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098:第一章・完

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NAME:ヤマダ タケル (Administrator)

TYPE:Human

HP:9999 SP:9999

STR:999 AGI:999 VIT:999 INT:999 DEX:999 LUK:999

GOLD:838861

ITEM

 短剣

 布の服

 冒険者の靴

-----


 俺のシステムコンソールには管理者アドミニストレータ権限が与えられている。

 この世界の人間には「一人につき使える魔法の属性はひとつ」などの厳しい制約があるらしいが、管理者権限保有者はそれを無視して強力なスキルを多数使うことができる。

 しかし、俺のスキルウインドウにはメテオやフレアなど王道モノに紛れて、ひとつだけ異彩を放つスキルがあった。



『神の炎』



 他のスキルには必殺技らしい名称が与えられているのに対し、この魔法だけは妙にシンプルな名称だった。

 そして、他のスキルは魔力さえあれば使用出来るのに対し、この魔法だけはわざわざ注意書きが添えられていた。


『危険! 消費HP9999、消費SP9999』



 ―― それが指す意味は、ただひとつ。




 ―― それを使ったロロがどうなったのか、答えは……ただひとつ。





 荒れ狂う炎が止んでしばらく経ってから、俺たちはようやく目を開けることができた。

 炎というのも烏滸おこがましい程の強烈な光の渦は、果たして神の炎によるものなのか、それとも世界樹から放たれたものだったのか。

 今となってはそれを知るよしも無い。


 そらを埋め尽くしていた火球は全て無くなり、世界樹のHPどころか存在そのものがシステムコンソールの表示からも消えてしまった。


 世界樹のあった場所には底すら見えない巨大な大穴がぽっかりと開いている。

 つまり、この世界から「世界樹の存在そのもの」が消滅したのだ。



【Flag No.32 フラグ回収クエストをクリアしました】



 その大穴の真上にはオウカ姫の命を救えたことを証明するメッセージが機械的に表示されていたが、俺はシステムコンソールに表示された一項目を凝視したまま動けずにいた。



-----

NAME:Lorona (Deleted)

TYPE:-

HP:- SP:-

STR:- AGI:- VIT:- INT:- DEX:- LUK:-

GOLD:-

ITEM:-

-----



 パーティステータス一覧に表示された「ロロウナ(削除済み)」の文字。

 俺の目の前には黒く焼け焦げた杖を抱きしめたまま、泣くじゃくるアンジュの姿だけがあった。


『うぅ……ロロぉ……』


「………」


 仲間達が集まってきたものの、誰も声を発さない。

 死の運命から逃れることのできたオウカ姫ですら、この結末に涙を流して悔しがっていた。


『ねえタケル……。私、これからどうしたらいい……?』


「…………」


『私、もう無理だよぅ……』


 弱々しい声で俺にすがってくるアンジュに、俺は何も言えなかった。

 模範解答は「ロロの分まで生きろ」なのだろうけど、そんな安っぽい言葉で済ませられるわけがない。


「俺が代わりに『神の炎』を使っていれば……」


「それじゃ、何も変わらないじゃないですか!!!」


 リーリアが泣きながら怒りの声を上げた。

 ……そんな事は分かっているんだ。

 だけど、自分の代わりにロロが消えてしまったという事実は、とても心苦しい。


「す、すみません。辛いのは皆同じなのに、取り乱してしまって」


「いや、良いんだ。本当に辛いのは……」


 いつも天真爛漫てんしんらんまんなアンジュが目の前で泣きながら俯く姿は、見ていて心が痛い。

 俺はこらえきれず、涙がこぼれそうになるのが嫌で空を見上げると……



【つよくてニューゲーム】

【チャレンジしますか?】


    Yes / No



「……は?」


 思わず手で目を擦ってから二度見してしまった。


「マジかっ!?」


 空を指差しながら叫んだ俺の姿にアンジュも慌てて見上げたものの、まだ事情が飲み込めていないのか、首を傾げた。


『つよくてニューゲームって、何さ???』


 さすがのアンジュもクロノは未プレイだったらしい。


「うーん。要は俺らの記憶や能力を残したまま過去からやり直せる……という、コンテニュー的な感じかな」


 俺の言葉を聞くや否や、アンジュが凄い形相で飛びかかってきた!


