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079:国民的RPGに敬意を込めて

『この土地に放った呪いは……あらゆる災厄を呼び起こします。つまり、何が起こるか分かりませんの』


「何が起こるか分からない?」


 怪訝な顔でオウム返しをする俺を見つめながら、メリーザは詳細を語り始めた。


『当時この辺りには大きな街があり、わたくし達はそれを侵略するためにこの地にやってきたのです。ところが、偶然に勇者達一行とはち合わせてしまって……』


『はち合わせたと言うか、ボクたちがオープンテラスでお昼ご飯を食べてる時に、いきなりアイツらが切りかかってきたんだよねぇ』


「これから襲撃しようとしてる街で暢気のんきにメシ食ってるのを不意打ちされる魔王四天王って……」


「い、いくさの前の腹拵はらごしらえという奴ですよっ!」


 レンが必死に訴えかけてくるものの、他の3人の表情から察するにマジでランチタイムを楽しんでいただけみたいだ。

 改めてメリーザが続きを話そうとしたが、それより先にエアリオが口を開いた。


『んで、私達は昼ご飯のプレートを死守しながら戦ってたのに、連中は問答無用で切りかかってくるもんだから、テーブルやらイスやらムチャクチャになって……。し、か、もっ!!』


 エアリオが座卓をバンっと叩いた。


『おのれ魔王の手先め、人々の平和をおびやかす悪は許さん! ……とか言いやがったんですよっ!! なんだよそれ!! テーブルとイスぶっ壊したのお前らじゃねーか!! なんで私らの責任になってんの!!?』


「エアリオ落ち着いて……どーどーどー」


 レンになだめられて『す、すまない、私としたことが……』とか言いながらシュンとなってしまった。

 メリーザが『コホンッ』と咳払いをしてから、改めて続きを語り始めた。


『街の外れまでやってきたわたくし達に向かって、相手の魔法使いが巨大な火の玉を放ちましたの。その威力は強大で、周囲の森を焼き尽くし、このままでは街ごと焦土になりそうで……』


「おおおおおいぃっ!!! なんで勇者一行が街を焦土にしようとしてんだよっ!?」


 俺のツッコミにメリーザが溜め息を吐く。


『勇者達は人間共を護ることよりも、魔物を狩る事に夢中でしたから……。連中が通ったあとにはホーンラビットすら破片も残らないと恐れられていました』


 まるでレベル上げの為に街の周辺でウロウロしてるRPGの主人公のようだ。

 しかし、あの可愛いウサギさんをジェノサイドするようなやからが勇者とはねぇ。


『ボクの防御魔法もあっさりと蒸発しちゃってね。そして万事休すかと思ったその時、何故かそれまで気絶していたはずのメリーザが突然飛び起きて、スランダムというネタ魔法をぶっ放したんだよ』


「ネタ魔法???」


『死神であるわたくしは一般的な火属性攻撃魔法や、聖属性防御魔法などは使えませんの。死の宣告や闇属性の呪いだけというのも芸がないと思って修得していたのですが、それが最初にお伝えした何が起こるか分からない未知の災厄魔法、スランダムなのです』


 メリーザの言葉を聞いて、何故かアンジュがポンっと手を打つ。


『パ○プンテだね!』


「なんでおめーがそれ知ってんだよっ!?」


『いや、ちょっと前に天国に来た人が献上品とか言ってゲームソフトをたくさん配ってたんだけど、それが大ブームになってさ。私も仕事サボってLv99まで上げたよ! ブタ……じゃなくて、ミカエル様が風船でフワフワ飛ぶヤツの方が好きって言ったら凄く喜んでて……って、なんでタケル泣いてんの?』


