063:ノクタ送りにならないように言葉を選んだ回
何故かアンジュとロロのタッグで、ローリさんの恋愛を成就させることになってしまったわけだが、はてさてこの二人は一体何をやるつもりなのやら……。
「余裕っち! ……ってお前らはどこぞのサカザキさんですか」
『意味がよく分からないけど、ロロのスキルと私のラブリーアローを組み合わせることで、確実にこのミッションをコンプリート出来るよっ』
「ら、らぶりーあろー……」
『愛の矢さっ……って、何だよその目は。スキル名を考えたのは私じゃないんだから、神様に文句言ってくれよぅ!!』
「いやいや、すまんな」
スキル名もだけど、アンジュの口からラブリーとか言う単語が出てきたコトに違和感が酷くて絶句しただけなんだけどな。
コイツの場合『デストロイアロー』とか、『デッド・ストレイピング』とか、そんなスキルの方が似合いそうでならない。
『そしてボクが使うスキルは、ブレーンウォッシュっていってね……』
おおおおおおいっ!!
「みなまで言わなくても、そのスキル名で何を狙ってるのか理解したよ! ったく、なんてヤツだ……」
俺の言葉にロロはニヤリと笑う。
ブレーンウォッシュ……つまり「洗脳」ですよ!
意中の男を洗脳して愛の矢を撃ち込んで恋愛成就……って、手段を選ばなすぎィ!!
俺の表情から心中を察したのか、アンジュは溜め息を吐いた。
『正直な話、そこの合法ロリ娘に普通の成人男性を惚れさせるなんて、正攻法じゃ絶対ムリだよ。例えるなら……私がタケルに惚れるくらい困難だね』
「そのセリフそっくりそのまま返すよ、このクソ天使め」
俺とアンジュが青筋を立てながらにらみ合う姿に、仲間たちが微笑む。
『ふむ、ボク的にこの二人は何だかんだで良いコンビだと思うのだが』
「ケンカするほど仲が良いと言いますものねー」
「私はひとりっ子なので、こういう兄妹に憧れます。まあ、タケルさんとアンジュさんは血縁は無いみたいですけど、ステキな兄妹ですよねっ!」
やめてくれリーリア、その言葉は俺に効く……。
◇◇
というわけで俺たちはローリさんの意中の相手が暮らす家の近くにやってきた。
家の雰囲気から察するに、極々普通の平民といった感じだ。
経済力で言えば、ローリさんの鼻息で家が吹き飛ぶくらいの差がありそうなので、この惚れられた男はなかなかの玉の輿をゲット出来るチャンスに恵まれたと言える。
そんな男の家を見て、アンジュが口を開いた。
『ここがあの男のハウスね』
「……アンジュよぅ。やっぱお前、結構サブカルに詳しいんじゃね? いちいちセリフがどっかで聞いたことある気がするんだけど」
俺のツッコミに首を傾げながら、アンジュは弓に矢をつがえた。
『じゃあローリは、あの家のドアをノックしてターゲットを誘き出して頂戴!』
「お、誘き出すっ!?」
アンジュの指示にローリさんが目を白黒させている。
「俺たちは慣れてるから良いけど、ふつうのヒトはお前の暴言聞いたら驚くから口を慎めな~」
俺はこんな顔('・Д・`)で諭すものの、内心諦めてます。
気を取り直してローリさんが家のドアをノックすると、しばらくしてガチャリとドアが開いた。
「……?」
現れた男は……うーん、確かに超身長でイケメンだ。
この男に対してウチの子たちの反応は……と思って横目で見ると、メリーザは鼻で笑った。
『少しばかり容姿が優れている程度では、私たちの心を射止めるには全く足りませんわ。やはり魔王様のように聡明でなければ』
そう言いながら微笑む姿は、まるで女神様のようだ。
ありがとう、正直うれしいです。
『容姿……アレ良いかぁ? 私の好みじゃねえなー。殴ったら折れそうだし』
エアリオの好みの基準は少しズレている様子だ。
君のベンチマークだと、ゴーレムとかデュラハンとかが高いスコアが出ちゃうよ。
……とりあえず気を取り直して、俺はロロとアンジュを注視する。
『いくよっ! ブレーンウォーーッシュ! ローリさんに惚れろォっ!』
ビビビビ……とレトロアニメのような描写のビームが飛んでいくと、男に直撃した。
『続けて、ラブリィィィィアローーーーー!!』
そう言って先っぽがピンクのハート型になっている矢を射るアンジュ。
『我が恋の矢よっ! 若き男女に組んず解れつをっ!』
「言い方ァァァッ!!!」
ちなみにそれの本来の意味は「取っ組み合ったり離れたりする」だからね!
