059:たまには旧友と語らう話も良いよね
<山頂の村 トープ ……の宿屋>
『やあ、三人とも久しぶり』
部屋で優雅に紅茶を嗜む赤髪の少女を見て、四天王トリオは固まった。
『ああ、久しぶ……り?』
エアリオは怪訝そうな顔でロロを見る。
『えーっと、お久しぶりです……かね?』
レンは返事をしながらもチラチラとメリーザの方を見ている。
『……貴女、ぶっ殺しますわよ?』
メリーザはロロの姿見るや否や大鎌を突きつけて一触即発ムードに。
それもそのはず、だってロロの姿は……
『キミが白ネコなピンク魔法少女と聞いてね。ボクも対抗させてもらったってワケだ。どうだい、似合ってるかな?』
……黒ネコなゴスロリ魔法少女の格好なのだから。
『魔王様っ!!』
「おおおぉぉ、俺は止めたぞっ!?」
メリーザにキッと睨まれてたじたじになる俺。
『おや? キミはタケルを魔王様と呼んでいるのかい。でも、ボクの格好が気に入らないからって魔王様を睨みつけるのはどうかと思うよ? そんな態度を取るなんて、魔王様直々にお仕置きしてもらう必要があるかもしれないね』
『魔王様を呼び捨てにっ!? うらやまけしからん……じゃなくて、貴女こそ魔王様を呼び捨てだなんてっ!』
だが、メリーザとロロが言い合う最中、一人だけモジモジとしているヤツが居た。
『お仕置き……一体どんなコトを……ドキドキ』
何故か口論とは無関係なエアリオが、顔を赤らめながら俺をチラチラ見ている。
え、君そっち方面に目覚めちゃうの?
ちょっとアブノーマルな感じになりつつあるエアリオを不安に思いつつも、今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうな目の前の二人の方が大問題だ。
「いやはや……。まさかメリーザとロロがここまで犬猿の仲とはなぁ」
呆れる俺を見て、レンが溜め息を吐いた。
「こんなのまだ序の口ですよ……。昔はメリーザが怒って大鎌を振り回して周囲のモンスター達が巻き込まれたり、ロロが巨大な火の玉を落として辺りが焦土になったりと、とても大変でした……」
スケールのデカい喧嘩だなぁオイ。
俺がジト目でロロの方を見ると、眠そうな目のままニヤリと笑った。
『まあそれは冗談として』
ロロは指をパチンと鳴らすと元の黒装束姿に戻り、再び優雅に紅茶を一口。
『再び生きて貴女達に会えて嬉しいよ』
今度は素直な言葉を口にしてから少しだけ微笑んだ。
◇◇
『大体の話はタケルから聞いた。魔王様が200年前に滅びたのは残念だが、そもそもボクが負けた時点で魔王軍の火力は失われたも同然だったし、負けて当然だったんだ。あの勇者達は化け物だったよ』
魔王の家来が勇者を化け物呼ばわりとは、何だか凄い話だな。
「お前が化け物呼ばわりって……。200年前の勇者ってどんな奴らだったんだ?」
俺の質問に、ロロは苦笑しながら口を開いた。
『まず、ボクたちは四天王とは言うものの、能力や得手不得手がてんでバラバラな烏合の衆だったのさ。魔王様はメリーザ、エアリオ、レン、そしてボクの順で上下を決めていたけど、ボク達はいつも対等だったし、甲乙付けがたかったと思うよ』
『私が最弱扱いなのは今考えても不服ですわっ』
ぷんぷんと怒り顔なメリーザに、一同は笑った。
だが、確かにレンと初めて出会った時はレンひとり相手にエアリオとメリーザで二人がかりだったと考えると、あながちその順位付けは間違っていないのかもしれない。
ロロに至ってはINT999/DEX999のチート級の砲台なのだから、普通の相手では近づくことすら出来ないだろう。
そんなコイツらを相手に勝ってしまった勇者パーティって一体……。
しばらくして再びロロが口を開いた。
『200年前に突如世界に現れた勇者一行は、それはもう強かった。メリーザを浄化魔法の一撃で消滅させてしまうくらいにね』
「えっ!?」
俺がメリーザの方を向くと一瞬震え、そのまま俺に抱きついてきた。
そのときのことを思い出して怖くなったのだろう。
