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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
二章
32/34

18

「異能者の存在を鑑み、学園の領域、特に、その中心である大鳥島においては、

我々は様々な制約を課しています」

「制約とは、具体的に、どのような?」

 クノスが、重々しく質す。

「特に影響を受けるのが、情報の収集です。

衛星軌道からの監視映像は、我々に様々な情報をもたらしてくれます。

ですが、大鳥島とその周辺領域は、その対象外としています」

「何故だ?」

「視るということは、視られるということに繋がるからです」

「そういった異能者がいるということだな?」

「一つの可能性です。

そこまでしなければならない。

そこまでしても足りない。

そんな慮外の存在が、異能者であるということです」

「杞憂であろうと言いたくなるが」

「経験から得た備えです」

「卿をして言わしめるのであるならば、信じないわけにもいくまい。

我らとて、既に思い知らされている」

「そもそも、学園は監視衛星や高高度偵察機からの盗撮に対抗する措置を科学的に講じています」

「撮影素子に影響を与える妨害光源ですね。

おかげで帝国も解析に手間をかけることになりました」

 クノスは、然もあらんと報告する。

「それだけではなく、異能者によるものと推定される、何らかの干渉も確認されています。

どうやっているのかは、例によってわかりませんが、

つまるところ、我々が得手とする上からの監視は、自主規制するまでもなく、役に立たないということになります。

異能者を集めているという特性上、外からの監視に神経を尖らせるのは、必然ではありますが」

「異能者の存在を証明するような映像記録が拡散すれば、

地球人類社会の構造が一変する恐れもある。

万全を期すのは道理か」

「そういった事情もあって、より慎重な立ち回りが求められるというわけです。

姿を隠し、息を潜め、影から物事に介入する。

それが基本です」

「そのための姿があれか?」

「ええ、あれです」

 あれとは、つまり、白い面である。

「古典的だな」

「原始的ですが、だからこそ、破りづらい」

「そういうものか」

「そういうものです。

時には、光学迷彩も併用しますが」

 どこか愉しそうなアイリスに、ソウマも笑顔で応じる。

「学園の監視体制はどうなっている?」

「学園は、高度な科学技術を有しています。

外からの侵入、監視に対しては、極めて堅牢であると言えます。

その一方で、例えば、学園の中心である大鳥島の島内監視は、全く先進的ではありません。

地球上に存在する他の大都市と比較しても、監視カメラの数は驚くほど少ない」

「推して知るべしだな。

自らの首に嵌める首輪を進んでつくるほど、愚かではないということだ」

「学園は科学を信じていても、人を信じてはいない。

自らの技術が、自らを脅かすことを危惧する。

それは人として、正しい姿勢です」

「人として」

 アイリスは、言葉を繰り返し、思いを馳せる。

「科学技術が進歩すればする程、人への監視に掛かるコストは小さくなる。

それに伴い、ディストピア化が進むのは宿命ですが、

学園は、その流れに迎合するつもりはないようです」

「ディストピア?」

「理想郷を意味するユートピア。

その反対の特徴を持った社会を示す言葉です。

時代によって、その定義は異なりますが、

現代においては、自由が制限された管理社会を表すことが一般的のようです」

 アイリスが首を傾げたところを、クノスが補足する。

「なるほど、とかく学園はそうではないと」

「はい、それ故に、異能者にとって、都合がいい環境であると言えます」

「それは、卿にとっても、同じということだな」

 アイリスの言葉は的を射ていた。

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