誰がどこでどんな取っ組み合いをするのか、深く考えたら負けだよっ!!
そしてアンジュの矢は、DEX1とは思えない精度でまっすぐに男の胸に突き刺さり、男はガクリとうなだれた。
『幼子がドアを開いて油断したところにスキルを浴びせ、硬直するや否や矢による狙撃ですか……。私、これと似たような手口を知ってますわ……』
「言うな……」
俺とメリーザが何とも言えない顔をしている中、アンジュとロロはガッツポーズをしている。
『さあこれでどうだっ!!』
『いっけえええぇぇーーっ!!』
緊張の瞬間っ!
……いや、正直ここまで御膳立てしておいて失敗する理由は無いんだけど。
「あっ……あっ……ぅ……」
ローリさんは真っ赤な顔でイケメンの前で硬直している。
「……?」
男は相変わらずの無言だ。
「伝えたい言葉がありますっ……!」
ローリさんの言葉に、物陰に潜む一同は興味津々だ。
何だかんだ言いながら、人の恋路は気になるものなのだなぁ。
しばらく無言のまま時間が過ぎ、それからローリさんは覚悟を決めた表情で口を開いた。
「お名前を教えてください!!!」
……はい?
予想外の言葉に、俺たちは全員固まった。
『そういえばローリさん……一度も相手の男性の名前を言いませんでしたわ』
「つまり、あの方は……名前すら知らない、見た目だけがタイプな男性……」
「タケル様! これが恋愛なのですかっ!? 私、よくわかりませんっ」
一同がざわめく中、ローリさんの目の前の男は口を開いた。
「テル……です」
ああ、豆腐屋の……。
という分かりにくいネタはさておいて、これで相手の名前も判明した!
次はどうするローリさんっ!?
「これ、受け取ってくださいっ!!」
その手には便せんがひとつ。
「あ、うん……」
ローリさんがテルさんに手紙を渡すと、顔を真っ赤にしたままダッシュで去って行ってしまった。
……俺たち、置いてけぼりです。
呆然と立ち尽くしていると、システムコンソールが自動で立ち上がってきて、メッセージが表示された。
FLAG No.20 天才画家の子孫の恋愛を成就するべし! CLEAR
「えっ、これでクリア!? マジでっ!!?」
あまりの展開に、一同は困惑したままトボトボとローリさんの屋敷に向かって歩いて帰った。
◇◇
『文通のお願いをしただけぇっ!?』
アンジュの叫びに、ローリさんはニコニコ笑顔で頷いた。
「はい。顔を見るとどうしても緊張してしまうと思ったので、これからゆっくりと互いの事を知ることができればと思うのですよ~☆」
うーん、ローリさんは意外と真面目で奥手だったんだなぁ。
『あのまま部屋に連れ込んで押し倒してもうまく成せたというのに、人間の考える事は分からんなぁ。目的は番いになることだろう?』
えーっと、ロロさんは危険な発言を自重してくださいねー?
『なんで恋愛成就が目的なのに押し倒すんだ?』
「ふふふ、なんででしょうね~?」
いつも通り不思議そうに首を傾げるエアリオを微笑みながらリーリアがナデナデ。
「まあ、人の恋路は人それぞれなんだよ、うんうん」
綺麗にまとめようと俺が適当なコトを言うと、何故か視線が俺に集中してきた。
え、どういうコト???
「ところでタケルさんは……」
『私達の中で……』
『一番タイプなのは誰なのかなーって?』
リーリア、エアリオ、メリーザが結託して恐ろしいコトを聞いてきた。
え、え、え、えーーーっと……。
「し、システムコンソール起動ぉぉぉ!!」
「『『逃がしませんよっ!!』』」
クラスタの街に俺の悲鳴が響いた。





