008:エアリオはこの時点でHPが5桁から4桁になってます
洞窟を脱出した俺たちは、リーリアの両親とエアリオを馬車に乗せ、外で出発の準備をしていたのだが……
『ハッ!? ここはどこ! 私は誰!!』
馬車の中からエアリオの叫び声が聞こえた。
「あー、やっと起きたか……。お馬さんが驚くから、あまりデカい声だすなよー?」
『はわわわわわっ! 魔王様っ!! ひゃあっ!』
ズデーンッ
慌てて飛び起きようとしたエアリオが馬車の中で足を滑らせて転んだ音が聞こえて、ちょっと笑ってしまったけど、同時に隣のリーリアから突き刺さるジト目が怖い。
「やっぱり魔王じゃないですか……」
◇◇
帰路は人数が多いこともあって野宿は難しそうなので、宿に泊まることになった。
だが、リーリアの両親は未だベッドの上で眠り続けている。
「このまま目覚めないとか、マジでやめてくれよ……」
『だ、大丈夫ですっ。……たぶん!』
エアリオが最後に不安な一言を付け足しやがったせいで、リーリアから殺意の波動が吹き出している。
これはイカン! イカンですよっ!
「どうにか出来ないか?」
『うーん、ちょっとやってみますね』
そう言うとエアリオが魔法の詠唱を始めたのだが、それを見たリーリアが剣を取ろうとしたのを見て、俺は慌てて手で制した。
に、睨まないでっ……!
しばらくしてエアリオの魔法が発動した。
『アウェーク!』
エアリオが手をかざすと、二人は光に包まれた。
そして、目を開けてゆっくりと起きあがる両親を見て、リーリアが感極まって飛びつく。
「お父様! お母様っ!!」
「「リーリアっ!」」
親子の感動の対面には胸が熱くなるね。
よかったよかった。
「しかし、我々は封印の地に居たはずでは……。洞窟で悪魔に襲われたのに、どうしてベッドに?」
そう言いながら、不思議そうにリーリア父がこちらを見ると……
『………』
「………」
エアリオと目が合った。
『や、やあっ!』
エアリオがぎこちない笑顔で手を挙げた。
「「………」」
……バタッ
再びリーリアの父母がショックで失神。
「うおおおおっ! 魔王の手先めえええっ!!!」
剣を構えてエアリオに切りかかろうとするリーリアを、俺とアンジュが羽交い締めにして抑え込む!
「落ち着いてえええっ!」
「離せやあああああああ!!!」
宿にはリーリアの雄叫びが響き、視界の隅に大根を持って踊る妖精が見えた気がした。
◇◇
再びエアリオの魔法でリーリア父母を起こしてもらい、今度はどうにか落ち着いてもらえたものの、未だ根本的な問題は解決していない。
「そもそも、エアリオは何で俺を魔王だと思ってるんだよ」
『そんな事を言われましても。私には、魔王様が自分は魔王じゃないと言い張る理由がさっぱり……』
話が平行線のまま進まない。
すると、アンジュが俺の手を引いてきた。
『ちょいちょい』
「なんだよ……」
部屋の外に出ると、アンジュが小声で俺に耳打ちしてきた。
『転生システムをハッキングしたって言ってたけど、何か余計なコトしなかった?』
「うーん……余計なコトねぇ……」
今一度、転生システムハッキングの作業工程を思い出してみる。
1.名前入力でバッファオーバーフローを起こして管理者権限を奪取。
2.転生先やアンジュを道連れにするように選択。
3.ステータスを最大値に書き換えて、最後の64……あっ!
「ステータスをMAXに書き換えた時に、最後の16桁の意味が分からなくて全部FFにしたわ……」
『……はい?』
「64ビットの値を全部ビット立てちゃった……」
『「………」』
そこまで言って、自分でも事の重大さに気づいてしまった。
「まさか……」
『イベントフラグ……』
16進数FFFFFFFFFFFFFFFF。
2進数11111111 11111111 11111111 11111111 11111111 11111111 11111111 11111111。
=全てのイベントフラグON。
『「ああああああああああああああああああああああああっ!!!」』
◇◇
システムコンソールを開き、アンジュと一緒にツリー階層をひとつずつ確かめると……
『あったっ!』
「イベントクリア履歴……」
恐る恐る項目をタッチすると次のページが開き、そこにはNo.01~64の数列と一緒にイベント名が並んでいた。
No.01 魔王の復活 CLEAR
No.02 目覚めた暗黒騎士エアリオとの遭遇 CLEAR
No.03 クラスタの街で大魔術師の扉を開ける NOT CLEAR
No.04 ………
No.01とNo.02はクリア扱いになっていて文字が赤色に変わっているのだが、No.03はNOT CLEARと書かれた赤文字になっており、No.04以降は「………」と伏せ文字になっているので、恐らくNo.03のフラグを回収するとNo.04以降がアンロックされる仕組みなのだろう。
「これ全部無視して世界樹を目指しちゃダメかなぁ?」
『良いんじゃない? 私たちの目的は天界に帰るコトだしさ……』
「いや、天界に帰るのはお前の目的だろ」
俺につっこまれて涙目で首を絞めてきたアンジュを無視して、ずっと画面を下にスクロールしていくと、No.64が終端だった。
『あれ? No.64だけちゃんとイベント名が書いてあるよ?』
「あ、ホントだ」
呑気にそんなコトを言う俺たちの目の前に現れたイベント名は……
No.64 全イベントをクリアすることで世界樹のターミナル起動 NOT CLEAR
再び宿屋に俺とアンジュの叫びが響いた。





