表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
二章
22/34


「ソラ、情報を」

 白い面の下、誰にも聞こえない、しかし、唯一人に届く声で、ソウマは呼んだ。

「検索:学園の中央データベース、隔離領域に侵入。

対象の特徴から異能を照会。

――該当。

零式境界ディバイド・ゼロ』に合致」

 誰にも聞こえない、しかし、唯一人に届く声で、ソラが応えた。

 ダイレクトリンク。

時間と空間を超越する絶対の輪で二人は繋がっている。

「自身を内包する立方体を独立した空間と定義し、

境界の連続性を否定することで、完全に隔絶します」

「欠点は?」

「空間の境界は絶対であり、強度という概念が存在しているかも不明。

通常兵器が効果をあげた事例は報告されていません。

一方で、その行使には高い集中力が必要とされ、心的要因による境界の消失が確認されています。

「心的要因?」

「つまり、動揺です」

 ソウマは情報を基に状況を打開するための戦術を構築していく。

「境界の出現を予想できるか?」

「肯定:境界の出現時には、そこにある物質が押し退けられるようです。

故に、地球大気圏下においては、境界の捕捉は難しくありません。

また視線からの推測も一定の効果が期待できます」

「境界を視界に投影」

「反映しました」

 ソラの言葉と共に、不可視であった境界が青く彩られ、ソウマの視界に映し出される。

「さて、貴方の異能のことは概ね把握しました」

「戯れ言を」 

 リンファは、相手にしない。

代わりに、実力を行使する。

白面を演じる者の足元を一瞥し、空間を刻みつける。

牽制となる筈の一視。

それをソウマは、軽やかに躱してみせる。

「どうしましたか?」

 ソウマは、わざとらしく、訊ねてみせる。

リンファは、確かめるように、二手、三手と刻む。

致命傷は避けるように浅く、だが、そんな気遣いは不要であると示すようにソウマは躱す。

まるで捉えられない。

疑いが確信に変わる。

「何を、している!?」

「攻撃を躱している。それだけです」

「莫迦な、そんなことができる筈が」

「何故、視えないと?」

 リンファは、平静を装いながら、ソウマを捉えんと空間を刻む。

そこには、明らかに焦りがあった。

リンファの意図するところは、打倒であっても、殺害ではない。

それは学園の意向にも、風紀委員の意向にも反する。

白面に対し、嫌悪はあっても、憎悪はない。

故に、細心の注意を払いながら、異能を行使してきた。

それは、先の侵入者に対しても同じである。

だが、今は、そうではない。

 速度を求める余り、精度が失われていた。

ソウマは、躱し、躱す。

リンファの距離感が狂っていく。

そして、一線を越えた。

「あっ」

 リンファは、暴走に気づき、静止する。

牽制の域を逸脱した凶行。

それは言い逃れようのない攻撃だった。

 だが、それこそが待ち望まれていたものだった。

躱すことはできた。

だが、そうはしない。

その一枚の境界に、ソウマは、腕を差し出す。

「なっ!?」

 上腕の切断は致命的な損傷となり得る。

大量の失血は、生命の維持に重大な危機をもたらす。

学園は最先端の医療技術を有しているが、それも絶対ではない。

果たして、すぐに救護を呼ぶことができるのかも、確かではない。

 人を殺す。

その可能性に、リンファの心は激しく揺らぎ、そして、ほつれた。

 境界は砕け、空間が同期する。

「貴方は、正常です」

 ソウマは、慈しむように告げた。

「おのれ!」

 リンファが気づいた時には、既に遅い。

ソウマは跳び、距離は失われていた。

「わ、私に触れるな!」

 リンファは怯えるように叫び、再び、世界を刻もうとした。

だが、間に合わない。

「その在り方は尊ぶべきものです。少なくとも、まだ、今は」

 ソウマの掌底が胸に触れ、如何なる技か、リュウ・リンファは糸が切れた人形のように力を失い崩れ落ちた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