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TSお姉様、TS女の子で遊ぶはずが反撃されて赤面プルプルする話  作者: きつね雨
第二章〜王都アーレ=ツェイベルン〜
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TSお姉様、旅に出る

 





「ターニャちゃん、護衛の人ってコイツ?」


「はい。実力は十分過ぎるでしょうし、それでいながら依頼料は格安で受けて貰いました。そろそろ王都に帰らないと駄目で、馬車等も準備されていたそうです。私達からの持ち出しは殆ど有りませんから、本当にありがたいですね」


 俺には旅の準備がほぼ無いので、ターニャちゃんの買い物が殆どだった。それすらもマリシュカさんとその伝手で揃い、手間も掛かってない。馬車の準備も早くから問題なしと聞いていて、理由を聞いてもはぐらかされていたのだ。


「ギルド長からも安心して良いって聞いてたから、気にして無かったけど……そう言う事だったのね。まあ、嫌って訳じゃないけどさ……」


 護衛の選定にも関わらせて貰えず、当日のお楽しみと言われていたが……成る程ね。護衛なぞ俺一人でも余裕だからと、深く考えて無かったんだよな……当然女性だと思ってたのになぁ。


「私の知り合いなんて少ないですから、察しがついてると思ってました」


「うーん……ちょっと予想外かな。そもそも二人って、そんなに仲良しだった?」


 横を見るとターニャちゃんは何時もと違い、如何にも旅人の格好だぜ!って服装をしている。身体の殆どは濃い茶色のマントに包まれていて、僅かに見える足元もゴツい革靴が見える。勿論スカートなど持っての他で、濃い緑のパンツだ。


 全体的に迷彩色でないだけで、レンジャーの様な服装と言っていい。腰にも二つ可愛いポーチが装備されている筈だ。因みに王都に着いたら着る服は用意してるよ、勿論。


「何度か街で見掛けてました。人探しをしていたそうで、私から声を掛けたら快諾頂いたんです。誰を探していたか、言わなくても分かると思いますが」


「……まあ、分かるけど……」


「勿論、お姉様に変な事をしない様にと言ってあります。条件の一つに入れてますから……お姉様に対する魔素の操作は厳禁ですね、彼は」


 まあ、不意を打たれなければ大丈夫だけどね。


 最近知ったんだけど、ターニャちゃんて家計に煩いのだ。煩いと言っても、俺には何も言わないよ? ただ、自分に対しては凄く律してるみたいだ。本当に偉いよなぁ。噂では市場や商店で既に知られた存在で、食材の目利きや値付けなどに相当の拘りがあるらしい。


 マリシュカに「おバカなアンタにしっかり者の妹分が出来て一安心だね」と褒められた程だ。


 ……俺はバカにされてるけど。


「まあ、知らない人よりは良いかな。昔は良く一緒に行動してたし、頼りになるのは間違いないからね」


 実はどんな女の人が来るか、ワクワクしてたのは内緒だ。昔憧れてた噂の合コンとやらを経験するつもりだったのだが。今まで誰かと組んだ事無いのかだって? 時に普通の言葉が人を傷つける事もあるって知らないかい?


「お師匠様、今日も素敵な装備ですね。マントは僕が預かりましょうか?」


 ブロンドの髪は相変わらず輝いていて、まん丸お目めも紅くて綺麗だ。その筋の人が見たら涎を垂らしそうな美少年は、名前をクロエリウスと言う。まあ、愛称はクロだけど。


「何で?」


「マントに隠れたら、お師匠様をじっくりと観察出来ませんから。日々訓練だと教わりましたし、実益も兼ねてます。身体の動きも参考にしないといけません、ええ」


「……ターニャちゃん、魔素云々より目が怖いんだけど?」


「直接的な害はありませんし、目を瞑れとも言えないです。まあ、此処まで欲望に忠実だとは知りませんでしたけど」


 今もジーッと目線を隠す事もしないクロ。男の欲望は理解してるが、変態はダメだ。マントの前を閉じ、自慢の身体を隠す。


 がっくりしたクロは、荷物を荷台に積み始めた。


 俺の装備は基本的に魔力銀で編まれた服……に見える。その特性上身体に合わせて作られており、ボディラインがクッキリと出るのだ。ターニャちゃんに見てもらいたくて、可愛いの選んで来たのが仇になっちゃったよ……


