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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
二章
24/34

10


「状況を報告する。

転送後に逃げた者を確保した。

他の者たちは既に移送を開始している」

「こちらも、どうにかなりました」

 通話で伝えられた若い女性の言葉に、ソウマは疲れたように応えた。

「怪我はないか?」

「どうにか、相手が手加減をしてくれたお陰ですが」

「こちらの不手際を詫びる他ない」

「彼女たちにも経験は必要ですからね。

いい機会でした」

「実戦訓練というわけか」

「負けて得られるものもあります」

「ああ、そうだな」

 顧みるように、女性は応じた。

「しかし、驚く他ない。

装備は限定されていたとはいえ、

帝国の精鋭部隊が手も足も出ないとはな」

「地球人類文明の科学は、帝国に大きく遅れを取っています。

警戒を怠っていても、不思議ではありません。

それに風紀委員は、学園の精鋭ですからね。

彼女たちの異能は、全く強力で、不条理なものでした。

どうにもならないのが、自然です」

「気を遣っているのか?」

「いつも気を遣っていますよ?」

「だろうな」

 ため息をつくような応え。

辟易とした表情が自然と思い描かれる。

「さて置き、現実は現実として、受け入れるしかあるまい。

幸いなことに犠牲者もいない」

「誤解を恐れずに言えば、理想的な展開ではあるかもしれません。

異能について、話しをする機会が得られました」

「異能。地球人類が身に宿した科学技術に依らない特異な力か。

俄には、信じられん話だ」

「だからこそ、話す機会を窺っていたと、ご理解を頂ければ嬉しいです」

「信じよう。だが、不快ではあるな」

 それは、個人的な感情の話である。

だからこそ、厄介だった。

「謝ります」

「赦そう。だが、そうだな。貸しにしておこう」

「返せるように、心がけます」

「励むがいい」

 二つの声は、軽やかに踊っていた。

「近いうちに、お時間を頂きたいと考えています」

「わかった。陛下に伝えよう」

「では、今夜はこれにて――」

「待て」

 通話を切ろうとしたソウマを、ふと声が遮る。

「何でしょうか?」

「詫びはした。だが、まだ礼を言っていない」

「そうでしたか?」

「感謝を」

「どういたしまして」

 ソウマは、謝意を受け入れる。

「出会いに感謝を。共に歩めることを嬉しく思う」

 交錯する思惑によって紡がれた一つの夜が終わりを告げる。

 黎明。

まだ、天には星が輝いている。

まだ、夜明けは遠い。

だが、新たなる夜明けは、はじまろうとしていた。

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