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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
一章
5/34


 香音とシリンは、舞うように月の夜を駆けた。

タイル舗装の道に刻まれるのは、二人の足音、そして、不可視の刃。

襲撃者は、二人の背を追い、執拗に刃を放つ。

シリンは、その悉くを、打ち払っていく。

「限界か」

 シリンには、まだ余裕があった。

だが、香音がついて来れない。

シリンは察し、歩道の途中にあった、奇妙なモニュメントの影に、香音を導いた。

「しつこいな」

 二人は身を隠し、呼吸を整える。

静かだった。

ただ、二人の吐息だけが聞こえている。

「これを」

 香音は、シリンに携帯端末の画面を示した。

そこには、周囲の地図情報が表示されており、更に、襲撃者の位置と移動予測、適当な退避ルートが描き込まれていた。

 香音は、冷静だった。

まずい状況に遭遇したのは、これがはじめてではない。

何ができるか、そして、何をすべきか。

過去の経験から考える習慣がついている。

「敵の場所がわかるのか」

「ええ、おおよそだけど、視えたから」

「かなり遠いが、確かか?」

 香音が描き込んだ、襲撃者の位置を示す赤い点は、防砂林の中にあった。

「ええ、街灯の上から狙っていた。移動していなければ、そこに」

「なら、話は早い」

 シリンは、香音が示した方向を凝視し、何かを唱えた。

言葉は呪文のようだった。

そして、間もなく、それは起こった。

 爆発ではない。

炎はなかった。

ただ、衝撃だけが奔り、周囲を揺らした。

 香音は、何が起きたのかわからない。

ただ、響いた低い音に、破壊という事象が連想した。

「倒せたかどうかはわからない。だが時間は稼げる筈だ」

「えっ、ええ」

 呆然としている暇はない。

考えている暇はない。

香音は、振り払い、そして、手を伸ばした。

「そうだね。行こう」

 香音は、シリンの手を繋ぎ、頷いた。

シリンは、拒まなかった。

そして、二人は、海沿いの道を、夜に駆けた。

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