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068:久々にメインヒロイン(仮)の話

<氷の魔女 ルルーの屋敷>


『こんな辺鄙へんぴな場所までご足労様です。でも、どうして私の屋敷へ?』


 暖炉の周りに固まった仲間たちを見て苦笑しつつ、俺は改めて向かいの席に座ったルルーさんの方を向いた。


「実は俺たちは、砂漠の街オースにあるエルダ考古学研究所で見つけた予言書の真偽しんぎを確かめるために旅をしているんだが、予言書の中に、氷の魔女のなくし物を探してあげるよう記述があったんだ。最近、何かをなくして困ってないか?」


 前に使った言い訳の二番煎じだが、何となく使い勝手が良いので再利用してみたところ、それを聞いたルルーさんが驚愕の表情を浮かべた。


『確かに私は、ご先祖様の残した秘術にまつわる書物をうっかりどこにしまったのか分からなくなってずっと探していますっ! ……でも、どうしてその事がそんな遠くの街の予言書に? そもそも、見ず知らずの私の事が書かれているなんて……それは一体どんな予言書なのですか?』


 そういえば、相手は魔女なのだった……。

 クローやロロも知的好奇心の塊みたいな性格をしていたから予想はしていたけど、ルルーさんも目をキラキラ輝かせながら俺の言葉を待っている。

 こ、ここはアドリブで……!!


「……ろ、64個の予言が書かれていたそれを開くと同時に俺の記憶に焼き付いて燃えて無くなってしまったけど、1つ解く都度に新たな予言が俺の脳裏に浮かぶという魔法の予言書だったんだ。今まで俺たちはその予言に従って、リュート王国の王女殿下を助けたり、北の海を渡ってマイア大陸で獣神ティーダの神託を授かったりしたんだ!」


 前半は嘘だけど後半は本当だぞ!

 俺の言葉に、ルルーさんは『うぁーー!』とか悶絶しているが、この反応は一体……?


『ちなみに私は、創造神ラフィート様を怒らせてアイアンクローされました』


 暖炉の前で震えるアンジュの一言で、ルルーさんは完全にノックアウトされた。


『捜し物なんてどうでもイイです! とにかく貴方達の旅の話を聞かせてください!! もういつまでも滞在しちゃってください!!! いっそのこと私と同居しませんかっ!?』


「ど、同居っ!? いやいやいやありえないでしょうっ!!」


 そういえばもう一つ忘れていたけど、このルルーさんは『変わり者』なのだった。

 俺たちの冒険譚ぼうけんたんが彼女の琴線きんせんに触れたらしく、目の輝きは最高潮に。


『じゃあ同棲でも良いです!』


 もうだめだーーー。


 ……と思ったら、俺の隣に座っていたメリーザが腕に抱きついてきた。


『この方はわたくしのフィアンセですの。貴女にはお譲りできませんわ』


『あら残念~』


 ……何だかメリーザがスゴイ一撃を放って来た。

 暖炉周辺から『アイツ、また自分だけ抜け駆けを……』とか『さらに引き離されたにゃー』とか色々聞こえてきて、さらに俺の立場が危うくなった気がしてならない。


『でも、せめてどんな冒険をしてきたか教えてくださいね♪』


 結局、ルルーの質問攻めだけでこの日は終わった。



◇◇


「質問責めラッシュはさすがに疲れた……。あのバイタリティは何なんだよ……」


『エルフと対話したのは初めてだけど、皆あんな感じなのかなぁ。もしそうならダークエルフとは一生わかり合えない気がするわー』


『あんなのどう考えてもイレギュラーでしょうに。エルフが全部あんなのだったらとっくに滅んでますわ』


「お母様も誰かと話すのは好きですが、あそこまでではないですね……」


 俺たちはルルーさんの好奇心にてられてグッタリ。

 しかも気づけば辺りは真っ暗闇で、こんな視界と全くない豪雪の中を歩いて街に帰るわけにもいかず、かといってteleportの存在をバラすわけにもいかない俺たちはルルーの屋敷に泊めてもらうことになったわけだが……。