「あー……うん、ファンだったからね。元気そうで何よりだよ」


 目元の涙を手で拭いつつ、再びメリーザの話に耳を傾ける。


『先ほどロロが言ったように、わたくしは不意打ちで殴打されて真っ先に昏倒していたのですが、不思議な声に起こされて。スランダムを使ってごらん、と……』


「不思議な声?」


『大人の女性の声でしたわ。どこか懐かしいような知っているような……意識が朦朧もうろうとしてハッキリ聞き取れませんでしたが』


 メリーザがウーンウーンと考え込んでいると、その肩の上にクローがピョンと飛び乗った。


『重たいですわ……』


 ジト目で肩の上を睨むも、当のにゃんこさんは楽しげにメリーザの頭をポフポフしている。


『一体なんですの……それはともかく、わたくしは声に従ってスランダムを発動し……』


『その不思議な声の主は、ボクに対してもメリーザに魔力を供給しなさい的な感じで命令してきてね。さすがに切羽詰まってたから、それに従って全力でぶっ放したさ』


 そう言いながらロロはメリーザに向かって両手を広げるジェスチャーで状況を表現した。


『……まず初めに発現したのは、あらゆるモノが落ちる呪いでしたわね』


 うわーい、受験生が聞いたらキレそうな呪いだー。


「あらゆるモノが時々って、そりゃまたアバウトだなぁ」


『街を焦土にするほど強力な炎の塊は幸いにも地面に墜落して事なきを得たのですが……』


 メリーザは溜め息ひとつ。


『でも、その後に連続で放たれた炎の飛礫つぶてが飛んできたと同時に落下の呪いは解け、続いて地面が穴だらけになる呪いが発動。皆その穴に落ちたため炎の直撃を免れたものの、目標を見失った飛礫はそのまま街に着弾し、多くの建物が倒壊。しかも、全てわたくし達のせいにされて……』


 今度は四天王4人全員が溜め息を吐いた。


「……うん、まあ、そんな外道な連中を相手にお前ら、よく頑張ったと思うよ」


『そんな外道にそそのかされて敵対しちゃったもいるけどねぇ~』


 ロロがニヤリと笑いながらレンの方を向く。


「うぅ……」


「そういやレンは最終的に魔王を裏切って勇者側に付いたんだっけな」


「ぐふっ!?」


 俺の一言がクリティカルヒットになり、レンがその場に崩れ落ちた。


『的確に古傷をえぐるとはさすが魔王様ですわ……』


「別に狙ったわけじゃないんだけどなぁ。でもゴメンな……」


「い、いえ、裏切ったのは事実ですから……」


 そのまましょんぼりしているレンを後目しりめに、メリーザは続きを話し始めた。


『結局、私たちはその場を撤退し、跡には崩壊した街だけが残った……と、そんな状況ですの。きっと、奴らも街の人達を見捨ててその場を離れたに違いありませんわ』


 それにしても、聞けば聞くほど勇者とは名ばかりの極悪人だなこりゃ。

 タンスやツボを勝手に漁るよりもタチが悪いわ。


「んで、街の跡地に今の村が作られた……と?」


『恐らく地面に墜落した火柱が間欠泉を掘り当てたのかもね。地面にたくさん空いた穴も露天風呂として活用できそうだし。そして復興で村が造られたものの、呪いをかけた当事者達は誰も居なくて、メリーザの呪いが残ったままその上に温泉宿が建っちゃった……と。そう考えると辻褄つじつまが合うかな? 何で混浴にすると呪いの効果が消えるのかはサッパリ理解できないけど』


 ロロの言葉に再びエアリオがワナワナと怒りに震える。


『じゃあ何だ、そこにいけしゃあしゃあと元凶の奴が帰ってきて、この地の呪いを封印しましょう……とか言って聖人気取りなのかよ! 本当に何なんだよ奴ら!!!』


 またエアリオがバンっとちゃぶ台を叩き、今度はリーリアに「めっ」と言われてシュンとなった。


「まあ大体事情は分かったけど、メリーザとロロが全力でぶっ放した呪いで、しかも200年間も発動し続けてるようなシロモノを、タケルが解くコトなんて出来るのかねえ?」


 アンジュが首を傾げながら呟く。


「とにかく、メリーザの呪いがどの場所にあるのかを探してみよう! この宿の敷地内だろうし、何かヒントが見つかるかもしれない」


 俺の言葉に皆が肯くと、皆で宿の中を探索し始めた。

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