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071:作者としても正直この娘の将来が一番心配です

<スタックの街 領主邸>


 コンコンっ。

 自分の部屋で休んでいると、突然誰かがドアをノックしてきた。

 ……2回ノックは珍しいですね。


「はい、どなたですか?」


『アンジュだよ~。入って良いー?』


 はてさて、アンジュちゃんひとりで私の部屋に来るとは珍しい。

 何の用事なのでしょう?

 私がドアを開けると、何故かアンジュちゃんが腕組みをしたまま仁王立ちをしていました。


『へいへい、お邪魔するよっ!』


「えっ! あのっ!?」


 私が目を白黒させている間に『とうっ!』とか言いながらベッドに飛び込んでしまった。

 どうしたものかと困惑していたところ、アンジュちゃんが寝そべったまま私を指差す。


『そろそろリーリアにも個性が必要だと思うんだっ!』


 うぐっ!


「そ、それはどういう意味でしょう……」


 私の言葉に対し、アンジュちゃんは両手を広げてプラプラと振る仕草をする。


『もし本気で言ってたら救いようのない愚か者だけど、さすがリーリアは自覚はあるようだね。表情でバレバレだよ』


 うぅ、心の中を見透かされてるようで落ち着かないです……。

 そんな私を見たアンジュちゃんが、今度は反動を付けてベッドからぴょんと飛んだ。


『従順な褐色少女に、フィアンセを名乗る御嬢様……』


「えっ!?」


『自分と同じ国に生まれた純朴少女、あらゆる姿になれる凄腕魔女(猫)、それを上回る力を持つ最強のウィザード、雪国在住の色白魔女……』


 ………。

 間違いなく他の皆さんの事を仰っているようです。


『君は彼女らにどうやって勝つつもりなのかね? さすがに地味過ぎでしょ? 今や序列的には猫以下だよ???』


「っ!?」


 ね、猫以下……?


『初めて会ったときは、異世界来ていきなり嫁候補キター!とか、何この人マジ天使なん?とか何とか思っちゃったりもしてたんだけど、みんなの優しいおねいさん♪的なポジションに落ちついた結果、ついには本家エルフまでやってきちゃって、正直このままだとマズイと思うよっ! ……って、あれ? どしたの???』


 ……わ、私は、私はっ。


「う」


『う?』


「うわーーーーーんっ!!!」


『うわぁぁっ!!!?』



◇◇



『私も言い過ぎたとは思うけど、まさかガチ泣きされるとは思わなかったよぅ……』


「いえ、私も自分で驚いています……」


 何とも言えない微妙な空気のまま、アンジュちゃんと対面しています。


『んで、恋愛成就の天使な私としては、チミにも精進してもらいたいわけなのだよ。行き倒れを助けてもらった恩もあることだし』


 チミって……。


『では質問!!』


「えっ、えっ!?」


 唐突に言われて焦る私。


『今、何歳?』


「えっ、あのっ。えーっと、21ですけど……」


『ほう、タケルと同い年だね。他のには無いアドバンテージだよ!』


 それを喜んでしまうと、ますます自分の地味さで惨めになりそうなんですが。

 アピールポイントが年齢だけって……。


『んじゃ次っ! 過去に付き合った男性は居ますか?』


「お恥ずかしながら……人付き合いが苦手でして。街の方々とはあまり交流が無くて、その、そういったことは全く無くてですね……その……」


『うん、満点だよ』


「えっ!?」


 採点基準が全く分からない。

 どうして今の回答が満点になるのですか???


『……まさか実は男性との交際経験は無いけど、同姓とはあります的な超展開は?』


「ありませんっ!!」


 そういった趣向の方を否定するわけではありませんが、人付き合いが苦手だと言っているでしょうに……。


『では最後に……あんなヤツのどこが良いの? 君くらい美人ならそこらへんのちょっと名家の男くらい簡単に落とせるでしょ? 正直なところ、アレを友人として扱うならまだしも交際相手として見るのセンスが理解出来ないんだよ』


「そ、その言い方はちょっとどうかと……。それに、どこがと言われましても……うーん」


 目を瞑り、腕を組んだまま考えてみる。

 具体的にどこかと言われても困ってしまいますね。

 皆をまとめる統率力や、謎を解く知識も凄いとは思いますが、それらが好きな理由かと言われると困ってしまうわけで。


「うーんうーん……」


 考えても全然思いつかない。

 気の迷い、勘違い、単に恋している自分に酔っているだけ?

 うぅぅ……よく分からなくなってきました。


『ちなみに君が買ってもらった指輪それだけど、私の知る限りタケルが人生で指輪を贈ったのは今のところリーリアだけだよ?』


 アンジュちゃんの言葉に、さっきまでの迷いが吹き飛んだ。

 思わずネックレスのチェーンに通した指輪を手に取る。

 自分では分かりませんが、きっと頬は紅く染まっているのだと思います。

 そんな私を見てニヤニヤと笑うアンジュちゃん……ううぅ、からかわれただけなのでしょうか。


『いっそのことソレを左手薬指にでも付けながら求婚しちゃえばー? 次は貴方の指輪を贈らせて頂けませんか? とか言っちゃってさ』


「でででででで、出来ませんよそんなことっ!!!」


 手をバタバタ振って慌てる私を見てアンジュちゃんがさらにニヤリと笑った。

 うぅぅ……。


『さて、夜遅くに邪魔してすまなかったね。私はロロのとこにでも行ってくるよ~』


「えっ!?」


 驚く私を置いてけぼりにしたまま、アンジュちゃんは風のように去ってしまいました

ん……。

 え、え、ええええ~~っ!?


「これだけ振っておいて後は放置って、そんなのアリですかぁぁぁぁっ!!!?」


 私の叫びが部屋に響いた。

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