078:久々にフラグ回収を目的とした話
<温泉宿スズメノオヤド・ユキンコテン 応接室>
「単刀直入に言いますと、この宿が時代錯誤にも未だに混浴なのは、呪いによるもの……厳密には、呪われた土地の上に私どもの宿を建てた状況にあります」
仲居さんの言葉に、俺たちは思わず顔を見合わせた。
『呪われた土地に宿を建てるなんて、この宿を造った人はチャレンジャーだねぇ』
呆れるようにキッパリと言い放つアンジュに対し、仲居さんは首を左右に振る。
「建てた後に判明した次第でして……。しかも創業者は熱心なラフィート信者だったらしく、呪いの事が明らかになった時はとても酷く落ち込んだそうです」
信心深い神徒がうっかり呪われた土地に宿を建てちゃいましたとか、そりゃ立場的にも苦しいだろう。
『それで、土地が呪われている事と温泉が混浴である事、それのどこが関係していますの?』
メリーザの問いかけに、仲居さんは周りに誰も居ないことを確認してから小声で答えた。
「当時、宿にやってきた旅の賢者様が呪いを封印する術を授けてくださったそうなのですが、その条件が当宿を混浴にする事だったのです……」
それってもしかして……
『その賢者とやらが宿に呪いをかけて、女の裸を見る為に混浴にしろとか言ったんじゃないの?』
アンジュの暴言キター!! 全く同じコト考えてたけど、それを口に出しちゃらめぇぇぇっ!!!
「え、そ、そんな……そんなこと…………うーん」
アンジュの暴言に対して、口では否定をしようとしているものの、仲居さんの目がやたら不自然に泳いでいる。
『ぶっちゃけ、そう思ったコトあるでしょ?』
「……はい」
アンジュの誘導尋問に折れて、ついに仲居さんは白状した。
というか、天使が人間を尋問して本音を吐かせるとか、ますます天界への帰還が遠のいた気がするのだが。
そんな感じで微妙な空気が漂ってきたところで、ルルーさんが『はいはーい! 質問です~!』と手を挙げた。
だんだんこの人のキャラクターがラフな感じになってきたけど、どうやらこっちの方が素のようだ。
『この宿が出来たのっていつ頃の話なのでしょう~?』
「当宿はこの村で最も歴史が古く、神暦183年創業と伺っております」
「『『『えっ!?』』』」
仲居さんの回答に何故か魔王四天王4人全員がざわつく。
「なんでお前らがそこに驚いてんだ?」
俺のツッコミに、4人とも腕を組んだままウーン……と考え始めた。
一体なんなんだよ……。
『えーっと、その……メリーザ、パスッ!』
『わっ、私ですのっ!? えー……随分と長い歴史があるのに宿が新しいな~…などと思いまして……』
「あ、一昨年に建て替え工事を行いました」
「はぁ、そうですか……」
何だか変な会話が繰り広げられているが、そんな3人を見かねたロロが助け船を出した。
『じゃあ、ボク達がその呪いを解けば宿代がタダになったり、色々とステキな謝礼が貰えちゃったりもするのかな?』
魔法の杖を構えてニヤリと笑うロロの姿に、仲居さんがビックリ仰天。
「おおおおおおっ! 貴女様のお姿を見たところ魔法に長けているお方のようですね!! もしや呪いを解くことが出来るのですかっ!?」
『いんや、呪いを解いちゃうのはそこに居るタケルきゅんさね』
さっきまでの雰囲気が一掃され、全員の注目が俺に集まった。
「何で俺??? 呪いとかそういうのはお前とかメリーザの方が詳しいんじゃないのか」
『例のアレで呪いの原因を突き止めれば良いじゃないか。キミなら出来るさ』
まるで大量の虫が飛来するSTGの王子様の最終形態みたいなコトを言いやがるロロに溜め息を吐きつつ、俺は仲居さんに宿へ泊まる意志を伝えた。
◇◇
「まったく、安請け合いすんなよ。まあ、困ってる人を助けるのは良いんだけどさ」
ぶちぶちと文句を言う俺に、ロロは楽しそうに笑う。
『良いじゃないか。その分しっかりとサービスしてあげるからさ』
そう言いながら俺の腕に抱きつくロロ。
……どんなサービスをして頂けるのだろうか、ドキドキしてしまうぞ。
そんな俺とロロを見て、凄く不機嫌そうなのはエアリオとメリーザのふたり。
『……さすがに魔王様に失礼だと思うぞ。それに、何だか腹立たしいな』
『ちょっと貴女、どうしてさっきから魔王様に馴れ馴れしくしてますの?』
腕を組んだまま頬を膨らすエアリオと、青筋を立てながら喧嘩腰で睨んでくるメリーザに対して、ロロはあっけらかんとしている。
『いや、ここ最近ずっと他の娘とタケルの関係が進展してるのに、二人が妙に達観してるから、そろそろボクが活を入れてあげようかと。特にメリーザはチューまでしておいてそこから先が全く進展無しとか、魔王四天王の名が廃るよ?』
『余計なお世話ですわあああああああっ!!!』
久々に死神の大鎌を構えて斬りかかるメリーザと、それを杖でヒョイヒョイと流すロロ。
「お前ら、宿の備品壊すなよー……。んで、さっきのアレは何だったんだよ」
『アレとは何でしょう?』
「いや、神暦183年と聞いてお前ら4人ともスゲー顔してたけど、どういう意味なのかなと」
俺の質問に4人は再びウーン…と唸りだした。
だが、その答えは意外なところから返ってきた。
『神暦183年は今から大体200年前にゃりね。今年は神暦388年だから厳密には205年だけどにゃ~』
クローが目線を左に向けながら答えると、俺の肩にピョンと乗ってきた。
「ってことは、この宿の土地に呪いがかけられたのは、お前ら4人が実際に暴れてた時代か。じゃあ、その時代の賢者って……」
「当時、賢者という肩書きを持っていたのは賢者ストラのみ。勇者四人のうちの一人で……女の子です」
レンの答えに何故かアンジュがガッカリする。
『ちくしょう……スケベジジイ賢者が混浴を目的でかけた呪いだった説がいきなり覆されてしまったよ。名探偵として名折れさ……』
「おめー、いつから名探偵になったんだよ……。んで、勇者パーティの賢者が温泉の呪いを見破ったのは良いとして、そこまでお前ら驚くようなコトなのか?」
そう言いながらエアリオの方を向くと、何故か目線を逸らされた。
次にメリーザの目を見つめると、これまた目線を逸らされた。
ロロも何だか落ち着かない様子で、冷や汗を流している。
……はっ!?
「まさか、呪いを掛けた犯人……お前ら?」
俺の指摘に、四天王4人全員が凄い勢いで土下座してきたっ!
『勇者達があまりにも強くて、つい咄嗟にっ!』
『あそこで使わなければ私たち全員蒸発してましたわっ!!』
「せ、せいとうぼうえい? です! 不可抗力だったんです!!」
『さすがボクの強化魔法。200年経ってもまだ持続していたとはね……』
おい、最後のヤツだけ反省してねーぞ。
「自分らが掛けた呪いを自分で解いて謝礼貰うとか、マッチポンプにも程があるわ。呪いは解くけど、礼は受け取らずに行くからな」
俺の回答にロロはしょんぼり。
「さて、どんな呪いをかけたのか教えてくれるか?」
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