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「余は卿が打ちのめしてくれることを期待した。
それだけでよかった。
だが、全く想定外の状況となった」
「お陰で、こうして話ができているというわけです」
「戯れ言であればいいが、そうでもないのだろうな。
機会を窺っていたな?」
「否定はしません」
「そして、帝国は最も遵守すべき約束を反故にした。
卿は、ここぞとばかりに、手札を切ってきた。
余の失策だ。口惜しい」
「ただの成り行きですよ」
「が、謝罪はしておく。
咎は咎だ。
すまなかった」
アイリスは胸に手を置き、小さく頭を垂れた。
首を捧げるように。
クノスは咄嗟に顔を背けた。
専制君主制を領く帝国においては、皇帝とは絶対の存在である。
その皇帝が跪くなど、ありえないことである。
クノスは、二人の関係を理解している。
それでも、臣下として、直視してはならない光景であった。
「謝罪を受け入れます」
「感謝を」
アイリスは、顔を上げ、ほっと息を吐くように言葉を返した。
「では、こちらからも告白をさせて頂きます」
空気を一新するように、ソウマは慎重に声を紡いだ。
その表情からは苦い笑みは失われている。
「既に、ご存知であるように、我々は地球人類に関する重大な情報を隠匿していました。
地球人類は、概して、異能と称される超越的な力。
科学技術に依ることなく、事象へと介入し、現実を歪曲する力を有しています」
「抽象的だな」
アイリスが、ため息をつくように呟く。
「我々とて、全てを理解しているわけではありません。
ただ、そういうものがあるという事実を受け入れているだけに過ぎません。
ですので、先に申し上げておきます。
話せることは多くありません。
しかし、これだけは言えます。
地球人類は侮るべき相手ではない」
「卿をして、そう言わしめるか。
地球人類の技術など、帝国と比較しても、遥かに劣るというのに」
「重力下での局地戦とはいえ、帝国が遅れを取ったことも事実です」
「であるな」
「気に病む必要はありません。
私とて、数えるのも嫌になるくらい敗走していますので」
「なんだと?」
ソウマの言葉は、アイリスにとって、看過できるものではなかった。
「科学技術に依る力。
物理法則を利用し、道具によって再現される現象。
そういった力であれば、我々も、帝国も、遅れを取ることはないでしょう。
地球人類が行使するのは、そうではない力です」