『しかし部屋の割り当てが大変面白いコトになっているけど、君達は大丈夫なのかい?』


『大丈夫なわけねーだろ!』『当然大丈夫ですわ!』


 ロロが笑いながら挑発すると、エアリオとメリーザが正反対の反応をした。

 というのも、この屋敷は客間が3つ。


 一部屋目は一番大きな部屋なので、エアリオ、リーリア、レンがゆったりと。

 二部屋目は少し小さい部屋なので、小柄なアンジュとロロがジャストフィット。

 三部屋目はベッドが一つしかないので、俺とメリーザが同じベッドに……。



『はて? フィアンセなら問題無いのでは?』



 というルルーさんの軽い気遣いのおかげで、こんな部屋割りになりました。

 うん、これは大変マズイです。


『そもそもわたくしが魔王様と同じとこに入って、何か問題でも? ダークエルフの村でも幼子が一緒に寝ることくらいあるでしょう?』


 メリーザの冷静な指摘に、ぐむむ……と唸るエアリオ。


『それはそうなんだけど、それとこれとは違う気がするんだよっ!!』


 さすがに性知識ゼロのエアリオでも本能的に何かを察知しているらしい。


『そもそも当たり障り無く、アンジュが魔王様と一緒に寝たら良いだろっ! それなら私も文句無いよ!』


『そんなの私がお断りだよぅ! 文句アリアリだよっ!! もし間違いが起こったらどうするのっ!!!』


「ありえねーっ! お前に欲情するくらいなら犬猫相手の方がマシだわー!」


『にゃんと、ついに私もターゲットに……!』


 やいのやいの。

 騒ぐ俺たちを見ながら『間違いって何だ……???』と不思議そうな顔をするエアリオを、いつも通りリーリアが撫で撫で。


「まあ、この部屋のベッドは誰かが一人で寝れば良いさ。俺は暖炉の近くでゴロ寝……」


 そこまで言ったところでメリーザが手をポンっと打った。


『私に良いアイデアがありますわっ!』



◇◇



 というわけで、俺はメリーザと二人一緒にベッドで寝ています。

 どうしてこうなったかと言うと……


『deep sleep!!』


 エアリオは深く眠りについた。

 リーリアは深く眠りについた。

 レンは深く眠りについた。

 クローは深く眠りについた。

 ロロには効かなかった。

 アンジュには効かなかった。


 ……というわけである。


「良いアイデアとか言うから期待したのに、そのまま味方を魔法で昏倒させるとか、鬼かお前は……」


 呆れて溜め息を吐く俺に、いつも通り『死神ですわ♪』と返してくるメリーザ。

 ちなみにロロとアンジュは『ごゆっくりどうぞ~』と言い残し、スキップしながら部屋に戻っていった。

 コイツらは一体俺とメリーザに何をごゆっくりしろと言うのか。


 なお、メリーザの魔法で昏倒させられた皆は俺が抱えて各々のベッドに寝かせたので、この部屋は完全に二人きりである。


「まったく、本当に間違いがあったらどうすんだよ……」


『双方の合意があれば間違いでは有りませんわ。わたくしは責任さえ取って頂けるのであればいつでも構いませんけども』


 おいおい。

 俺がジト目でメリーザを見ると、少し顔を赤らめてから笑った。


『……魔王様のことですから、きっと私を手込めになんてしないでしょう?』


「あったりめーだ」


 ぶっきらぼうに言い放つ俺に、メリーザは後ろから抱きついてきた。


「おおおぃっ!?」


『今日はこれ以上は望みませんから、お許しくださいませ』


 ……そう言いながらメリーザは俺の背中に顔を押しつけながら腕に力を込めた。


「……ったく、今回だけだぞ」


『ふふふ、ありがとうございます』


 ぶっきらぼうに答えた俺は、そのまま強く目をつむった。



◇◇



 ……眠れねーー。

 そもそも何なんだよこの生殺し展開は。


『すー……すー……』


 後ろから聞こえてくる静かな寝息が、ますますもって俺を睡眠から遠ざけてくれる。

 最近のメリーザは『魔女っ娘コスプレお嬢様キャラ』だったから忘れてたけど、元々は妖艶なお色気担当だったわけで、そんなと密着したまま一晩耐えろとか、もはや役得というより罰ゲームだ。


「とりあえず抜け出……」


 手を解こうにも全く抜け出せない。

 おかしい、確かメリーザはSTR90しか無かったはずなのだが。

 アンジュがSTR1のくせに『想いの力』とか言って俺に凄まじい力でしがみついてきたコトがあったけど、まさか本気で非表示パラメータが存在するのだろうか?

 魔法使いの双子が自分たちを石化させて迫り来る壁を止めたアレみたいな感じで……。


 だが、このまま朝まで耐えるのは大変ツライのである。

 俺は体勢を変えながらモゾモゾと動く。


 ぬうぅぅんっ!


 起こさないように少しずつ力を入れると、ちょっとずつメリーザの腕がほどけてきた。

 よし、このまま……


『ごめんなさい……』


「っ!?」


 まさか起きてたのかっ。


「……な、何が?」


 しかし返事が無い。

 さっきのは寝言……?


『……お父様、お母様……フーリエ……ぐすっ。ごめんなさい……ごめんなさい……… …ごめんなさい 』


 ………。

 俺はメリーザを起こさないように寝返り、そっと抱きしめた。


「大丈夫だよ」


 何が大丈夫なのかは自分でもよく分からないが、俺が呟いた途端、メリーザの力が抜けて再び寝息を立て始めた。


 システムコンソールに表示されているメリーザの種族名はReaper(死神)。

 この子はヒトに対して『人間共』と蔑称を使う姿をよく見るけど、本当に最初から死神だったのだろうか……?


 俺は……この子の心を救うことは出来るのだろうか……?



◇◇



 と、そんなコトを考えていた俺だったが、いつのまにかメリーザを抱きしめたまま寝ていた。

 若干、睡眠不足気味ではあるが少しは眠ることが出来たのは幸いだった。

 ……だが!


『そして魔王様はわたくしを優しく抱きしめながら呟いたのです、大丈夫だよ……と!!!』


 メリーザの言葉に皆の黄色い声が響く。

 つーか起きてたのかよぉぉぉぉ!!!

 恥ずかしくて死にそうだよ!!!


わたくし、殿方とは……初めてでしたの』


「添い寝したのが初めてという意味な!!!」


 俺のツッコミに、メリーザはこちらを振り向き、可愛い笑顔でニコリと笑った。

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