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065:私を雪国に連れてって

 クラスタの街での一件を終えた俺たちは、再びトープの村に戻り、そこから西に向かって歩いている。


「次のフラグ回収は……氷の魔女のなくし物を探すようなコトを書いてあるんだけど、氷の魔女って何だろなぁ」


『しばらく進むと降雪地帯に入るから、そこに居るのではないかな?』


 ロロがさらっと凄いことを言ってくれた。


「え、降雪……? だって、この辺ふつうに気温高いし、大して標高も高くないのに、なんで???」


 確かに、システムコンソールのマップの表示もこれから向かうエリアが白色で塗られており、明らかに雪が降りそうなデザインになっている。


『まあ、見てのお楽しみだね』


 そう言いながらロロはホウキに乗ってフヨフヨと浮いている。

 それにしても……


「……空飛ぶホウキ、いいなぁ」


 俺がボソッと呟くと、ロロはニヤニヤしながら俺の横に並んだ。


『ヌフフフー、おねいさんと二人乗りするかい? ボクの後ろに座って腰に手を回すと面白いモノが見えるよ。むしろ、そのまま服に手を入れたって良いんだよ~?』


「魅力的なお誘いだけど遠慮しとくよ……」


 ニヤニヤ笑ったままのロロの首には死神の大鎌デスサイズが突きつけられ、そこにはギリギリと歯軋りを立てる、殺意の波動に目覚めたメリーザが……。


『油断も隙もありませんわね……。そもそも、そういうお色気路線はわたくしの専売特許ですの。貴女はそういう話とは無縁でしょう?』


『なあに、ボクもお年頃さ。そろそろ殿方を見定めておくのも良いだろう? 魔王様の名を継ぎ、能力も高く、頭も良い。しかもメリーザが嫉妬でプルプルする姿まで見られるなんて、タケルは最高の優良物件だよっ』


『このクソ外道がああああっ!!』


 そのままメリーザとロロの殺陣たてが始まった。


「どうでも良いけど、本人の前で優良物件とか言うのはどうかと思うよー?」


 俺は棒読みで突っ込んでおきました。


 ◇◇


 しばらく進むと、岩山にぽっかりと大穴が開いている場所に到着した。


「険しい岩山を越えなくて済むように、岩をくり抜いて真っ直ぐ移動出来るようトンネルを掘ったのか。重機も無いのに、一体どうやって掘ったんだろうなぁ……」


 俺が何の気なしに言うと、ロロがウンウンと頷いた。


『これはマインスピアーという火属性魔法で空けた穴だね。岩山を一撃で貫くボクの姿を見て、領主と騎士たちが尻尾を巻いて逃げ出したんだ。いやぁ、懐かしいな~』


「お前かーーーいっ!!」


 さすが魔王四天王最強だけあって、ロロの火力は規格外過ぎるな。


『ふーむ、マインスピアーか。覚えても良さそうにゃりねぇ』


 メリーザの肩の上に乗っかったクローがトンネルを見ながら呟いた。


「クロー、こんなスキル覚えられるのか???」


『私を誰だと思ってるにゃりか? 天才魔術師キャラが被ってしまい、猫の姿以外のアイデンティティを失って正直落ち込んでいると言っても、一応は天才魔術師クロー様にゃりよ!』


 さすが、かつて天才と呼ばれただけあって、冷静な自己分析だ!

 だけど、聞いてて不憫すぎて泣きそうになるし、言ってるクロー自身も涙目になってて、見てられないよぅ!


