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088:実は黒髪ロングの子が登場するのはシリーズ初

<ウルシュ国 謁見の間>


「私はウルシュ国城主、名はサクヤと申します。ようこそおいでくださいました、救世主様」


 自らを城主と名乗る女性が、レンに対して深々と頭を下げた。

 普通王族が庶民に対してこんな態度はありえないし、さっきも兵士が言っていたけど「救世主様」ってどういうことだ……?


「えっ、えっ??? たっ、タケル様~~!!」


 状況を理解出来ていないレンが困った顔で俺に助けを求めてきたため、とりあえず代わりに話を進めることにした。


「レンが救世主とは、どういうコトなのか詳しく教えてくれるか?」


 女王様に対してつい癖で思いっきりタメ語で話しかけてしまったが、サクヤは嫌な顔ひとつせず語り始めた。


「はい。実は我が国には、二百年ほど前から伝わる予言書があるのですが……」 


 また二百年前かよ!

 パターン的に今回も勇者ご一行様が残していったヤツなんだろうか。


「予言書には国の未来に関わる様々な事柄が書かれていて、その最終章が今年なのです」


「へぇ、それじゃ今後は予言書ナシでやっていくんだな。まあ、そんなもんに頼らずに済むならそれが一番良いと思うよ」


 例えその予言書に書かれているコトが実際に起こるにしても、そこにおんぶに抱っこで国の行く末を決めてしまうのはとても問題がある。

 だが、俺の答えを聞いてサクヤは首を左右に振った。


「最終章に書かれているのは……我が娘オウカの死とウルシュ国の終わりなのです」


「っ!?」


 そう言って目の前に開示された予言書の複写には次のように書かれていた。


【漆国之招来図】

 建国二百年を過ぎし我が国も、ここで終はる。魔物に誘拐されし姫は死に至り、跡継ぎを無かりせし国は滅ぶ。破滅より皆を救うのは、我が国の言葉を知る異国の救世主。黒髪の少女が付き人を引き連れて現れるならむ。


「少女が付き人をって、この予言書すごく失礼じゃありません?」


 レンが予言書の内容に対し不満げにブーブーと文句を言う。


「書き方とか言い回しがすげー古風だけどド直球な内容だな。たぶん今回の一件においてはレンが主役なんだと思うぞ?」


 俺の言葉にサクヤは目を見開く。


「貴方もこれが読めるのですかっ!?」


「予言書にはレン一人しか読めないなんて一言も書いてないしな」


 俺の言葉にサクヤは感嘆した。


「実は我が国の民ですらこの予言書を読める者は少なくて……。この文字は国が始まる前からあるものの、詳しい文献は残っていないのです。恐らく初代国王が生まれた地で使われていた言語だと思うのですが、どうして貴方達が読み方を知り得たのか教えて頂けませんか?」


 懇願するサクヤに俺とレンは戸惑いつつ、チラリとアンジュの方をみると『別にいいんじゃねー?』みたいな顔をしていたので、サクッと俺たちの素性を説明した。

 ……あっ、もちろん魔王とかその辺の説明は抜きで、異世界人のアレコレというヤツだけね。



◇◇



「なるほど噂には聞いたことがありましたが、まさか我が先祖がこの世界の民では無かったとは……」


 驚きと不安と喜びが混じったような不思議な顔で自分の胸に手を当てて目を瞑るサクヤが妙に艶っぽいものの、この仕草に見とれてしまうとまた何かアンジュから突っ込まれそうなので、平静を装うことにした。


『ふーん、タケルはああいう大人の女性が見せる憂いの顔も好みなんだね。ちなみに、それを隠そうと強がる姿はボクの大好物だよ』


 思わぬ方向ロロからスナイプがきたああああああっ!!?


『ロロ、そういうのは全て分かっていても気づかないふりをしてあげるのが淑女レディたしなみだよ?』


 と言いながら、笑いを堪えきれずに頬を膨らせたまま顔をプルプルさせているこのバカ天使を殴ってやりたい。


「貴方の気持ちは嬉しいのですが身分の差が……」


「すみません、勘弁してください」


 さすがに城主様にまで言われるとオーバーキルにも程がある。


「ふふ、冗談です。ですが奥方の手前、別の女性に見とれるのはあまり感心しませんよ?」


 ……ん?


「誰が奥方?」


救世主レン様が」


「誰の奥方?」


「貴方の」


「……?」


 えーっと……これはどう説明したものか。

 隣のレンを見ると、顔を赤くしながらこちらを上目遣いでチラッチラッと見ている。

 やめてくれ、その目線は俺に効く。


「えーーっと、夫婦というわけではないのですが……」


「なるほどお二人は婚前でしたか。それなら是非とも式は我が国で行うが良いでしょう」


「いや、そうではなく……」


 しどろもどろになって慌てている俺を見て、サクヤは「はて?」と首を傾げる。

 微妙な空気が漂う中、バッとメリーザが立ち上がった!


『申し訳ありませんが、実はそこの小娘ではなくわたくしが妻でし……へぶっ!?』


 最速で抜け駆けしようと企んだメリーザは、無言で後ろに立ったエアリオに全力のチョップをくらい、地面に崩れ落ちた。


「すみませんサクヤ様。タケル様と私達は一切そういった関係ではないのです」


 申し訳なさそうに事実を伝えているレンが何だか寂しそうな顔で、何だかこちらとしても大変いたたまれない。


「これだけの女子おなごを引き連れて……一切?」


「はい」


 サクヤがオロオロと困った顔をした後、恐る恐る口を開いた。


「……同性の方がお好みですか?」


『『ブッフォッ!!! うひゃひゃひゃっ!!!』』


 思わぬ毒舌を炸裂させてくれたサクヤより、後ろで爆笑するアンジュとロロのコンビが大変鬱陶しい。


「あっ、申し訳ありません! つい本音が……それにしても、これだけ周りに居て……一切?」


「さらっと追い打ちかけるのやめてくれますっ!!?」


 俺のツッコミにサクヤはクスクスと嬉しそうに笑った。

 この人、物腰は上品なのに根っこの部分はかなりヤンチャな気がするぞ……!


 後ろで爆笑してるヤツらと目線が合った時に一瞬ニヤリと怪しく笑ってたし、何か通じ合うものがあるみたいだ。

 ……なんだか、この国の将来が心配になってきたなぁ。


「ところで、王女オウカ様はこの予言書の事を存じているのですか?」


 先ほどとは逆に今度はレンが俺に助け船をよこしてくれた。


「あの子が幼き頃から、自らの運命とそれを打ち破る救世主様の事を言い聞かせてあります。ですが実際に救世主様が現れるや否や、そのまま部屋閉じこもってしまって……」


 それってもしかして……。


「オウカ様って、天守閣の長い黒髪の女の子ですか?」


「あら、外から姿が見えていたのですね。仰るとおり、その子が我が娘オウカです。恥ずかしがり屋なもので、すみません……」


 サクヤが申し訳なさそうに頭を下げたが、レンは不安そうな顔で天井を見上げた。


「あれで恥ずかしがり屋……? でも、あの子の怯え方は……」


 オウカが俺に気づかれたのが原因で怖がっただけだと思っていたのだけど、レンとしては違うように見えたらしい。


「でもこの様子だと、ここで姫様に挨拶をさせてもらうのは……無理だよなぁ」


 俺の言葉に、サクヤは少し残念そうに微笑んだ。

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