053:可憐庭、危機一髪!!
何だか全然関係のないところで妙に疲れてしまったが、俺はカレンさんに本題を切り出した。
「セイントブラッドで働いているフィーネさんから、獣神ティーダについて知りたいのであれば、ここに来れば良いって紹介されたんですけど」
俺の口から「フィーネと」いう名前を出した瞬間、青ざめながらビクッと震えるような反応が見えたのは何故だろう……。
だが、すぐに営業スマイルに戻ると、首を傾げながらカレンさんは口を開いた。
「どうして皆さんは獣神ティーダに会いたいのですか? 言っては何ですけど、この世界において最もメジャーな神様は創造神ラフィート様ですし、ワラント国以外で全く崇拝されていないマイナーな神様を追いかける理由が分からないのですが……?」
うーん、確かにごもっとも。
本当の理由はフラグ回収のためだけど、さすがにそれは言えないからなぁ。
よし、メリーザの演技力に期待して……。
「実は、ここに居るメリーザが獣神ティーダを信仰してるんだよ」
メリーザがチラリとこちらを見たが、アイコンタクトで俺の意図を察したらしく、すぐに正面を向いた。
『ええ、その通りですわ。私の姿を奇異の目で見る人間も居りますが、獣神ティーダ様への信仰心は一時たりとも忘れたことはございません。だからこそ、普段からこの姿で日々過ごしておりますので、是非とも獣神ティーダ様から神託を賜りたいと存じます』
淡々と話すメリーザに、カレンさんは「ほほぅ~」と感嘆の声を上げた。
俺はむしろ、咄嗟にそのアドリブを返せたメリーザに感動してるよ!
無茶ぶりしておいて何だけど、この子マジでスゴイぞ……。
『ふーむ、事情は分かりました。それじゃギブアンドテイクということで……』
そう言いながらカレンさんは店の奥に入っていく。
しばらくゴソゴソと物音がした後、戻ってきたカレンさんは両手で箱を抱えていた。
「この箱には強い魔法が掛けられており、獣神ティーダの神託が封じられているとされています。仕入れてみたものの、当店としては真贋の分からぬものをお客様に販売するわけにはいかなくて……。恐らくフィーネさんがココに来るように言ったのは、これを開けてみてはどうかという提案だったのだと思いますが、いかがでしょう?」
なるほど、確かに神託が込められた箱を開けることが出来れば「獣神ティーダにありがたいお言葉を賜る」というフラグ回収条件を満たせるだろう。
ついでにこの店の不良在庫の真贋も明らかになり、俺たちがこの箱を購入してしまえば全て解決というわけだな。
ただ、全て解決ではあるのだけども……。
「このタイミングで唐突に出てくる怪しい箱に、強い魔法……ねぇ」
『この展開、すっごく既視感があるよぅ……』
俺とアンジュが嫌そうな顔で箱を受け取った瞬間、案の定システムコンソールが自動起動した。
『フラグNo.23回収イベントが受理されました』
音声アナウンスと共に空中にスクリーンが投影されると……20:00……19:59……19:58……うわーい、なんだか凄く久々にカウントダウンを見た気がするよ!
『自立自爆が承認されました。天界関係者は直ちに避難してください』
「えっ、えっ、何コレっ!? ジリツジバク???」
当然ながらカレンさんは謎のカウントダウンを見てアワアワしている。
まあ普通の人の反応はそうだよね。
「えーっと……あと20分弱で問題を解かないと~……」
「解かないと……?」
うーん、何て言えば良いのやら。
うっかり「爆発して店が吹っ飛びます♪」とでも言おうものなら、再びカレンさんが倒れてしまいかねない。
ここは慎重に言葉を選ばないと……。
『この箱がドカーンってなって、この店がドカーンってなるっ!』
言葉を全く選ばないアンジュが、これ以上無い最高の伝え方をしてくれた。
「お店がドカーン……?」
『ドカーンだね』
「お店、無くなっちゃう……?」
『跡形も無く!』
カレンさんはしばらく固まった後、まるで劇場版のシンジのごとくアンジュの首を絞め始めた!
『ぎ……ぎぶぎぶっ!!』
「ふっざけんなよお前! この店まだ返済残ってんだぞ!! つーかあのクソ女神、騙しやがったなクソったりゃああああああぁっ!!」
「おおお、落ち着いてください~~~っ!!」
だんだん顔色が大変な感じになっていくアンジュと、それを救出しようとアワアワしているリーリアを後目に、俺は問題をじっと眺めた。
『問題 次のコードを解析し、実行しなさい』
[28 36 32 B0 B9 B2 90 34 34 BA 10 36 B2 97]
制限時間は残り17分……さて、どうしたものかねぇ。





