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TSお姉様、おもちゃを手に入れる

別作とは違いシリアスは薄め。投稿はバラバラになると思いますが、ゆっくりと書いていこうと思います。

 


「ね、落ち着こう? そんな縄なんてどうするのさ……」


「私は落ち着いています。ちょっと悪戯が過ぎたお姉様に御仕置きするだけですから」


「謝るから! ごめんって……」


「大丈夫ですよ? ちょっとだけ痛くしますけど」


「ひっ……仕方ない、撤退!! あ、あれ?」


「お姉様の魔力は無効化済みです。世界最強の冒険者も、今は只の女の子ですね」


「あわわわ……いつの間に才能(タレント)をそこまでっ!?」


「さあ、お姉様? ゆっくりとお話しをしましょうね」


「い、いやーーー!!」













「魔素溜まり、ですか?」


 冒険者ギルドの二階には会議室や資料室、そして今俺達がいるギルド長室がある。


 長い白髪と白髭、ビア樽を思わせる体型で俺を眺めつつ話すのはギルド長だ。名前はウラスロ=ハーベイ。昔は此のツェツエ王国の戦士長の一人だったらしいが、所謂天下りで第二の都市アートリスのギルド長となった。


 ちなみに現代日本人の知識を有する俺からは、ドワーフにしか見えない。一応人種らしいが。


「ああ、観測班が今朝発見した。まだ大きくなる可能性が高い。お前が開発した"魔素感知波"のお陰だな」


「そんな……皆の力ですよ。でもあの森ならトパーズやコランダムの冒険者でも対処出来ると思いますが……」


 御多分に漏れず冒険者ギルドには等級がある。


 全部で5等級あり、特例の超級を入れると6等級かな?


 ちなみに下から、


 [オーソクレーズ] 新人くん、ヒヨッコ達


 [クオーツ] 新人から卒業、まあ一応は冒険者かな


 [トパーズ] 中堅 一人前の冒険者 


 [コランダム] 一般的な冒険者の中では最も力がある  


 [ダイヤモンド] 上級冒険者 ほぼ超人扱い 人数は当然少ない


 [超級] 一般的な等級に属さない、人のカテゴリに入らない真の超人たち。現在は全世界で5人しかいない。


 ちなみに俺は[超級]の内の一人で、自他共に認める最強の冒険者だ。一対一なら残り4人の誰にも負けない。二十歳の若さで超級に達した史上初の存在でもある。内心はドヤ顔だけど外には絶対に出さないよ? キャラ作りには余念が無いのだ。


「その通りだが油断は出来ない。魔素溜まりがどう変化するのか、何が起きているのか不明な以上万全を期したい」


「うーん……私が見る限りはそんな危険な感じはしませんよ? 特殊な魔法絡みなら魔族がまず浮かびますが、今代の魔王陛下は人種に友好的な上、変な事を企てる様な人では無いですし……」


「ジル……それはお前だから言える事だ。ダイヤモンドもコランダムも留守の今、お前しか頼めない。超級冒険者[魔剣]ジル、これはギルドからの正式な要請だ」


「分かりました。今からでも行って来ましょうか?」


「はぁ……いや、お前に常識を求めるだけ無駄か……」


 ウラスロが言いたいのは、冒険者の基本である念入りな準備の事だろう。だがあの森に入り調査して来るなど、俺には正に朝飯前だ。早く済まして遅めの朝食でも洒落込もう。


「魔物なら退治しますよ? 勿論報酬は別です」


「わかってる。報告だけは直接来てくれ」


「はーい、それじゃリタさんも後でね?」


 さて、行きますか!