「でも確かに素敵な服?装備ですよね。パッと見はパルメさんの服みたいに見えます。7部丈のパンツなんて、殆どそのままですよ? 上半身も薄手のセーターみたいですし」


 それも魔力銀なんですか?と投げ掛けるターニャちゃんは、俺の閉じたマントをもう一度開く。何故か、ちょっと恥ずかしい。


「う、うん。魔力を通さなければ、普通の服みたいに快適なんだよ? 通気性も良いから、ツェツエみたいな気候には合うかな」


「へえー……あの、触ってみても良いですか?」


「えっ? あ、うん、良いけど」


 人の手でマントを開かれるって、意外と恥ずかしいな……オマケに手まで突っ込まれると、変な気分だよ……


「本当に金属とは思えないですね。私でも破いたり出来そうな気がします。このセーターなんて少しモフモフですよ?」


「うひゃっ……ターニャちゃん、脇腹はやめて! くすぐったいから……」


「あっ、すいません。何時もの癖で」


 何時もの、とは魔力強化解除訓練の事かな? アレはイケナイ……イケナイぞ、うん。


 ふと見ると、クロがチラ見してるのが分かりゲンナリした。まあ、気持ちは理解するけどさ!


「変な事を聞くんですが、下着も魔力銀なんですか?」


 ターニャちゃんは小声になり、上目遣いで聞いてきた。可愛い。


「そうよ。ただ作りは違うから、同じとは言えないかな。下着と言えない様なものだし、人には見せられないよ……かなり、面積が小さいからね……」


 少しだけ赤くなったターニャちゃん、可愛いよ?


「そ、そうなんですか……すいません、変な事を聞いて」


「ふふっ……ターニャちゃんなら何でも聞いていいからね? なんなら今度見せてあげようか?」


 実際は恥ずかしくて無理だけど!!


「い、いえ。大丈夫です」


 むふふ、今日は調子いいぞ。最近ターニャちゃんは強敵になったから、反撃を注意しないと駄目なのだ!


「お師匠様、準備が出来ました。出発しますか?」


「ありがとう、クロ。その前にっと……ターニャちゃん、私の魔法を受け入れてくれる?」


「はい、勿論です」


 無意識では俺の魔法を弾けないだろうが、念の為だ。魔力無効は凄く珍しい才能(タレント)だから一応ね。ターニャちゃんの小さな手を握り、魔力を行使する。勿論属性魔法じゃなく汎用魔法だ。


「暖かい……お姉様、これは?」


 魔素も見ない様にしていたんだろう、ターニャちゃんはゆっくりと目を開いた。


「簡単に言うと、痛み止めと回復かな? 実際はもっと複雑だけどね」


「あの……私、怪我はしてませんが……」


「ふふ、そうね。でもターニャちゃんは馬車に乗るの初めてでしょ? 知らないと思うけど、馬車ってすっごく乗り心地悪いから……お尻とか体中が痛くなるの。それの防止にね」


「ターニャさん、因みにその魔法はお師匠様が開発した魔法で……今や全世界で利用されています。魔族すら例外ではないらしいですよ」


 まあ、実際には[魔狂い]に教えたら勝手に広がっただけだが。あのジジイはご丁寧に俺が開発したと吹聴したのだ。似た様な魔法はあったが、それを統合簡略化し行使し易くした。


「クロ、余計な事言わないの。こんなの大したことじゃないわ」


「ターニャさん、お師匠様の言う事を信じちゃ駄目ですよ? まあ、こんなので驚いてたらそれこそ大変ですが」


「クロ、もうやめなさい。行くわよ」


「あの……僕には?」


「貴方は我慢しなさい、修行よ」


 クロは2種類の属性魔法しか使えない。と言うか、それが普通だよね。生活魔法くらい使えるだろうけど、制限は多い筈。まあ、余り大変そうだったら治癒魔法かけてあげるかな?


「ええ……? そこをなんとか、お師匠様」


「こないだ変な事した罰よ。あんなの痴漢と一緒だし」


「お姉様、私からもお願いします。子供だし、可哀想ですよ」


 子供と言われてクロがムッとしたのが分かる。まあ見た目小学生だもんなぁ。


「……仕方ないわね。クロ、ターニャちゃんに感謝しなさいよ」


 言いながらも、クロの手を握って魔法を行使する。まあ、大した魔法じゃないし、負担でもない。こうして見ると可愛い子なんだけどなぁ、はぁ……


「久しぶりにお師匠様に触れました。やっぱり良い匂いです。この温かさ、愛ですね」


 お前、マジでキモいな!?


