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6.お姉さんが大好きです。

 僕たちはお姉さんが大好きです。

 お姉さんは幼稚園でいつも僕らと遊んでくれます。


「はぁーい 今日もお姉さんと一緒に遊びましょーねー みんなぁ返事はぁー?」


 はぁーい。と僕らはみんな揃って返事をします。ともくんだけが「うっせぇーよ婚期逃したおばさんが」と言いました。


「みんなちょーっとだけ待っててね いまオバサンって言ったやつだーれだ?」


 お姉さんはいつも笑顔です。だけど笑顔にたくさん“ばりえーしょん”があります。


「大人しく手を挙げたら『お姉さん』、まだ許してあげるよぉ?」


 お姉さんは取り繕うようににっこりしました。思わずみんなの視線が薄くですがともくんに移ります。


「うーん……お姉さん悲しいな じゃあトモくん、みんなが帰ったあとちょーっとだけ残ってね」



 さて、いまからお遊戯の時間です。


「お外で遊んでもいいですよぉー」とお姉さんが優しい声でいいます。


「あら ゆいちゃんおままごとかな?

 どうして男の子が二人いるの?」


 ちなみにこのうち一人は僕です。ゆいちゃんは「夫と不倫相手です」と上目遣いにお姉さんに言いました。そこには少しだけ勝ち誇るような響きがある気がします。ゆいちゃんはかわいいです。


「ゆいちゃんあたしに似てるから、そんなドロドロなの20年もしたら経験するんだしいまは清純な恋愛に夢見てなさい☆」


「先生には似たくないです」


 ゆいちゃんはピシャリと言いました。


「お前ちょっと来…あ 園長先生ですねぇ みんなこんにちはしましょーね~」


「「こんにちは~」」


 園長先生はみんなとお姉さんを見て笑顔でこちらに歩いて来ました。


「はーい よく出来ました。……命拾いしたな」


 お姉さんはぼそりと言いました。


「かけるくんはお絵描きかなぁ? 何を書いてるかな? お友達かなぁ?」


「お姉さんです」


 かけるくんの絵には顔に黒い粒々があります。


「先生はそんなにニキビ多くないですよぉ」


 ……もう一度言います。お姉さんの笑顔には“ばりえーしょん”があります。


「え、でも」


 かけるくんはお姉さんの顔を見て“ひっ”と短い悲鳴をあげました。


「かけるくんもトモくんと一緒に今日ちょっ~とだけ残ってね?」


 かけるくんの肩がぴくりと震えます。みんなは見てみぬ振りです。


「あら チャイムなっちゃったわね みんなぁ~集まってー 今日はここまで また明日ね みんなさようならぁ~」


 みんなは、かけるくんもともくんも、荷物を持って部屋を出ようとしました。


「……おい 知行、駆。テメェら何どさくさに紛れて帰ろうとしてんだ。

 居残りつったろ便所掃除だよ、便・所・掃・除 ほら、わかったらさっさとやれ」


 ……僕たちはお姉さんが大好きです。


 ……大好きだもん。。。


 ……ほんとだもん。。。



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