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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
はじまりの鼓動Ⅱ
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 それを船と認識した瞬間、朦朧としていた意識は覚醒していた。

「どうすればいい?」

 自問自答を繰り返す。

考えながら、状況を精査する。

ヘルメットに内蔵された光波測距儀を起動し、距離を計測した。

宇宙では、遠近感が失われる。

視覚から齎される情報だけで距離を判断することは難しい。

 体積、距離、速度、角度。

確かな情報と不確かな情報。

全てを鑑み、船へと至る手段を検討する。

構想し、試算し、演算し、検算した。

そして、答えは導かれた。

 時間は多くはない。

やり直すことはできない。

失敗は許されない。

だが、迷いはなかった。

辿りつけたとして、中に入ることができるかもわからない。

それでも、ここで終わりを待つよりは、正しい在り方であるという確信があった。

 一瞬の邂逅。

そこに全てを賭け、私は、踏み出した。

推進装置は、正確に機能した。

最も適当であろうと推定した軌道をなぞり、身体を泳がせる。

 視線は、外さない。

船を凝視する。

逸らせば、失われてしまう。

そんな気がした。

 それは永遠のように感じられる旅路だった。

断続的な加速を経て、既に身体は、宇宙でなければ、ありえない速度へと達している。

だが、近づいているという、実感を得られない。

星も、船も、そこにあって、変わらない。

時の流れが一定であることすら疑わしい。

 だが、それも、終わる。

現在にあっては、過去は一瞬である。

いつからか、船は、そこにあった。

既に、視ようとしなくても、視えるほどに、確かなものとして、眼前に在った。

 距離が失われ、眩むような速度の差が、顕になる。

次はない。

躊躇う時間はない。

 船と身体を繋ぐ、接着アンカーを射出し、奥歯を噛む。

間もなく、身体を凄まじい衝撃が襲った。

相対速度の差が、耐衝撃装置の限界を超え、ワイヤーを軋ませる。

加速に耐えながら、推進装置を使い、体勢を立て直す。

 やがて、最後の嵐は去り、それは成った。

一歩。

私は、叡智の結晶に足跡を刻んだ。

 点と点の邂逅。

それは人類には、成し得ないはずの事象。

奇跡であった。

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