 超級冒険者[魔剣]ジルを見送ったウラスロは、閉じたドアを眺めていた。そして独り言のように呟く。


「ふう、奴が居て良かった……あれで恐ろしく強いのだから不思議なものだ」


 後ろに控えていた新人受付嬢のリタは、その呟きを聞いてウラスロを見た。彼女は幼さを残すソバカスが特徴の小柄な女性だ。因みに、本人は大人の女性に認められたくて、輝く美貌を持つジルを眩しく見たりしている。燻んだ金の髪は頑張って伸ばしているところだった。


「あの……最年少で超級に達したジルさんですから、それは強いのでしょうが、一人で大丈夫なんですか?」


 話し方も無意識に大人っぽくしているが、それが逆に背伸びした女の子に見える事にリタは気付いていない。


「リタはまだ知らなくて当然か……ジルは一人で全てを完結させてしまう特異な冒険者だからな。魔力銀製の剣に纏わせた魔力で斬れない物は無いと言われていて、実際に古竜の鱗すら一刀で両断出来る。おまけに治癒から属性魔法まで操るし、今や当たり前の魔素感知波を創り出したのも彼女だ」


「……信じられないですね」


「ちなみにさっき言っていた魔王云々も事実だからな? ジルは魔王と面識がある……はっきり言うと求婚された。まあ、断ったらしいがな」


「えっ!? 魔王から求婚ですか!? 今代の魔王は友好的だと聞いてますが、ジルさんを妃に迎える程なんて……」


「魔王とまともに戦える唯一の人間だし、あの美貌だ。おかしくないだろう?」


「はぁ……確かに綺麗ですよねジルさんて。背も高くて脚も長いし……あの細い腰なんて二度見しましたもん。性格も優しくて上品な女性でもあるなんて、嫉妬心も浮かんでこないです」


「……優しくて上品ねぇ……アレはそんな女じゃないよ……」


「? ギルド長、何か言われましたか?」


「いや、気にするな。ほら仕事だ」








 ○ ○ ○



「ふんふ〜ん♬ 今日はラッキーだな、こんなチョロい仕事で金が手に入るなら、暫くはニートするか」


 魔力で強化した身体を駆使して、森まで来た俺は上機嫌だ。感知でも魔素溜まりに危険は感じない。勿論何かあるのは間違いないが、散らしてしまえば何も問題ないだろう。


 そして誰も見ていない以上、演技は必要ない。 


 周りからは超級冒険者で超絶美人のジル、更に優しくて上品な女性に見えているはずだ。そう、今世の俺ははっきり言って最高の女だ。


 白金ロングストレートの輝く髪、俺が生まれた一族で稀に現れる水色の瞳、この世界では長身の部類に入るだろう身長と細い手足。


 更に鍛え上げた腹筋のお陰で引き締まったウエストと、それに反して適度なサイズのオッパイとお尻は我ながらヤバイ。


 前世なら一生お近づきになれないレベルの、超絶な美人なのだ。


 しかも赤子の頃から鍛えた魔力は人の限界を超え、その潤沢な魔力のお陰で肌や身体の調子はいつも最高。魔法剣士なら格好良くね?と合わせて習った剣技も中々のもので、今や斬れない物は無い……多分。


 元々オタク趣味を齧っていた俺は、転生時に混乱する事も無く状況を理解した。同時に女に生まれた事を知り、意識がはっきりしていた赤子の頃から試行錯誤を繰り返したのだ。強さだけで無く美貌にも気を使い、今を生きている。


 あの快感が分かるだろうか?


 男達が鼻の下を伸ばして言い寄ってくる

 チラ見せすれば、簡単に目が泳ぐ

 思わせ振りな態度で簡単に落ちる

 ラブレターなる物を受け取る

 若い子も老齢な男も皆が優しくしてくれる


 そして、それをあしらう、袖にする快感を。


 勿論恨まれる事など無いように上手く立ち回るし、力尽くなど俺には通用しない。


 最高の女を演じる事の快感に勝るものなど存在しない。俺は本気でそう思っている。ちなみに恋愛として男に興味など無い、いつか可愛い彼女を作るのだ。さっきのリタちゃんとか最高。


 もう目と鼻の先に魔素溜まりを感知しているが、そんな事は後回しで髪を整えたり。最高傑作のジルはいつも綺麗で無ければならないのだ。


「ん?」


 見つけた枝毛をナイフで切っていた俺は新たな魔力の発露を感知した。


 他の人間には分からないだろうが、魔素が収束し純度が急激に上がっていく。つまり新しい魔力を生み出そうとしている。因みに、自然発生的に起こる現象では殆ど無い。 


「ほえー……なんだろ?」


 興味を惹かれて、大木の影からその中心を観察する。視覚的に捉える事はない筈だが、不思議とボンヤリ見える。そしてゆっくりと渦を巻き、空間に干渉を始めたようだ。


「これは……何か生まれる? いやまさか召喚とか?」


 赤子にいきなり転生した俺には初体験だけに、ワクワクするのを抑えられないな!


