16
「全ての地球人類は、このような特異な能力を持っているのか?」
「いえ、そのようなことはありません。
その素養を持って生まれる地球人類の数は――」
ソウマは、一瞬、言い淀み、言葉を接ぐ。
「そうですね。二万人に一人といったところでしょうか」
「極めて少数ということか」
「はい、更に言えば、異能に覚醒し、それを自在に行使し得るまでに至る者は、より少ない。
帝国が遭遇し、対峙した二人の少女は、特別の中の特別であるということです」
「全ての異能者は、彼女らのような力を持っているのか?」
「異能者が行使する力は、一人一人、全く違っています。
結果として、同様の効力を発揮することもありますが、その再現プロセスは同じではないことが殆どです」
「つまり、誰もが帝国の武力に抗し得るというわけではないのだな?」
「その通りです。
彼女たちは異能を自在に行使し得るに至った稀有な存在であり、また、その中でも、戦いに適した異能を持つ者でもあります。
同じ異能者でも、帝国と同等以上に戦えるような者は、殆どいないと考えていいでしょう」
「つまり、彼らは運が悪かったと?」
「いえ、双方に被害がないように、そういう人選をしました」
「全くありがたいことだな」
「友好関係に罅を入れたくないですからね。
その程度の仕事はします」
「映像の最後に、現れた白い面の男は卿か?」
ふと、アイリスが話の矛先を逸らす。
「ええ、はい。何か?」
「いや、面白いだけだ」
「そうですか」
「だが、聞けば、この者らを卿は倒したと聞く。
その映像はないのか?」
「それは、ご容赦を」
「ないではなく、見せられないか」
「あくまで、中立ですからね。
とにかく、その脅威を実感してもらいたいと、調整をしてきたわけです。
ご理解いただけましたか?」
「異能者なる存在を認めざるを得ないことは、理解した」
「地球人類への警戒度を上げるべきという主張はわかりました。
ですが――」
アイリスとクノスの反応は鈍い。
表情には、どこか余裕があった。
そこには、帝国たるが故の矜持があった。
「付け加えておくなら――」
ソウマは、一瞬、思案し、仕方なく、言葉を接いだ。
「彼女の障壁は、帝国の戦闘艦艇の主砲ですら撃ち抜けないでしょう」
「それは、ありえない」
クノスの表情から、遊びが失われる。
それはアイリスも同様であった。
「彼女が求めれば、あらゆる空間的繋がりは断たれ、干渉が否定されます。
異能というのは、そんな、ありえない力なのです。
そして、彼女たちの他にも、想像を絶する異能を持つ者たちがいます」
「なるほど、卿が言うのであれば、真実なのであろうな。
認識を改めねばなるまい」
アイリスは、やれやれと、だが確かに告げた。
そこに嘘はない。
帝国を統べる者として脅威を脅威として認めていた。
「ことごとく想像の上をいく話だ。
実に愉しいぞ。
卿の添え物でしかなかった蒼い硝子球が途端に魅力的に視えてきた」
「お褒めに預かり光栄です。
地球人類も喜ぶでしょう」
「それで地球人類は、異能者をどのように考えている?
どのような立場にあるのだ」
アイリスは、妖しく笑いながら、核心に触れる。




