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066:この設定が吉と出るか凶と出るか…

<暗黒騎士エアリオの封印されしほこら


「マジかよ……」


『これは……使いどころに困るにゃりね』


 呆然としながら呟く俺とクローの目の前には、謎の金属にコーティングされて黒光りする洞窟が広がっていた。


「これのどこが脆弱性エクスプロイト"解析"ツールだよ……」


 独り言をブツブツと呟く俺の目の前には、少し前にカレンさんの店で開けた箱から入手した、システムコンソールの新モジュールのUIが表示されている。


『タケルくんがその気になれば、本当に世界征服出来ちゃうかもにゃー……いたっ』


 そう言いながら肩に乗っかるにゃんこに、俺は軽くデコピンした。


「そういうのは俺の趣味じゃないよ」



………

……



「~♪ ~♪」


 今日は珍しく俺ひとりで遠出しております。

 厳密には、今まで気になりつつも後回しにしちゃっていた「とある実験」をするために独りでエアリオの封印されていた洞窟の前にやって来たのである!



脆弱性エクスプロイト解析ツール】



 こんな面白そうなオモチャを手に入れながら、一週間も遊ばずに我慢できた俺は偉いと思う。

 プレ○テ4が発売された時なんて部活をサボって買いに行ってしまい、そのまま家で三徹して教師にクソ怒られたくらいだったし、そんな俺も随分と大人になったものだ。


 ちなみに何故こんな辺鄙へんぴな場所に来ているかというと「teleportで飛べて」「なおかつ人里からとても離れていて」「万一ドカンとやってしまっても人的被害が出ない」という3つ全てを満たしている場所がココしか無かったから。


「うっし、システムコンソール起動!」


 いつもより気持ちが高揚している俺は、そのまま身振り手振りを加えて続く詠唱ワードを唱えた!



「ろーでぃんぐ、えくすぷろいとあならいざああああぁぁっっ!!!」

(※訳:Loading exploits analyzer)



 独りだからこそ出来る!独りだからこそ楽しめる必殺奥義 (…っぽい)掛け声!

 こんなの他の奴らに見られたら羞恥で死んでしまうよ。


『ブッフォア! ゲホァッ!!』


 ……何故か俺の荷物袋からせる声が聞こえてきた。

 無言のまま袋をバッと開けると……黒いケモノが入っていた。


『やあ奇遇だねタケルちん。前のなんちゃらブリット? も格好良かったけど、今回もなかなかイカすにゃりねっ! あ、いやっ、大丈夫、私は何も見てな……ぎにゃあああああっ! 袋っ! 絞まるっ!! 首がぁぁぁっ!!!』


 俺は無言のまま袋の紐に力を込めた。



◇◇



『し、死ぬかと思ったにゃあ……』


「もし他言したら、お前を……殺す」


 どこぞのウイングのパイロットのような言葉を吐きつつ、俺は気を取り直してシステムコンソールの画面をチェックする。


「丸の中に十字が書いてるアイコンは……ターゲットキャプチャかな?」


 狙撃用スコープのようなマークをタッチすると照準の色が変わったので、試しにそれを目の前の洞窟にドロップしてみた。


【Select object ID 0x0028104E】


「ふーむ……。エアリオの寝てた洞窟は、内部的にはこんなIDが振られてたのかー」


 前々から気になってはいたけど、全ての人たちにステータスが存在してたり、ダンジョンがID管理されてたりと、この世界はまるで「作り物」だ。

 単に俺が管理者権限を持っていて、そいつらが使うプログラムを使っているからそう思えるだけなのかもしれないが、だとしても……この世界は何か現実味がない。


 そう、まるでネトゲをプレイしているような……。


 実はこの世界は俺が死ぬ間際に見ている夢で、覚めると全て無くなって……。



『タケルくん』



 俺を心配そうに呼びかける声にハッとなる


『君は時々、凄く怯えた目をしているけど、何を怖がっているんだい?』


「………」


『この姿で言っても説得力は無さそうだけど、人生のうち、悲観した最悪の結果が起こる事はほとんど無いさ。今、君が恐れた事態が起こる可能性は限りなく低い。悲しむのはそれが起きてからで良い』


「………」


『……にゃりよ!』


 取って付けた語尾に思わず吹き出した。


「お前、猫キャラ歴長いんだからそろそろ慣れろよ! 紛いなりにも天才とか言われてたんだろうがっ!」


『仕方ないにゃ! 猫やってるよりもずっとずっと人の姿の方が長かったんだからにゃっ!! それに、紛いとは心外にゃーっ!』


 やいのやいの。

 一頻ひとしきり言い合いした後、ふたりで思い切り笑った。


「あー、もう! ちゃっちゃとテストやんぞっ!」


『はいはいにゃー』


 さて、改めて解析ツールを見てみると、先ほどキャプチャしたダンジョンの構成情報が表示されており、右側に表示された16進数の羅列ヘキサダンプの数字は常にグルグルと変動している。


「数字が変動しているのは、ダンジョン内のモンスターが動き回ってるからだろうなぁ」


『この世界は、こんな文字で創られてたのか……。神は凄まじい技術を持つのだな……』


「お前、また素が出てんぞ」


『……まったくビックリだニャー』


 いや、知能指数まで下げなくても。

 心の中でクローにツッコミつつ、俺はとある一文に気づいた。



g_wallMat=1; // 0.hide  1.Cave  2.SpaceColony;)  3.undefined



「隠し、洞窟、スペースコロニー、未定義……ってなんだこりゃ???」


 グローバル変数で定義してるということは相当広域を対象にしてるみたいだが……。


『これを1から別の数字に変更すれば何か起こるのかな?』


「お前、なんで数字が読めてんだよっ!?」


『そりゃタケルちんがいつもブツブツ呟きながら作業してるのを近くで見てるんだから、ふつう読めるようになるだろう? ……なるにゃ』


 いや、全然ふつーじゃねーし。

 いきなり思い出したかのように天才設定を素で出されるとビックリしちゃうよ。


「まあ、わざわざ御膳立てしてくれてるわけだし、2にしてみるか……」


 そして俺は、システムコンソールに表示されたマップ構成情報と思われるコードを1から2に修正し、画面下のRebuildボタンをタッチした。



……

………



 んで、今に至るわけだ。


「0はhide……指定すると隠しダンジョンになるパターンかな。奥の方に居るヤツを8ターン以内に倒せば仲間になりそうだ」


『よくわからないけど、そう遠くないうちにコレを使ったフラグ回収もすることになるかもにゃりねぇ』


 まあ、わざわざ神様まで登場させた一大イベントだったし、これでこのツールがフラグ回収に一切無関係だったら、その方がビックリだよ。


「さて、遅くなる前に皆のところに戻るとしますかね」


 そう言いながら俺は再びダンジョンの構成パラメータを1(cave)に戻した。


「……あと、例の件はくれぐれも内密にな。頼むぞ」


『大丈夫にゃりよ。私も小さい頃は使えもしない魔法を叫びながらポーズしていたものさっ!』


「ぬっころおおおおおおおぉぉぉっ!!!」


 俺は黒いにゃんこの入った袋の紐を再び引っ張った。

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