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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
二章
25/34

11


 現在、太陽系には、起源を異とする三つの文明が存在していた。

 一つは、地球を起源とする地球人類文明。

未だ地球上でのみ存続する限定文明であり、その歴史は短い。

技術水準は、他の文明と比較して極めて低く、資源や環境など基礎的な問題さえ解決できていない。

 一つは、リムスベルト帝国文明。

彼方の星系から、太陽系へと至ったリムスベルト帝国を起源とする漂流文明である。

文明の中心となる母星は存在せず、小惑星を改造した巨大母船を核とする船団を中心に、その版図を移動させながら成立している。

恒星間航行を可能とする高度な科学技術を有している。

 一つは、名称不明の文明。

その起源、その歴史、その領域、全てが謎に包まれた超古代文明。

太陽系には、遺産である一隻の船と一人の継承者だけが確認されている。

リムスベルト帝国文明を凌ぐ、超高度科学技術を有している。

帝国と同盟関係にあると同時に、地球人類文明の管理者を自称し、双方の融和を支援している。

 広大な宇宙で奇跡的に巡り合った三文明は、手を繋ぎ共に歩む道を模索するため、日夜合議を繰り返していた。

既に、三文明の間には、公平公正な平和友好条約が結ばれていることも手伝って、議論が廻ることもなく、交渉はまとまっていった。

繰り返されるのは、こじれるからではなく、ただ話し合うべき事柄が無数にあるためである。

とはいえ、信頼が醸成されるに連れ、それらは最適化され、互いの提案について、その許否を回答する機械的な処理へと転じている。

言葉を交わし議論する会議らしい会議は、一月に一回予定される定例会議だけであり、それも映像通信を介して行われる。

各々の代表者が、同じ場所に集い、直接言葉を交わすことは稀であり、そして、そんな稀な会議が、間もなく、開かれようとしていた。

 議題は、文化交流でもなければ、資源の取り扱いでもない。

議題の一つは、帝国の特殊部隊が地球に不法侵入した件について、である。

帝国は許可を得ず地球圏に接近することを禁じられている。

目的は不明であるが、条約違反であることは明確である。

そして、もう一つは、帝国に秘匿されてきた地球人類の枢密についてである。

共に、文明国家間の信頼を揺るがしかねない深刻な議題である。

 会議の場は、火星の衛星フォボス近傍。

火星圏が選ばれたことに特に意味はない。

地球に近すぎず遠すぎず、解りやすい標として、そこに在った。

それだけである。

 言うまでもなく、火星圏は地球人類未踏の領域である。

フォボスの軌道上には、常ならば何もありはない。

だが、現在は、そこに一つの巨大人工物の姿があった。

帝国の艦艇を投錨させ、そこを会場とする運びである。

これは帝国が気遣いから、提案したものである。

文明国家の代表を迎えるとなれば、それなりの会場と支度が必要となる。

帝国としては、そのようなことは些事であるが、地球の代表者にとっては、そうではない。

人手も、経験も足りない。

とかく、そういった事情から、帝国の代表者が赴き、そして、迎えるという、やや奇妙な形となった。

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