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049:黒猫のレンとか、紫髪の白猫とかいろいろマズイ気がする

<獣人の聖地 ワラント国 …の港>


 幸い、リヴァイアサンに船が襲われて召喚士の女の子が海に投げ出されるようなイベントが発生することもなく、俺たちはワラント国に到着したわけだが……。


「いらっしゃい! ワラントの城下町に入るために獣人衣装は必須だよっ! 短期滞在者向けの貸衣装もあるよっ!! さあさあさあっ!」


 これは一体……?


「あの、どうして衣装が必須なのでしょうか?」


 リーリアが恐る恐る尋ねると、おっちゃんの目が光った。


「そこのお嬢さん、よく聞いてくれたっ! ワラントの民は大昔から獣の姿を模倣しながら獣神ティーダ様をたたえていてね! 今から数十年前に獣神ティーダ様がこの地に降臨なされてからは、更に国教としての地位を確固たるものにしたわけだっ!」


 おっちゃんの話、回りくどいなぁ。

 先に本題を話してくれねーかなー。


「んで、獣人コスプレしないと処罰されるのか?」


「いんや。獣神ティーダ様は別にそんな事を強要はしないさ」


 んんん???


「だったら何で必須……?」


「すごく場違い感にさいなまれるからだ! 普通の格好だと浮く!」


 ………さいですか。


「おっと、呆れた顔をしているがアンタ! この国で獣人姿にならないということは、舞踏会にドレスコードを無視してパジャマで参加するようなもんよっ! 見ず知らずのガキンチョから、ねーねーどうしてそんな格好してるのー? チョーウケるんですけどー? とか言われながら囲まれたりするんだぜ?」


 うっ、何だか凄くイヤな感じだ!


「……一番シンプルなヤツでお願いします」


 あっさりと折れた俺は、この国で行動して目立たない程度で、なおかつ自分が着て恥ずかしくないものを選定してもらった。



◇◇



 というわけで俺は犬、リーリアはウサギ、エアリオはコウモリ、レンは黒猫、クローは……着替える必要無いよね、猫だし。


「レンで黒猫って、色々と問題ある気がするけど大丈夫なのかな……」


 俺の呟きを聞いて、レンは首を傾げた。


「はい? これ、変ですかね???」


「あ、いや。そういうわけじゃないんだ。気にしないでくれ」


 世の中には色々あるんだよ、うん。


『私とキャラを被らせてくるとは、ヒロイン枠だけに飽き足らず、マスコットキャラ枠まで狙ってるにゃりねっ!? レン、恐ろしい子っ!』


 すごく……どうでもいいです!


 ちなみにアンジュは『この姿は私のアイデンティティー!』とか言ってて面倒だったので、そのまま放置しておいた。

 背中にデカい羽が付いてるし、ニワトリというコトにしておこう。

 三歩歩いたら忘れるイメージにもピッタリだ。


 だが、問題なのはあと一人……。


『うううううううぅぅぅーーっ!』


 メリーザの踏ん切りが付かないようだ。


「笑ったりしないから、好きなヤツ選べよ……」


『そうじゃありませんのっ! 魔王様に賜ったこの服を脱ぐ行為そのものが、許し難い屈辱なのですわっ! ……この国の規模なら、わたくし一人で制圧できますわあぁぁっ!!!』


「服を着替えるのが嫌で国を滅ぼすとか、斜め上過ぎるわっ!」


 俺のツッコミに対して、涙目になりながら白ネコ耳と白ネコ尻尾だけを魔女っ娘衣装に装着するメリーザ。


『これで文句ありませんわねっ!』


 メリーザにキッと睨まれ、おっちゃんは無言でコクコクと頭を縦に振った。

 うーん、変な客に絡まれて災難な日だったね……。

 と思っていたら、今度はメリーザが俺を睨んできた。


「ななな、なんだよっ?」


『ににににに、似合いますかっ!?』


 何だかここ数日、メリーザのキャラが崩壊しつつある気がする。

 ここでそれを突っ込むと面倒なコトになりそうなので、俺は率直に褒め称えることにした。


「ああ、超似合ってるよ。ワラント以外でも通用するくらいパーフェクトだ。お嬢様言葉で紫髪に白猫の耳とか色々キャラデザ的にマズい気がするけど、それを差し置いても可愛いよ」


