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「異能者の存在は公式に認められてはいません。
一部の権力者が知るのみで、一般人にとってはフィクションの話です」
「なるほど、そうであろうな。
我らとて、地球人類文明に関して全く無知というわけではない。
攻め入る前に、それなりの調査はしていたし、現在も情勢は確認している。
だが、異能者という存在を知るには至らなかった。
地球人類が社会的に異能者を認知していたのであれば、そのようなことはありえないのだ」
「そうですね。
異能者が報道で取り扱われるような存在であれば、帝国が気づかないわけがありません。
彼らは、人類社会の片隅で隠れるようにして生きています」
「片隅か」
アイリスは、既に話の流れを察している。
それ故に、その言葉に違和感を覚えざるを得なかった。
「彼らとて、彼らの社会があるのであろう?」
「はい、異能者を束ねる組織があります」
「大鳥学園だな」
「ほぼ正解です」
アイリスの言葉に、ソウマは静かに肯定した。
「世界中から秀でた学徒を集める教育機構。
最先端の科学技術開発を牽引する研究機構。
基幹特許から得られる莫大な利益で人類社会に影響力を行使する経済機構。
しかし、それらは、表情の幾つかに過ぎません」
「異能者と称される、特異な力を行使する者を集め保護する管理機構。
それが大鳥学園の隠された顔です」
「卿が、その主催というわけか?」
「それは、違います」
「学園の責任者は私ではありません。
表でも、裏でも、私は、学園の運営に携わってはいません」
「それは真実か?」
「はい、陰ながら手伝ってはいますが、時に、その方針を巡り、対立することもあります」
「地球の管理者を自負する卿を持ってしても、意のままとはいかないか」
「私にも、制御できないものがあります。
それが異能者であり、学園です。
これが、お伝えしておきたかったことの一つです」
「卿は、学園で生活をしていると聞いたが?」
「制御できない。
だからこそ、この身を置かざるを得ないということです。
異能者は脅威です。
どのような力が行使できるかは解らない。
そんな存在に、敵として認知されてしまえば終わりです。
理想は、存在に気づかれないことです」
「だが、卿は学園にいる。矛盾ではないか?」
「最も優先すべきは、船の安全です。
それ故に、あらゆる可能性を考慮し、直接の干渉を避ける措置を講じています。
とはいえ、放っておくわけにもいきません。
そんなわけで、間接的に干渉する端末として、私は学園にいるということです」
ソウマは、口にはしなかった。
だが、それは船に危険が及ぶような重大な状況に至った場合、
切り捨てられる存在であるということを意味していた。




