092:「2112」という数字にピンと来た人はお見事
<ウルシュ城 謁見の間>
「なるほど、そんな事があったのですね」
レンがクロマルを一発KOしたのを見届けた俺たちは、再び城主サクヤの前にいた。
ただ、ここに集まった顔ぶれは前回と違い……
「レンはまるで疾風の如く飛翔し、ものの一蹴りでクロマルはまるで木の葉のように舞いよった! 妾は大変驚いたぞ!!」
オウカ姫が身振り手振りで家来達に状況を伝え、まるで自分がやったかのように自慢している。
それを見て城主サクヤはやれやれと呆れつつ、オウカ姫の頭を軽く小突いた。
「オウカ、客人の前ではしたないですよ」
「す、すみませぬ母上」
さすが一国の姫だけあってすぐに体裁を整えたものの、その顔はイタズラっ子そのもの。
そりゃ、自分と歳のほぼ変わらない女の子が国一番の強者をあっさりと倒してしまったのだから、そんなものを目の当たりにした子供がハイテンションになるのは仕方あるまい。
そんな年相応にヤンチャなオウカ姫をずっと微笑ましく眺めていたいところではあるけど、今回俺たちはちゃんと目的があって来ているのだ。
「改めて確認ですが、預言書には姫が命を落とす理由は書かれていないのですね?」
「はい、学者達があらゆる手段をもって予言書の解読に挑みましたが、オウカに関する記述は最後の頁のみ。救世主様がどのように助ければ良いのかは一切書かれておりませんでした」
それはつまり、どうしてオウカ姫が死に至るのか理由が分からないというコト。
「ロロ、オウカ姫に持病が無いか調べたり出来るか?」
『んー、ステータス異常なら分かるよ』
ロロがオウカ姫に向かって賢者の杖を振ると、空中に文字が浮かび上がった。
そして、そこに書かれていたのは……
「読めません」
『うん、ボクもそのパターンだと思ってたよ』
ロロが俺を見て少し笑うと、それから浮かび上がった文字を読み上げ始めた。
「毒や麻痺なども無いし、これといった状態異常は無いね。呪いの類でも無いみたいだ。お姫様はとても健康だよ。ただ……」
急にロロが難しい顔で首を傾げる。
『この子の年齢が何故か2112歳って表示されてるんだよ。この杖、調子悪いのかな?』
ロロは訝しげな顔のまま杖をゴンゴンと叩いた。
「実はウルシュ国の人達はめっちゃ長寿とか?」
『さすがにそれは無いと思うよ。そもそもこの世界が出来たのがたぶんそのくらいだし』
俺の呟きに対してアンジュが凄いコトをさらりと言った。
「え、この世界ってそんなに新しいの? 世界が作られて2112年???」
『うん。そもそもタケルの前居た世界だって実際は……って、この話はナシナシっ。忘れておくれっ。禁則事項とやらがあるんだよ』
「えええーっ!?」
何かすげー意味深なコト言いながら話を途中で切るとか、なんてヤツだ!!
『それはともかくとして、お姫様の年齢がおかしいのは予言書と何か関連があるかもね』
「んー、年齢値が高くなり過ぎてて天寿をオーバーしてるから、それを適切な年齢に戻せたらOKとか、そんな感じかねぇ?」
『それあるかもね! もしくは世界樹に問題が起きてて、それの解決がフラグ回収条件ってのもあったりしてっ』
「おおっ、王道展開だな!」
俺とアンジュは再び腕組みをしたまま俯いた。
そして、そんな俺たちふたりを見たオウカ姫が不思議そうな顔をする。
「ところでレンよ」
「はい?」
「そこの二人は兄妹なのか?」
「いいえ、血縁は無いと聞いていますけど……」
レンがそう答えるとオウカ姫は首を傾げた。
「仕草や雰囲気が兄妹……いや、まるで双子のようでな。阿吽の呼吸と言うか、互いに何も言わずとも意志が通じているように見……」
『オェー!』
「てめえ! それやるのは分かってたけど、せめて姫が喋り終えてからにしろよっ! 失礼過ぎるだろうがっ!!」
『タケルと似てるとか屈辱にも程があるんだよぅ! それが姫の御前でもいっひゃひゃひゃ!! ひゃめへぇー!!』
俺はバカ天使の頬を引っ張りつつ、オウカ姫に頭を下げる。
「このバカの無礼を許してやってくれ……」
「お、おう、それは構わぬが、その娘がグッタリしているのは大丈夫かの?」
「ああ、問題ないよ」
俺はそのままバカをポイと投げ捨てた。
「そんじゃ、次にオウカ姫に質問。ロロが調べた限り、病気や呪いの類の兆候は無さそうだけど、自分で最近何か気になるコトは無いかな?」
身分的には敬語を使うべきなのだが、何故かタメ語で話しかけてしまった。
だが、オウカは特にそれを気にしていないようだ。
「無いのぅ。しいて言えば、お主らがやって来た事やレンが修羅のように強かった事の方が印象が強いくらいじゃ」
ふーむ、特に自覚出来るような異常も無し、か。
となると、もっと情報が必要だな……。
「じゃあ、この城や町に図書館や歴史資料館は無いかな?」
「む、キョードシリョーカンとやらは分からんが、図書館ならば町の北東にあるぞ」
まるでNPCのような説明に思わず笑ってしまったが、これで次にやるコトは決まった。
「よし、そんじゃ図書館に行ってみるぞ!」