『ふむふむ。このネコさんの魔力の質は……なるほど、確かにマインスピアーくらいなら余裕で使えるだろう』


『当然にゃっ』


 感心するロロに対し、クローは二足立ちで胸を張る。


『マインスピアー、教えようか?』


詠唱ワードだけお願い出来る? 後は自分で研究してみるよ』


『ははは、さすが天才魔術師だね』


 クローはうっかり素で喋ってるし、ロロも楽しそうだし、何だか通じ合うものがあるようだ。

 そんなコトを話しながらトンネルを歩いていると、奥の方に光が見えた。


「おっ、出口が見えてきたな。……それにしても、これだけの長さのトンネルを一撃で掘るとか、ロロの全力はどんだけ強いんだよ」


 そう呟く俺の言葉に、ロロは苦笑する。


『勇者達は、そんなボクの魔法をあっさりと弾き返しちゃったわけだけどね。あんな一方的な負け試合は二度とやりたくないよ』


 うーむ……。

 実は勇者は異世界人で、チートを使って魔王軍をフルボッコにした……みたいな王道パターンだったりして。

 だとしても、今度は俺がチート持ちなのだから、万が一、俺を魔王呼ばわりして襲ってくるバカがいても返り討ちにしちゃるっ!


「少なくとも今の俺たちがそういう化け物連中と敵対するコトは無いだろ。まあ、もしもそういうヤツらが現れたら、今度は俺が皆を護ってやるさ」


 俺の言葉にロロは一瞬目を見開き、それから目を細めた。


『うん、宜しく頼むよ』


◇◇


 というわけで、トンネルを抜けるとそこは……雪国でした。

 話しには聞いていたものの、まさか豪雪とは……。


「つーか、何でトンネル一本抜けただけでいきなり極寒の大地になるんだよっ!!」


 俺がツッコミながらリーリアの方を向くと、首をブンブンと左右に振った。


「私にもサッパリ分かりません~~。それに、この白いのは何ですかーーーっ!!?」


 ……おや?


『リーリアは南西の生まれだから、雪を見たことが無かったんだなー。私もダークエルフの森に住んでた頃は一度も見たこと無かったし』


 エアリオがあっけらかんと言う。

 どうやら今まで旅をしてきたエリアは冬に降雪しない地域だったみたいだ。


「だとしても、トンネル一本抜けて気候がいきなり変動するのはおかしいだろっ! 徒歩で歩ける距離だぞっ!?」


わたくし達としては、これが普通なのですけども……。魔王様の居た世界とは仕組みが違うのかもしれませんわね』


 仕組みが違うと言っても暖地がいきなり寒冷地に変わるとか、これじゃまるで一昔前のRPGのマップ切り替えだよ……。


「ま、まあそれは後で考えるとしてっ! とりあえず今は、薄着のヤツは風邪を引かないように何か羽織っ……」


 俺が振り返ると、自分の羽を抱きしめたまま青白い顔でブルブルしているヤツの姿があった。


「………」


『こ、ここここ、この天使服はあああぁぁ! 私のアイデンティティぃぃぃ!  ……へっくしょーいっ!!』


 俺は無言で毛布を被せてあげました。

 他に寒そうなヤツは……


『にゃあああああああ、猫の身体にこの寒さは命の危険を感じるにゃああああああ!』


 クローが今まで見たこと無いくらい高速に振動していた。

 そういや、猫はもともと暑い地域の動物だっけか。


「しゃーねえなぁ……」


 俺はクローを布袋で包んで、抱っこの姿勢で持ち上げる。


「これで大丈夫か?」


『はうぅー、タケルきゅんにお姫様抱っこされたまま逝けるなんて、私には一片の悔いも無いにゃー……ガクッ』


「……まあ、それだけバカ言える元気があれば大丈夫だろ。よいしょっと!」


『にゃうっ!』


 俺はクローの入った袋を胴着のように背負い、システムコンソールのマップを開いた。


「ここから南東に進むと街があるみたいだし、そこをマッピングしたら宿に泊ま……」


「実家に帰りましょう!」

『リーリアちゃんちに帰るにゃ!』

『ガタガタガタガタ……』


 寒さに弱い二人と一匹の反対意見により、結局「雪国の町 サンタール」に着くや否やteleportコマンドでリーリアの実家にとんぼ返りという意味不明な旅路になりますた。


 雪の宿とか、風情があって楽しみだったんだけどなぁ……ぐすん。



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