『は、はうぁっ!!!』


 俺の言葉にメリーザはその場に崩れ落ち、何故か「ちょろイン」という言葉が俺の頭をぎるのであった……。



◇◇



 そんなこんなで港から十分ほど歩いて、俺たち一行はワラント国の城下町に到着した。


「獣人の国って言うから原始的な暮らしかと思いきや、意外とふつうの街だな」


「聞いた話によると、数十年前まではわらや竹で出来た家に暮らしていたそうですね。今では文化保護目的で残された建物以外は近隣諸国の技術を取り入れて、木造や石造りの家も増えてきたそうです」


 まるで観光ガイドのようにスラスラと説明するレンに頷きつつ、俺たちは街の中心にやってきた。


「見渡す限りコスプレだらけだなー。こりゃスゴい!」


 城下町を歩く人々の姿は……犬、猫、馬、牛など皆が様々な姿をしており、中には鳥や爬虫類はちゅうるいを模した者まで居た。

 なるほど、獣に限らず様々な仮装が認められる文化になっているんだな。

 だが、感心する俺の後ろでビクビクと怯えているバカがひとり。


『私、周りからジロジロ見られてる気がするよぅ!?』


 アンジュが周りをキョロキョロしながら俺の背中に飛び乗り、おんぶの格好になった。


「お前、天使の姿がアイデンティティーじゃなかったのかよ」


『まさかここまでアウェーの洗礼を浴びるだなんて思いもしなかったよっ!』


「チョーウケるんですけどー?」


 近くの通行人の言葉にビクッと反応するアンジュ。


『何だか私のコトを言われている気がするっ!!』


「それは疑心暗鬼というヤツだなぁ」


 周囲の人間の笑い声が、自分を笑ってるように聞こえるアレです。


『もう無理ぃぃぃっ!!』


 そう言うと、俺の背中に掴まりながら、犬耳の被り物を奪おうとしてきたっ!


「あっ、てめえっ! 鶏肉とりのくせに犬耳とか付けようとすんなやっ! コスプレなめてんのかっ!」


『いま、トリのニュアンスおかしくなかったっ!? というか、私をトリ呼ばわりだとおおぉっ!!!』


 俺の背中に乗ったまま首を絞めてきたっ!


『ほーら、金髪の美女が抱きついてあげてんだから、犬耳のひとつやふたつ寄越したってばちは当たらないよっ! ほら役得役得ぅ!!』


「金髪の美女ってのはリーリアみたいなのを言うんだよっ。この下位互換かいごかんふぜいがっ!」


『それを言うなアァァッ!』


「あら、美人って言われちゃいました♪」


 俺とアンジュがいつも通りケンカする横で、リーリアいつもより少し嬉しそうに微笑んだ。



◇◇



 その日の夜。


「ふーむ、この辺はもしかすると順番スキップして先行でフラグ回収出来るかもしれんなぁ」


 そう言いながら俺はシステムコンソールの中央を指差した。



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Flag No.23 獣神ティーダにありがたいお言葉を賜る

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「まあ、女神様がサプライズでドッキリ仕掛けるような世界なんだから、レンがお世話になった人たちに挨拶に行く最中に逢えたらラッキーくらいの認識で良いだろ」


 俺が楽観的に言うと、何故かアンジュが溜め息を吐いた。


『街中で言うと大騒ぎになりそうだから黙ってたんだけどね……獣神ティーダなんて神様、見たことも聞いたこともないよ?』


「へ……?」


『獣の神様はスゴくたくさん居るけど、その中にティーダなんてのは居ないよ。降臨したとか言ってたけど、獣人コスプレした適当な人を神に祭り上げたパターンじゃないかな。マイナー宗教がやりがちな手だけど、その神様をでっち上げたのがエルフとかならまだしも、ふつうの人間だったら、年齢的にポックリ逝っちゃってる可能性も……』


 マジかよ……。

 だが、アンジュの言っているコトは間違っていない。


「もしそうだとすると、ざんねん!! おまえのぼうけんはこれでおわってしまった! ということだなぁ。しかも、フラグ回収が物理的に不可能なんだから、俺たちが世界樹に行く必要も無くなるし」


『なん……だと……』


「まあ、そうならないように天にでも祈っとけよ」


 そう言って俺はベッドに寝っ転がった。


『うぅぅ、タケルのいじわるぅ……』


「まあまあアンジュさん、私のお世話になった方々はとても知識が豊富でしたし、その方に獣神ティーダについて尋ねてみましょうっ」


 レンがアンジュの頭をナデナデしながら慰めた。


「んじゃ、明日から早速、神都ポートリアを目指して出発だっ!」

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