「……ターニャちゃん、クロの……バレない様に無効化してくれる? お願いだから」


「我慢して下さい。格安の護衛ですよ、格安」


 声を掛けたターニャちゃんも、流石に気持ち悪いのか可愛い眉がグニャリと歪んでいた。


 先が思いやられるなぁ……はぁ……











 アートリスはツェツエ第二の都市だけあって、かなり離れても未だ景色の一部のまま。まあ、第二と言っても貿易の中心で、他国からの玄関口でもあり、そのサイズはツェツエ最大だ。昔の名残りか城壁はあるけど、今は平和で使い途はない。遠くから見ると、都市の中心に向かって少しずつ盛り上がっていて壮観だ。


 街並みの色は雑多で建てられた時代も様々なのか、統一感は乏しいかな。まあ、気に入ってるけど。


 御者台にはクロが座り、馬を二頭操ってくれている。小学生らしき少年が馬車を操る姿はシュールだけど、手慣れた物で安心感抜群。まあ、この子はツェツエ唯一の勇者だからね。恵まれた身体能力を更に魔力強化した戦闘スタイルは、中々の完成度を誇る。昔は俺が師匠として、色々と教えた。


 昔は可愛かったなぁ……なんでこんな変態に育ったんだろ……?


 思わず御者台の方を見ると、丁度振り返って俺を見ていた。いや、前向けよ!?


「クロ、危ないよ。ちゃんと前を向いて」


「退屈なんですよ。お師匠様、久しぶりですし隣に来て話しませんか?」


 ふむ? まあ、いいけど。


「お姉様、行ってあげて下さい。私は景色を見るだけで楽しいですし、クロさん寂しそうですよ?」


「わかった。何かあったら直ぐに言ってね。乗り物酔いも心配だし」


「はい。ありがとうございます」


 ターニャちゃんって気遣いが出来る子だよなぁ。俺が中学生の時、こんなに立派だったわけ……ない!


 俺は荷台から御者台へのアーチをくぐり、クロの隣りに座った。少しだけ横にずれてくれたけど、そもそも狭いし殆どくっついた状態になる。


「狭いですか?」


「ううん、大丈夫よ。ふぅ、風が気持ちいいわね」


 座った時に風が通り、髪やマントを揺らした。纏めて無かった髪はフワリフワリと舞って、首や耳を撫でる。普段から魔力を通しているからか、特別な事をしなくてもバッチリな自慢の髪。


 少しの時間だけ目を閉じて、爽やかな風を全身で感じる。魔力銀の服も、今は普通と変わりなく空気を通してくれるのだ。魔力を通すと駄目だけどね。


「良い天気。旅日和だねー」


 目を開き、すぐ隣を見る。クロは同じく俺を見ていて、少しだけ赤くなってる。まあ、真っ直ぐな街道だし、広い道だから大丈夫だけどね。ただ目が合っても全く視線を逸らさないとコッチが恥ずかしいからね? 日本ではジッと目を合わせるって余りしないから、未だに慣れないんだ。


「クロ……余り見ないで、前を向きなさい」


「お師匠様、本当に綺麗ですね。何度も見てるはずなのに、目が離せなくなるんです」


 コレだよ……こっちの世界の人って、恥ずかしい事を平気で言葉にするんだよな。特にイケメンが!


「……ありがとう。分かったから、前向いて」


「お師匠様、顔が赤いですよ? 相変わらずですね、安心しました」


 くっ……だから、前見ろって!


「相変わらずって、なによ?」


「女性は恋をすると変わるって言いますから……アートリスでお師匠様が変わってしまわないか心配だったんです。その様子なら、大丈夫そうです」


「は、はあ!? 貴方、私を誰だと思ってるの? アートリスで私を知らない男なんていないんだから! 毎日、男達を千切っては投げ、千切っては投げ……何、笑ってるのよ……?」


 なんだよ、その余裕ある顔は!? 俺の事?図星!? んな訳ないしーー!


「いえ? モテモテなんですね!」


「そ、そうよ? だから、お子ちゃまは黙ってなさい」


「……プッ!」


 後ろから声が聞こえたぞ!


「……ターニャちゃん、何かな?」


「お姉様、余り無理をしない方が……恥ずかしい事じゃ無いと思いますよ?」


「無理なんてしてないもんね! 事実だし!」


「そうなんですか? 私はてっきり……いえ、なんでも」


「ターニャちゃん、何か誤解してるみたいだけど……私は男の事は何でも知ってるからね? 魔物なんかより詳しいんだから!」


 ある意味間違いないぞ! 前世で17年間も男だったんだからな。まあ、童貞だけど……女性とお付き合した事も無いけど! 妄想の中ではバッチリですから!


「ええ、そうですね。良く分かります。お姉様は間違いなくアレですから」


 アレってなにかな!?


「ターニャちゃん、一度しっかりと話をした方が良いみたいね……次の宿場町で……」


「お姉様、本当にいいんですね? 分かりました、()()()()()お話しましょうか」


 ……ま、またの機会にしようかな……


「……クロ、なにその顔は?」


「お師匠様、今またの機会にしようって思いましたね?」


「……さ、さあ! 宿場町はまだ先よ! 急ぎましょうか!」


 ふっ……まあ、今日は此処までにしてやるよ!


「お姉様……」


 ああ、風が気持ちいいなー!!






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