、

「芸能人がテレビでここくるから、父のお気に入りなんだ」

と話していた。そのテレビの内容は、地元ならではの場所を紹介するという番組だ。その芸能人さんは、大物芸人で、都内で紹介されない地元を紹介するため地元人からも人気がある。私も帰省したら父と一緒に見る。


その番組を見ていた時よく「オクトパス」がでてくる。私今まで、現物を見たことがなかった。

 オクトパスは、赤い蛸の置き物である。「置くとパスする』」いう意味合いから、今では受験生への贈り物として密かに人気を集めている。


 テレビで見るより、頭がまん丸としていて、可愛いとらしいタコ!だ。

 まあ、私にとって、受験というものはもう終わってしまったし、妹も受験という壁は乗り越えてしまった。だが、こいつは、可愛いし実家に1つあってもいいなと思って知恵を出した。

 要するに欲しいのだ。

だが、私は自分の財布から現金を出したくはなかった。

長女は素直になれない。人に頼めない。

単純に言えば欲しいのだ。このタコが。


そして、父にこう尋ねた。

「妹のお土産にどうかな?来年就活じゃん。」


そう、妹は、来年から就活生になるのだ。就活は、色々あって大変だ。さりげなく玄関にオクトパスを置ける。私はさりげなく、父に聞いた。


「そうだね、就活いいところ行けばいいね。買ってあげようか。」

そう、こういうね言葉を私は待っていた。

 妹は、今ニートのようなぐうたら大学生だ。しまいには、毎日お昼すぎまで寝てる。私はなんだかんだ妹の将来が心配なのだ。


 だが、自分のお財布から現金は出したくない。




 父は一瞬おでこにシワを寄せた。



「あいつをパスするところなんてないよ。」



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