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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
二章
23/34


「白面様、よろしければ、私とも、お相手を」

 振り返れば、レアが怪しく微笑んでいた。

感情のない瞳に青い炎を燻らせ、睥睨していた。

 ソウマの視線は奪われていた。

その瞳は、視てはならぬものを視ていた。

そこには病んだ少女が在った。

だが、それではない。

視てはならぬものは、そこにはないものであった。

両の掌から、解き放たれた眩い光。

世界を覆う光。

万華鏡が如き無限が、ソウマの意識を優しく抱擁する。

 墜ちる。

――墜ちていく。

瞬間、頭蓋の中で銃爪が引かれたかのようなすさまじい衝撃が襲った。

「警告:精神障壁87層までを貫通。復元開始」

 耳鳴りの中で、ソラの声が響き、ソウマは我へと還る。

「すさまじいものです。私ではなければ、精神病院送りといったところでしょう」

 レアは、遂に、感情を顕にする。

奥歯を噛み、ソウマを睨みつける。

「一体、何者だというのですか」

「敵ではないことは確かです」

「信じろと?」

「信じるものは救われると言いますよ?」

 レアの背を氷の手が撫ぜた。

その言葉は、レアの過去を抉るものだった。

――教会。十字架。聖典。

「「「「魔女」」」」

 悪意の言葉が唱えられる。

フラッシュバックした光景が声がレアの安定を奪う。

「私は、赦さない。

赦すわけにはいかない。

この学園の平穏を乱す者を、逃れてきた者たちに仇なす者を。

私が、私が、私が、守らなければならない!」

 レアの叫びが、夜に響き、その掌に灯火が宿る。

「検索:対象の特徴から異能を照会。

――該当。

夢幻燈華ロスト・プリズム』に合致。

燦爛する灯火を起点とした精神攻撃。

視覚野から深層意識に潜入し、影響下に置かれた者を行動不能に陥れます」

「つまり、視なければ――」

 それは、炎の蛇が頭の中でのたうち回るかのような、凄絶な痛苦だった。

苦悶の言葉すら許されない。

「警告:精神障壁132層までを貫通。神経回路を遮断。隔離」

「そこまで甘くはないか」

 それは如何なる理か。

そも異能に理などない。

それを思い知らされ、ソウマは苦く笑う。

笑ってしまう。

笑うしかないくらい一方的な蹂躙だった。

だが、ソウマの膝は折れない。

ただ、静かに、確かに、一歩ずつ、歩みを進めた。

そして、辿り着いた。

 そこには、膝を震わせ怯える少女がいた。

「私は、貴方を傷つけません」

 知らず零れていた涙を拭う指先は優しく、瞳を覗く瞳は澄んだ色をしていた。

それは、かつて、自身を救った者の姿を、レアに想起させた。

「あっ、ああ――」

 声を震わせ、そして、レア・リヒターは、静かに意識を失った。


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