『それならロロを助けられるじゃないか!!! 即ゴーだよ! 迷う理由無いよ!! さあ行け!! やれ行け!! 利用許諾をさっさと進めてっ!!!』


 鼻息荒く俺の頭をバシバシ叩いてきた!!


「痛えっ! っつーか、少し落ち着け!! これ実行してどこまで戻るかわかんねーし、そもそも誰か独りだけ巻き戻って、そいつ以外全員取り残される可能性だってあるんだぞ?」


『うぐぅ!』


 俺の言葉に急に冷静さを取り戻したのか、恨めしそうに俺を睨んできた。

 そ、そんな目をされても困るぞ。


『だからって、ロロを見殺しにしてオシマイとかありえない! 少しでもチャンスがあるなら、行くしかないじゃないか!!』


 アンジュの気迫に他の皆も驚いていたが、リーリアがやってきてアンジュを優しく撫でた。


「私もアンジュちゃんに賛成です」


 リーリアの宣言に、仲間たちが一斉に顔を上げる。


『同じく』

『当然ですわ』

「行きましょう!」

『仕方ないにゃりねぇ』

『言わずとも~』


 多数決の結果、圧倒的過半数でアンジュの勝利となった。

 まあ予想通りではあるのだけども。


「でも、もう一人ちゃんと意見を聞くべき相手が居るだろう」


 俺の目線の先には、今回の選択に最も強く関わる者……オウカ姫がいた。

 時間が巻き戻るということはつまり、この子は再び死の運命の中に身を投じるということになる。

 もし彼女も「つよくてニューゲーム」に含まれて今回の一件の記憶が継承されてしまうのならば、一連の記憶を残したまま再び死の恐怖と戦わねばならないのだ。


 しかし、そんな重要な選択を委ねられたにも関わらず、オウカ姫の表情は凛々しげだった。


わらわの代わりに民を見殺しにしたなんぞ夢見が悪すぎる。気にせず行くが良い」


 その目には一切の迷いが無く、そこには強い信念があった。


「あの、オウカ姫……ちゃんと意味分かってます?」


「当たり前であろうが!!!」


 レンがうっかり横やりを入れてしまい、憤慨したオウカ姫にバシバシ叩かれていた。

 それを見て一同に笑顔が戻る。


「ったく、お前らは無鉄砲すぎるよ」


 俺がぶちぶちと文句言いながら空に流れる承諾メッセージを適当にスクロールして進めていると、メリーザが俺の腕に抱きついてきた。


『アンジュさんに言われずとも、魔王様は行くおつもりでしたでしょう?』


「当然だろ」


 俺の即答に、メリーザは嬉しそうに笑った。

 だが、リーリアだけは一人寂しそうな顔をしている。


「どうした?」


「あ、すみません。……えっとですね。もしも自分の記憶だけ残っていて、他の皆が自分の事を忘れちゃってたら怖いなぁ……って」


 その言葉に再び辺りは静まりかえった。


「ご、ごめんなさい! こんな時に皆さんを怖がらせるような事をっ……」


 申し訳なさそうにオロオロするリーリアに、エアリオは首を横に振った。


『その気持ちも分かるよ。もし全て忘れちゃったら、私はまた魔王様に刃を向けたり、リーリアのお父さんやお母さんに酷い事をしちゃうんだしさ。そうならない事を祈……っぷっ!!?』


 エアリオが全て話し終わる前に感極まったリーリアがギューっとしていた。

 嬉し泣きの表情のリーリアに対し、照れて困り顔のエアリオが対照的だ。


 そんな微笑ましい時間も過ぎ、俺たちの目の前に最終確認メッセージが表示された。



【本当に実行しますか?】


   Yes / No



「さて、マジでどうなるかわかんねーからな?」


 しかし俺の脅しに誰も屈するコトは無く、アンジュからは『さっさYes押せー! ぶーぶー!』と、鬱陶しいブーイングが飛んできた。


「それじゃみんな、また会おうな!!」


 俺が「つよくてニューゲーム」に承諾すると、世界樹のあった大穴から虹色のモヤが吹き出して俺たちを包み込んだ……




―――――――――― Act-1 end.

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