 魔物か人か……どちらにしても楽しくなりそう!


 幹の縁から覗き見ながらも、目線は外さない。


 魔力の爆発は今にも起きるだろう。その先の景色が歪むと肉眼で見える程の光を放ち始める。


 よしよし、さあ来い!


 パーンと弾ける光の波に一瞬だけ目が眩んだが、直ぐに視力は戻る。そうして回復した眼に映ったのは……


 ん?


「お、女の子?」


 勿論バレない様に小声だが、俺の目にははっきりと小さな女の子が見えた。


 だが少し様子がおかしい。まず着ている服だが、あれは日本で見ていた学ランではないだろうか? サイズは全く合ってないのだろう、手足は隠れて女の子座りをしたまま呆然としている。俺が女の子と思ったのはその顔だ。


 アッシュブラウンのショートヘアで、目は黒でなく濃紺だろうか? 見る角度によっては少し変化する。だが肌の色や学ランから日本人に思える。しかし、何よりその顔!


「滅茶苦茶可愛いじゃねーか……少し幼いが将来は美人さん間違いなし」


 内心グヘヘと涎が出そうだが、今の俺は超絶美人のジル。何とか冷静さを保ち更に様子を伺う。


「な、なに? 確か神様とか言うおっさんが……」


 ほうほう、声まで可愛いな。しかも神様に転移させられたっぽい。


 キョロキョロと周りを見渡し、人っ子一人いない森に驚いているようだ。実際は気配を消した俺がいるが。すると、地面についていた両手を持ち上げ、マジマジと観察を始めた様だ。


 何だろ?


「この手……()()()()()()()()()()()()()()


 んん? まさか、これは……


 何かに気付いた様子の女の子は、服を恐る恐る摘んで胸元を確認した。そしてベルトを緩めるとズボンの中に手を入れて……ビシッと固まった。


 本当に……間違いないのか……それなら、あの台詞を言うはずだ!


「な、ない……でも、こっちはある……」


 股間から胸へと手を這わした女の子は予想通りの台詞を言った……言ったぞ!


 キ、キターー!!! TSだー!!


 感動に打ち震える俺は、周辺から感じる魔物の気配を知りつつも動く事が出来なくなっていた。だって物語で見たTS女の子が目の前にいるのだ! 俺自身は例外!


 直ぐに女の子に駆け寄らないと……動かない身体に指令を出そうとした頭に光が迸った! いやアイデアが浮かんだ!


 もしかして……もしかしてだよ? TS定番のアレやコレを間近で見れるのではないだろうか? しかも特等席で。今の俺は生まれながらの異世界人で女、しかも先輩冒険者だ。「お着替え」だって、「お風呂」だってどうにでもなるのだ。元日本人などと明かす必要は無い。何も知らない優しいお姉様になれば、イベントは山の様にあるだろう。


 う、うおおぉぉぉーー!!


 最高じゃないか! 俺はやるぞ!


 そうと決まれば、やる事は簡単だ。


 気配を消している俺には目もくれず、魔物の群れはTS女の子にジリジリと包囲の網を縮めている。恐らく小鬼達だろう、まあ簡単に言えばゴブリンだ。一瞬で全滅させるなど余裕だが、それでは面白くない。 


 気配を消したまま、包囲の一番外にいるゴブリンから順に倒していく。無論証拠も気配も残しはしない。掌から出す魔力刃でサクッと心臓を一突きするだけだ。十匹はいた奴らは知らない内に三匹になる。突き出た腹や汚い腰布、緑色したカサカサの肌、目に白い部分はなく赤い。そんなゴブリンさん達は可哀想に御臨終だ。


