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「では、まずは、瑣末事から、片付けておこう」
「瑣末事と言いますと?」
ソウマは首を傾げてみせる。
アイリスは、やれやれと、クノスを覗いた。
促されたクノスは静かに頷くと、姿勢を正し、言葉を読み上げ始めた。
「先日、帝国の原理主義勢力が地球圏に侵入。
大気圏を突破し、太平洋上へと降下、その後、西進。
地球人類文明の科学技術研究の重要拠点である大鳥島へと上陸した。
これは、地球不可侵を定めた三文明条約の明確な違反であり、
帝国はこれを重く受け止め、正式に謝罪を伝えたい」
ソウマの瞳を覗く、クノスの瞳に迷いはなく、嘘はない。
真摯な姿だった。
「なるほど、謝罪を受け入れます。
では、話を次に」
重々しい空気を、軽く払うようにソウマは応じた。
「お待ち下さい。
それだけでいいのですか?
いえ、いいわけがありません」
大事にはならなかった。
だからと言って、捨て置いていい問題ではない。
立場が逆であれば、厳重に抗議をしている。
それだけで済むような話ではない。
クノスは、訝しむしかない。
「いい機会だと思いまして」
「機会ですか?」
「止められなかったわけではない。
そういうことだ。
余が事前に伝えておったからな。
その上で、何もしなかったのは、其奴だ」
クノスは言葉を失う他ない。
「とはいえ、計画が実行に移される直前でしたけどね」
「情報を掴むのが遅れたということにしておいてくれ」
「お二方が画策されたことだったと?」
クノスは、ついていけない。
惑うしかない。
「そういうわけではない。
何者が、何故、地球への侵入を企んだのか。
余とて与り知らぬことよ」
「止められなかったわけではない。
そういうことですね?」
アイリスの言葉に倣い、ソウマが問う。
「やる前に止めると、またやろうとするものだ。
ならば、やらせてみたほうがいい。
懲りるであろ?」
「一理なくはないですが」
「であろ?
それに余は伝えたぞ?
すべきことはした」
「というわけなので、この件について、追求するつもりはありません」
「ですが、帝国に責がないとは」
条約は、軽んじていいものではない。
本意であろうと、なかろうと、それを破ったのであれば、責めを負って然るべきである。
それが、クノスの誠意であった。
「そうだな。帝国には責がある。
此奴とて、条約の重要性は理解している。
だが、追求しない。いや、追求できない。
それは何故か?」
苦く笑うソウマの口元を覗きながら、アイリスは言葉を接いだ。
「此奴が帝国に隠していたことは、それだけ重大な瑕疵だということよ」




