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「貴方の異能ではあるまい」
「さて、どうでしょうか?」
白面は、答えない。言うまでもない。
自身の異能をひけらかすことなど愚の骨頂である。
異能者同士の戦いとは、即ち情報戦である。
如何に自身の異能を隠し、相手の不意をつくかが重要になる。
「こちらとしても意識が戻ってからでは面倒ですので、先に確保させて頂きました」
「面倒であれば、全てこちらにお任せ頂ければよいものを」
白面は、仮面の下で苦く笑うしかない。
「では、私もこれにて、と立ち去りたいところですが、それでは少し可哀想ですね」
それは心からの言葉ではない。
そも、逃げる気であれば、既に姿を消している。
「つまり、私たちを足止めしておきたい事情があるということですね。
例えば、あまり遠くへは転移させられないとか?」
「見透かされていましたか。
ですが、気が咎めるというのは嘘ではありません。
お二方が叱責されるのは、公平とは言えませんから」
「お気遣いをありがとうございます。
確かに、侵入者を逃してしまいました。
それを咎められることは仕方のないことです。
ですが、心配は要りません。
貴方を捕らえれば、立つ瀬もあるというもの」
「そこまでする必要はありません。
私のせいにして頂ければ、矛先はこちらに向かいますので。
とはいえ、何もせず、見逃したとあっては、風紀委員の名折れとの謗りを受けるかもしれません」
「お優しいこと」
互いに表情を覗きながら、出方を窺う。
膠着は続くが、双方に焦りはなかった。
「どうやら、先に仕掛けるつもりはないようですね。
正しい対応です」
リンファとレアは風紀委員であり、対する白面は手配の身である。
「郊外とは言え、ここは学園の中枢である本島。
環境を鑑みれば、基本的には、時間が経てば経つほど、状況は体制の優位になる」
「連絡が途絶えれば、何かが起きていると考えるのが自然です」
役に立たなくなったインカムを耳から外しながら、レアが不適に告げる。
既に、果たせなかった任務のことは頭にない。
白面との対峙に集中していた。
そして、それは正しい。
「私としても、時間が稼げればいいのですが、それはそれとして。
貴方がたは有望なようだ。
折角ですので、ここで手を合わせておくのも良いでしょう」
白面は首を傾げるように、二人の少女の姿を覗き、そして、言葉を接いだ。
「では、始めましょう」
短く告げられた飾らない言葉には、ただ威があった。
「違うな」
だが、ここに怯む者はいない。
「違う?」
「私は既に仕掛けている」
リンファは、静かに告げた。
その瞳は、虚空を刻んでいた。




