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048:船に乗るとやたらテンションが上がるのは何故だろう

 リュート王国滞在6日目!

 皆に集まってもらった俺は、次の目的地を伝えた。


「海を越えた先にあるマイア大陸南西のワラント国に行ってみようと思う!」


 俺の言葉に、皆が歓声を上げた。


「ついに海を渡るのですねっ! 私、船に乗るの初めてですっ!」


『タケルっ、次のフラグ回収はそのマイア大陸とやらでやるのっ?』


 アンジュが目を輝かせながら飛びついてきた。

 あまり期待させすぎるのもアレなので、先に結論を伝えておこう。


「いいや、次に回収するNo.16はココから東に行った山の中みたいだし、No.17なんてその山を超えた先っぽいぞ? フラグNo.18とNo.19はマイア大陸っぽかったんだけど、前にオースの街で雨雲をぶっ飛ばした時にどちらも順番すっ飛ばして回収しちゃったから、今行く必要は無いと思う」


 俺の返答を聞いた全員の顔が『・Д・』になった。


『えっ、じゃあどうしてマイア大陸に???』


「一度行けば次からtelportで飛べるようになるから、前もってマッピングしておきたかったんだよ。それに……」


『それに……?』


 俺は拳をぐっと握って高らかに宣言した!



「国民全員が獣人コスプレの国とか、気になって仕方がないんだよっ!!!」



 そう、メリーザの新コスチュームをゲットしたお店で聞いた「国民全員が獣の姿」というワラント国とやらが気になって気になって……。

 こんな落ち着かない気分のままで東に行く気になれなかったのである。


『そ、そんなバカな理由で寄り道なんて……!』


「バカとは失敬なっ! 知的好奇心は人間にとって生きる活力なのだぞっ! ヒトは興味を持ったコトに全力を尽くせるからこそ、生きていることを実感できるのだ!」


『ううっ、そんなコトを言われたら、天使として否定的な意見を述べられないよぅ……』


 アンジュがガクリと肩を落とした。

 そうか、コイツはこういう攻め方に弱いのか……ニヤリ。


『あーっ! 今なんだかずるいコト考えたなーっ!』


 やいのやいの。

 いつも通り、俺とアンジュの口ゲンカが始まったわけだが、いつもなら困った顔のまま俺とアンジュを仲裁するはずのレンが、今回だけは嬉しそうに微笑んでいた。


「マイア大陸に戻るなら、お世話になった人たちにもう一度会えそうなので、ちょっと楽しみです」


 レンの言葉を聞いた俺は、アンジュとの口ゲンカを一旦ストップしてそちらを向いた。


「そういや船賃を稼ぐ時に、誰かに手伝ってもらったみたいなコトを言ってたっけ?」


「はい。私が封印されていたのはマイア大陸北東の海底洞窟だったのですが、そこから数日か歩いて神都ポートリアという街に辿り着いて、行き倒れたところを親切な方々に助けて頂いたのです」


 やっぱりこの子、なかなか波乱の大冒険を経てるよなぁ……。

 俺たちと合流するまでの船賃と旅費も自力で稼いでたみたいだし、苦労体質なのだろうか。


「んじゃ、ワラント行くついでにそっちも行ってみるかなー」


『うーん、どんどん私の帰りが遠ざかって行く気がするよぅ……』


 不満そうに嘆くアンジュを、リーリアが微笑みながら頭ナデナデしていた。



◇◇



 というわけで、海です! 船です! 港ですっ!!


「すげー! 帆船だ! 現物って超デカいのなっ!! こんなの操舵して進むとかすげーな! どういう原理なのかググりたいけど、この世界じゃネット無いんだよな!」


 妙にハイテンションな俺を見て仲間達が半笑いで少し引いていたので、ちょっと反省し、温和おとなしくすることにした。


「ワラントの港までは約二日ほどかかるので、それまでゆっくり過ごしましょう」


 さすが、既に一度乗船した経験のあるレンは落ち着いており、他の面々もゆったりと客室で過ごしているわけだが。

 ……さて、俺がハイテンションな理由は三つある。


 第一に、国民全員コスプレな国とやらが楽しみ。

 第二に、やっぱり新天地に行くのだから気分は高まる。


 そして最大の理由は……ぐらんぐらん……この揺れ!

 子供の頃にフェリーは乗ったことあるけど、こんな揺れる船はさすがに初めてだ。

 帆船は風で進むから揺れないとか聞いてたけど、嘘っぱちだった。


 つまり、ハイテンションを維持していないと酔いそうなのです。

 既になんだか胸の辺りがモヤモヤしています。


「……」


 イカン、イカンですよ!

 そんなコトばっかり考えていると余計に酔いそうな気がする!

 何だか室内に居ると耳の中に変な違和感が……。


「ちょっと俺、風に当たってくるわー」


 そう言い残し、俺はデッキに向かって歩いて行った。



◇◇



「………」


 周りでは乗組員が慌ただしく動き回っており、俺とチラリと一瞥いちべつしつつもせっせと働いていた。

 うーむ、何だろうこのアウェー感。

 俺は客だからまったりしていて良いはずなのに、何だか自分一人だけサボっている気分になってきた……。

 というか、客室以外に居ちゃダメな気がしてきたぞ。


「あの、ここって客が来たらダメとか、そういうのは無い……よね?」


「ああ、大丈夫っスよ? モンスターに襲われたり海に落ちたら危ないんで、なるべく客室に居て欲しいっスけどね」


 まあモンスターに襲われたとしても、俺のステータスなら返り討ちに出来ると思うし、海に落ちてもAGI999あれば水の上を走れるような気がするので、その辺は心配無いだろう。

 でも、乗組員の邪魔になると悪いので、誰も居ない反対側の物陰に移動してみた。


「ふーむ、この世界の船は旅客船じゃなくて、貨物船の余ったスペースにオマケで人を乗っけてる感じなんだなー」


 そんなコトを言いながら日陰でぼんやりと過ごしていると、見覚えのある姿が見えた。


「おーい、リーリアーっ」


 俺が呼び掛けると、一瞬笑顔を見せてからトトトッと走ってきた。


「タケルさんもこちら側に来たんですね」


「も、ということは……」


「乗組員さんたちが働いている中、私だけがじっとしているのは、何だか落ち着かなくて……ヘンですかね?」


 心配そうに俺を見つめる姿を見て、思わず笑ってしまった。


「えーっ! そ、そんなにおかしいのですかーーっ!?」



◇◇



「……もうっ! 紛らわしい笑い方しないでくださいよっ!」


「ごめんごめん、悪かったよ~」


 ぷんぷんっ! と恥ずかしがりながら怒るリーリアを見て、俺は謝罪の言葉を口にするものの、やっぱり笑ってしまった。


「もうっ! ……でも、タケルさんが私と同じ事を思っていたのは、ちょっと嬉しいですけどね♪」


 羽付き帽子が風で飛ばされないように右手で押さえたまま、リーリアは俺を見てニコリと笑った。

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