 グギャギャとかの泣き声?や、ガサガサと草を揺らす音にTS女の子は漸く気付いたようだ。自身の変化にまだ理解が及んでないのだろう、青白い顔に更に驚愕の色が加わる。


「う、うわ……まさか、ゴブリン?」


 定番の台詞を順調に消化していくTS女の子に内心拍手を送りながら、助けに入るタイミングを計る。


「何か武器……そ、そうだ魔法は!? ファイヤーボール!!」


 ……台詞の消化が凄まじいな。勿論火の玉など飛んでは行かない。魔力の収束も感じないし、属性付与も起きてない。お姉さんが今度、手取り足取り色々教えて上げるからね?


 内心遊んでいる内にゴブリン達は包囲を完成させる。だが沢山居た仲間の姿がない事に漸く気付いたのか、ギャーギャーと騒ぎ始めた。


 チャンスと見たのか、TS女の子は森の奥に走り始めた。 


 あちゃー……走ったらダメだよ。ほら、混乱していたゴブリン達が正気を取り戻して追いかけて行く。


 しょうがないなぁー……ゆっくりと魔力銀製の長剣を鞘から抜くと距離を保ちながらゴブリンの後を追った。










「うわっ……痛っ!」


 恐怖に駆られて背後を振り返ったのだろう。目線を外した先の窪みに足を取られて、女の子は転んでしまう。


 サイズの合ってない学ランも邪魔なのか、立ち上がるのにも時間が掛かっていた。大して離れていなかった追手にあっさりと追い付かれてしまう。


 可愛い顔を上げた先にゴブリンが振り被る木製の棒が目に入り、目を瞑るTS女の子!


 ここだ!!


 剣で棒を持つゴブリンを両断すると同時に、残り二匹に魔力弾を放つ。あっさりと頭が吹き飛んだゴブリン達は後ろ向きに音を立てて倒れた。汚いからついでに吹き飛ばしておこう。


 そして、振り返ると用意していた台詞を放った。勿論超絶美人の笑顔と、チラリと見える胸元にも気を配る。前屈みになるとチラリズムが良い感じなのだ。我が家の鏡で偶に鍛えている姿勢を今こそ!


「ねえキミ、大丈夫? 怪我はない?」


 恐る恐る目を開ける女の子は、俺の顔を見て固まった。そして直ぐに胸元に目がいき、慌てて目線を戻した。ククク……だよね! 見ちゃうよね!


「ねえ? 大丈夫かな?」


 気付かないフリの追い打ちをかけた言葉に、我に返った女の子は慌てて立ち上げる。


「は、はい! あ、あの……助けて頂いてありがとうございます!」


「気にしないで。()()()()()()()()()助けるのは当たり前でしょ? 怪我は大丈夫そう、良かった」


 ふふふ……さあどう返す?


「お、女の子ですか!? えっと、その……あ、ありがとうございます」


 ほうほう! 隠す方向で行く訳ね! いいよ、そっちの方が楽しいぞ……イベント消化が捗るな!!


「どうして森に一人でいたのか気になるけど、先ずは街に戻りましょう。此処じゃ落ち着いて話も出来ないし……そうだ、キミ名前は? 私はジル、すぐ近くの街アートリスで冒険者をしているの」


「冒険者……ジルさん……えっと、名前、名前は……アレ?」


 冒険者に食い付くのは予想通りだが、名前が判らないのか?


「どうしたの?」


「名前が思い出せないみたいです……すいません、ジルさん」


「名前が……謝る必要なんてないよ。大丈夫、私が助けて上げる。こう見えてお姉さん強いんだから!」


 実際は世界最強ですけどね!


 名前が思い出せないのは可哀想だけど、ワクワクが止まらない。悲しそうな横顔も、華奢な手足も、小さな身体も全部が可愛らしい。はっきり言えば超好み! ロリと笑われても気にしない、今はお姉さんだから大丈夫!




 異世界転生から22年、俺は最高のおもちゃを手に入れたのだ!










頂いたFAを移動しました。プルプルの場面に

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