『ちなみに、これはメリーザの知らない話だけど、消滅したキミに必死で蘇生魔法を掛け続けた人間が居たよ?』
『……え』
『黒髪の魔法使いでね。悲鳴を上げながら消えたキミを見て、逆上しながら勇者パーティのプリーストを杖のフルスイングで薙ぎ倒しちゃって、そりゃもう驚いたね。それから、手持ちのマジックアイテムを片っ端から砕きながら何度も蘇生に挑み、最後には何と自分の魂を媒介に使って蘇生を試みて……まあ失敗しちゃったんだけど。でも、自らの命も省みずにメリーザを救おうとする姿に、ボクはとても感銘を受けたんだ。今ボクが着ているローブは、その魔法使いが消滅した跡に残されていたものでね。その人の生きた証として、どうしても残しておきたくて……言わば形見みたいなもんさ』
そう言いながらロロは着ているローブをヒラヒラさせた。
『その方は……黒髪の……女性でしたか?』
『うん? そうだけど、知り合いだったのかい?』
メリーザはロロのローブにしがみつくと、人目もはばからず泣き出してしまった。
それを見たクローはメリーザの肩にピョンと飛び乗ると、いつも通りポフポフと頭を優しく撫でた。
『勇者、ソーサラー、プリースト、ホークマン。つまり、魔王様含む我ら全員、たったの4人相手でコテンパンにやられてしまったわけさ。……まあ、レンは途中で勇者側に付いちゃったけどね』
ロロが少し冷たい口調で言うと、レンがビクッと震えた。
『怯える必要は無いよ。その辺の話もタケルからちゃんと聞いてるからね。まだ納得が出来ているわけではないけど、ボクが同じ立場になった時に魔王様に忠誠を誓えたかと言われると、正直自信は無いねっ』
今度は少し茶化した言い方でレンに優しく微笑んだ。
『ボクはそこから先は知らないけど、そこは最後まで戦い抜いたエアリオが一番詳しいんじゃないかな?』
急に話を振られたエアリオが焦りながらキョロキョロしている。
『……えっ、お仕置きは?』
この子はもうだめだーーー!
『……正直あんまり思い出したくは無いよ。奴らは人間達から見て勇者だっただけで、私にとっては正義という大義名分で仲間達を殺しまくった悪党だし……それに……』
エアリオがチラリとリーリアの方を見た。
……あっ、そうかっ!
「エアリオを封印したのはリーリアの御先祖様か……」
「っ!!」
今までなるべく考えないようにしていたけど、リーリアは勇者たちの末裔……つまり、この四人の敵だった人間の子孫なのだ。
悲しそうな顔で俯くリーリアを見て、エアリオは……笑った。
『リーリアが気に病むことは無いよ。単にお前の先祖と私達の目的が違って、それが原因でケンカしただけの話だからさ。それに、なんだ。えーっと私は……お前と……仲良くしたいと思ってるよ』
ちょっと照れながら呟くエアリオに、リーリアは泣きながら飛びついた。
突然のことにエアリオはしばらくアワアワしていたが、それからエアリオは優しい笑顔でリーリアをなだめていた。
いつもとは逆の姿に、何だかこそばゆい気持ちになる。
そこで俺は四人に問いかけることにした。
「……これからどうしたい?」
自分でも何でこんなコトを聞いたのかは分からない。
もしかすると、何かを不安に感じていたのかもしれない。
……でも、大丈夫だという確信もあったのだと思う。
『私は魔王様と共に行きますよっ! 一生……どこまでもっ!!』
『改めて言いますけど、私の唇を奪った責任を取って頂きますわ』
「この二人が何をしでかすか分かりませんし、放っておけませんよ……」
『せっかく懐かしい友人たちと再会したのに、すぐに別れたら勿体ないだろう?』
ほらね?
コイツらはもう大丈夫だ。
「ったく、ついに8人の大所帯パーティになっちまうとはなぁ。しゃーねぇ、お前ら全員まとめて面倒見てやるから付いてこい」
俺は嬉しくて泣きそうになるのを我慢しながら、ぶっきらぼうに応えた。
Next FLAG ..
No.17 トープ村で生贄の巫女を救出せよ!





